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神様の慈悲  作者: 河藤
第二章 グランテスト大国へ
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閑話 親友から

この国の奴らは知らないかもしれないが俺はエルフだ。


こんなに体がでかいのに、だ。


多分モズの野郎も気づいちゃ無いだろう。


エルフ特有の尖った耳も魔獣と戦って先が削れちまった。


今じゃ見た目はただの武器屋の大男だ。


もうしばらくすれば生まれて200年にもなる。




今から70年ほど前だったか、俺もその時は冒険者をしていた。


大斧を振り回してSランク一歩手前まで上り詰めた。


その日も俺はSランクになるために高難度の依頼を達成しに行った。




依頼は思ったより早く終わったが、その帰りにあるトラブルに出くわした。


道中に小さいが邪龍がいたんだ。


その邪龍の足元には粉砕された馬車、それを引いていた馬とおそらく護衛の騎士の血まみれの死体が転がっていた。




だが1人だけ生きている奴がいた。


そいつはまだ子供で、体を震わせながら邪龍にナイフの切っ先を向けていた。


何も考えずに俺はそのまま子供を救うために邪龍に突進した。




幸いこちらには気づいていないようだった。


持ち前の跳躍力を活かして大きく跳び、その小さいながらも太い首に大斧を振り込んだ。


どす黒い血が辺りに飛び散った。


俺が着地するのと同時に邪龍の体がふらついた。


勝利を確信して子供に近づいた。が、その時の事を未だに後悔している。


邪龍は最後の力を振り絞って俺の右足を喰いやがった。




痛みに耐えながら止血しているとすぐに騎士団が来た。


子供は騎士団達に「王太子」と呼ばれていた。


新しく来た馬車に俺と「王太子」は乗せられ、王城へと向かった。


これが俺とあいつの出会いだった。




あいつと出会ってから数年が経った。


喰われた右足はそのままで、膝上から無くなっている。


お陰で冒険者業は引退、王太子を救ったお礼金とそれまで貯めてきた金での生活になった。


Aランクともなればかなり稼ぎが良かったからよほど使わない限り不自由はしなかった。




それでもあいつは時々俺の所に遊びに来る。


あいつはこの国の現国王の孫で、ハイドというらしい。


いつも無邪気で走り回り、よく怪我をしていた。


「こんなのが国王で大丈夫か?」と思う時期もあった。


しかしその後あいつはどんどん成長して、顔つきも昔と違って先を見据える者らしくなった。


それでも性格は変わらなかったけどな。


もう15歳だそうだ。


人間ってのは育つのが早いもんだな。




現国王が死に、あいつの父親が新しく国王になった。


しかしそれも長くは続かなかった。


あいつの両親が死んだんだ。


どこの国にかは知らないが、新しく国王になったからその事を言いに行ったんだとか。


その時に船が嵐に巻き込まれて沈んじまった。


その知らせを聞いて俺は杖をついて王城にすっ飛んだ。


あいつが心配だったからだ。




王城で俺が見た光景に思わず安堵した。


そこではまだ15歳のあいつが忙しなく配下を動かしていた。


両親が死んだばかりなのにもう既に他国との関係を見つめていたんだ。


この歳で凄いと思った。


みんなに笑顔で心配いらない、というように振舞っていた。


誰にも自分の悲しみを伝えずに胸の内にしまっていた。


ったく、よくよく考えりゃそんなもんわかったのにな。




あれから数十年が経った。


やっぱり時間が過ぎるのは早いもんだ。


この頃にはハイドは嫁さんをもらって立派でみんなに愛される国王になっていた。


周りの奴らも優秀なのばかりだ。


それでも俺に助言を求めてくる。


20歳ぐらいの時からちょくちょく城を抜け出して遊びに来る。


横に座って話すハイドの頭には白いものも見えている。


国同士の関係がどうだの、国内トラブルがどうだの、俺に言ったってさっぱりだ。


それでも無い脳を最大限まで活用した答えを言うと、いつも満足そうにして帰って行く。


本当にわからない奴だった。




また数十年が経った。


ハイドの髪はすっかり白くなって顔のシワも増えた。


俺はといえば相変わらず同じような風貌だ。


お互い年をとっても酒好きだという事に変わりはなかった。


この頃にはあいつの息子はもう王位継承の準備を始めていた。


俺も既に武器屋を開いていたからハイドもよく来るようになった。


俺が出している武器を目を輝かせて見ていたのを覚えている。


あいつの持っている【鑑定】でよく武器を熱心に見ていた。


一度こう尋ねた事がある。



「お前みたいな現国王がこんな所うろついていて大丈夫なのか?」



するとハイドはこう答えやがった。



「この国でそんな事する人なんていないよ。僕がそういう風に作り直したからね。」




ハイドが国王になってからこの国ではめっきりトラブルが減った。


昔はそこらじゅうで何かしらあったのに、だ。


もともと国づくりの才能があったのか、努力の賜物か、それとも両方か。


どっちにしろ凄い事に変わりはなかった。




そんな話をした2年後にハイドは息子に王位を継承した。


国民は悲しむ者もいたが、その大半は残りの人生を穏やかに送ってほしいと願う者だった。


それからは更に頻繁に俺の所に遊びにくるようになった。


助けた少年の面影は変わらず、顔中にシワが出来たものの、天真爛漫な性格は変わらなかった。




また数年が経った。


武器屋の客もそれなりに増えて生活も更に楽になった。


ハイドもすっかり年寄りだ。


また俺の所に来た日、あいつの手には何かが握られていた。



「少し2人だけで話したい事があってね。」



その日は店は休みにしてハイドを迎え入れた。


向かい合って座りあいつが話し出した事は驚くが納得出来る話だった。


〈転生者〉それがハイドの正体らしい。


俺もこの年まで生きて見たのは初めてだ。


なんでも前世は違う世界で寿命を真っ当したらしい。


ガキの頃からあんなに凄かったのもそのおかげなのかもな。



この世界には他にも何人か転生者がいるらしい。


これから来る奴もいるそうだ。


なんでわかるのか聞くとあいつは「先見の魔眼」と呼ばれる予知能力を持っているらしい。


あいつは俺が武器屋をしている事から頼み事をしてきた。



「このナイフを次の転生者に継承して欲しいんだ。」



手に握っていた物をテーブルの上に出し包んでいた布を取った。


それは俺が初めてハイドと会った時にあいつが持っていたあのナイフだった。


藍色の鞘に金色の装飾、藍色の柄、紛れもなくそれだった。


なんでも、このナイフは転生者に代々継承され力も引き継いでいくんだとか。


その転生者はハイドと同じような目をしているらしい。


自分で渡せばいいものを、



「知ってるだろ?僕は面倒くさいのは嫌いなんだ。」



なんて答えやがった。


一国の元主が、だ。



しぶしぶ受け取った数日後、あいつが死んだ。


寿命だったようで安っぽい言い方だが眠るように死んだようだった。


国全体での葬式になって、全ての国民が悲しみに満ちた。


同時に「向う(あの世)ではゆっくり過ごしてほしい」と願われていた。


結局、あいつはみんなに愛されていたって事だ。



ハイドが死んでから数年が経った。


まだあいつの言っていた転生者は来ない。


来るのといえばモズを含めた数人の冒険者ぐらいだ。


「今日も来ないか…」


そう思っていると店の扉が開いた。


この店では見た覚えが無い奴だ。


聞くとモズの紹介らしい。


真っ白な銀髪に赤い眼を持っていた。


武器を見る目を見て確信した。


こいつがハイドの言っていた継承者だ、と。

こういうのもたまにあると思います

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