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神様の慈悲  作者: 河藤
第三章 地位向上
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第32話 殴り飛ばし

「やべっ!逃したぞっ!」


「あぁ、コラッソの言った通り本当にヤバイ!オザミ、クラウン・キメラはどっちに逃げた⁉︎」


「12時の方角、かなり速かった!」


「向こうには確か何も無かった筈だけど…もしかしたら他の冒険者が薬草採取してるかもね。急ぎましょう!」


エタルの言った通り、向こうには依頼でよく頼まれる薬草が多く群生している。

このままだとその薬草もそこにいるかもしれない冒険者も危ない。


「コラッソ、急ぐぞ!」


「りょーかい!」


走り出した直後、向かっていた先から大きな地響きが聞こえ、すぐに僕達を大きな影が覆った。

上を見上げると、さっきまで僕らが追っていたクラウン・キメラの巨体が音を立てて空を吹っ飛んでいた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今日も薬草採取の依頼で国外に出ている。

今日の依頼で必要な薬草のアルポ草は俺の【亜空間収納インベントリ】には入っていなかった。

そこでモズに聞いて今その薬草を採りに来ている。

本当に見渡す限りアルポ草。

辺り一帯を【鑑定】してみるとむしろアルポ草以外を見つける方が難しい。

必要な数は20となっていた。


「こんなにあるならすぐ終わりそうだな。いくらかは【亜空間収納インベントリ】にも入れておくか。」


ちなみにレヴィは朝起きた時にはいなかった。

テーブルの上には出かけるとの置き手紙。

コーラスが来てからはずっとこの調子だ。

どんだけ怖いんだよ。


かがんでアルポ草を採っていると背後に【危険察知センス】が働いた。

後ろから危険が迫ってるってことか?

振り向いて見ると奥から何かデカイものがこちらに凄い勢いで走ってくる。

頭と体はライオン、尻尾は蛇、背中からは白い翼が生えている。


「なーんかこのフォルム見た事ある気がするなぁ。」


予想はつくけど【鑑定】してみるか。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

クラウン・キメラ Lv.391

種族:キメラ

性別:雄


魔力:D−

速:D−

攻:C

守:C+


概要:キメラの王。Aランクの冒険者が束になっても勝てるか怪しい。6人以内で討伐する事で【合成獣王殺し(キメラスレイヤー)】の称号を与えられる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ですよね。わかってました。

でも、初めて概要なんて見た。


『その種族の高位に分類されるものには【鑑定】で説明されます。』


なるほど。

キメラの王でもブラッドウルフよりは弱いのね。


「ただなぁ…デカ過ぎね?」


どんどん近づいて来るクラウン・キメラだがかなり大きい。

どんだけデカイんだよ。


『頭から尾まで合わせておよそ25mです。』


クジラサイズか。

このまま突っ込んできたらアルポ草が潰れてしまう。

悪いけど群生地からご退場願おう。

更にクラウン・キメラは近づいて来る。

大きく右腕を振りかぶってそのままクラウン・キメラの正面までジャンプした。

Lv.391ぐらいなら多分殴っただけで止まる。

まずは止めるのが優先だ。

振りかぶっていた右腕を勢いよく振り下ろしてクラウン・キメラの鼻面を殴った。

その瞬間クラウン・キメラが目の前から消えた。

殴った感覚はあった。


「アレ?キメラは?」


『60m前方、上空です。』


へ?上空?

見上げるとクラウン・キメラが空を飛んでいた。

いや、吹っ飛んでいた。

それもさっきとは比にならない速さで。

背中の翼は使わず俺が殴った衝撃だけで吹っ飛んでいる感じだ。


「これヤバイよな…。」


『あのまま進み続ければまずグランテスト付近でバウンドし、国内に入ります。』


待て待て待て、それはかなりヤバイ。

あの巨体が家に落ちるとか災害みたいなもんだろ。

すぐさまクラウン・キメラを対象として右手に【引力アトラクション】を発動した。

うまくいけば吹っ飛んでいったルートを通ってこちらに返ってくる。


予想通りクラウン・キメラはこちらに引き寄せられて返ってきた。

かなりの勢いで。

眼前まで迫ったところで【引力アトラクション】を止めると、地面を抉りながら止まった。

横にずらしたからなんとかアルポ草は無事だった。


「危なかったぁ…。」


近づいてみるとクラウン・キメラは白目を剥いて死んでいた。

群生地からご退場どころかこの世からご退場してしまった。

ただ外傷は顔の中心が凹んでいるだけであって、そこ以外は無事そうだ。

これだったら売れるかな?


『クラウン・キメラを単独討伐しました。これによって称号【合成獣王殺し(キメラスレイヤー)】を獲得しました。』


あ、了解です。

もう気にしません。


『6時の方向から人間が4人近づいてきています。』


【マップ】を確認すると確かに4つの青丸がこちらに近づいてきていた。

しばらく待つとその姿が見えてきた。

その中の1人に見覚えがあった。

金髪金眼に整った顔立ちの青年。

4人は俺の近くに来ると顔面が凹んだクラウン・キメラを見て唖然としていた。


「これってあんたがやったのか?」


「え、そうだけど。…その金髪金眼ってやっぱりラウルだよな。覚えてるかな、ギルド前で会ったんだけど。」


「え?…あ、シドさん!覚えてますよ!こんにちは。」


よかった、覚えてくれてた。

安心したよ。


「それで、このクラウン・キメラの顔を凹ませたのはあなたなの?」


淡い青色の長髪をかきながらラウルの傍にいた女性が聞いてきた。


「そうですけど…不味かったですか?」


「いや、別に不味くはないんですけど…何をどうやったらこんな事になるんですか?」


緑色の髪の少女が言った。

ごめん、それは俺にもわからない。


「わかってる事といえば一発殴った事ぐらいだけど…。」


「「「「……え?」」」」


見事に4人の声が揃った。


「殴ったって…あんたこの巨体を殴り飛ばしたってのか?一発であの速さで?」


「まぁ、そうなる。」


「ギルド前で5人のCランク冒険者を一瞬で倒したのには驚いたけど…こんなの比じゃないね。」


あれはスキル、これはただの物理攻撃だ。

比較対象無くないか?よくわからんけど。


「それで、このクラウン・キメラはどうすれば良い?やっぱりギルドに持ってく?」


「そうでしょうね。しかしここまでの大きさとなると持っていけませんね。」


「それだったら大丈夫。」


そのままクラウン・キメラに近づいて太い足を掴んで【亜空間収納インベントリ】に放り込んだ。

無事、収納完了。

今入ってるのは邪龍とブラッドウルフとステインベア、それに加えてクラウン・キメラか。

中々にすごいな。


「今クラウン・キメラが…あれ?どこ行った?」


「収納した。これだったらギルドまで持っていける。ラウル達はどうする?アルポ草も集め終わったし俺はもう帰るけど。」


「…あぁ、僕達の今回の依頼はそのクラウン・キメラの討伐だったから帰るよ。どんなに攻撃しても全然弱らなかったから苦労してたんだけど…まさか素手に負けるとはね。」


どうやら俺の拳は剣に勝ったみたいだ。

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