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神様の慈悲  作者: 河藤
第二章 グランテスト大国へ
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第29話 犠牲は1人で

家を買ったら戻ってくるようにとアメリアに言われていたので一度一人で王城に帰った。

まぁ、俺が買ったわけじゃないけど。

門番に挨拶して王城に入るとアメリアがすぐに寄ってきた。


「シドさん、もう家に行っても大丈夫ですか?」


「うん、一旦落ち着こうか。」


凄い勢いで飛んできたな。

目が輝いてるよ。


「大丈夫です!カリーナも行くと言って先程準備しに行きました!」


人の家見に行くのに必要な準備って何?


「あ、もう帰ってきたんですか。遅れてすいません。では行きましょう!」


「おーっ!」


姉妹揃って凄い勢いだな。

聞いたところミエラはまだ魔獣の行進(モンスターパレード)で出た魔獣の収集をしているらしい。

あの年で騎士団の上部にいるのだから凄い。


「じゃあ俺の腕持って。そのまま【瞬間移動テレポート】するから。」


「え…テレポートって…え…?」


「カリーナ、気にしたら負けよ。早くつかまって!」


気にしたら負けって何ですか?

俺が【瞬間移動テレポート】使うのを気にしてたらダメって事ですよね?

まぁ、いっか。

屋敷に【瞬間移動テレポート】するとレヴィは庭にいた。


「あら、おかえりなさい。ちょっと提案があるんだけど?」


「ん?何?あぁ、アメリア、カリーナ、ちょっと待っててくれ。」


そう言ったが既に2人はいなかった。

気づけば玄関にいる。

早っっ!


「で、提案とは?」


「えぇ、今ちょっと庭を回ってみたんだけど…広すぎるわね。とてもじゃないけど私達だけで手入れ出来る広さでは無いわ。」


「確かにな…。」


屋敷の前だけでもかなり広い庭だが、これに加えて中庭と後ろにも庭がある。


「でね、提案っていうのが、誰か雇わない?幸いお金はあるんだし庭師の人でも2人ぐらい雇った方がいいと思うの。」


「…うん、その通りだね。」


これにも同感。

レヴィの言う通り、俺もこの広さをするのは疲れる。

というより知識も何も無いのだからやりようが無い。


「それは心配ありませんよ!」


アメリアの声が上のベランダから降ってきた。

聞こえとんかい。


「心配無いって何が?」


「それですけど、既にお父様が庭師をちょうど2人雇ってます。もちろん、支払いはシド様ではなくお父様です。」


「そんなとこまで…もう至れ尽せりね…。」


まさかあの人こうなる事まで予測してたのか?

流石、現国王陛下だな。

でもここまでして貰うのはちょっと気が引ける感じがするな…。


『別に罪悪感を抱くことなんてないんじゃ無い?もしまたあんな事があった時に助けてもらうためにしてるようなものでしょう?』


『そういうもんなのかな…?』


『心配無し!貰えるものは貰っとけってソルネル様も言ってたでしょ?』


『…じゃあありがたく受け取るか。』


レヴィのお陰で心が軽くなった。

まぁ、せっかく用意してくれたんだから頑張ってもらおう。

でもしばらくしたら庭師さん達の給料はこっちで払う。

その方が俺も気持ちがいい。

それについては次会った時に話すつもりだ。


「凄いお屋敷ですね!また遊びにきてもいいですか?」


「え、まぁいいけど…。気をつけてね?」


「わかってますよ。じゃあ王城に帰ります。シドさんはどうしますか?」


「別に王城に荷物は無いから今日からここに住むよ。また遊びに行かせてもらうと思うけど。今日のところは2人とも送るよ。」


空を見ると夕焼けで赤く染まっていた。

1日って早いね。

さっきと同じように王城へと【瞬間移動テレポート】して2人とは別れた。

帰る時には城下町を通って店を見て回った。

もう夕方なのに活気の良さは変わっていない。

そのまま屋敷に歩いて帰るとレヴィがテーブルに突っ伏していた。


「おーい、どうしたー?」


「…お腹空いた…。」


「悪魔でも腹空くんだな。」


「生きてますから。それよりなんか無いの?」


「ある事にはあるけど…。」


そう、ある事にはある。

でも焼いただけ。

だって調理する機会とか無かったんだもの。

しょうがないよね。


「と、なったらやっぱり呼ぶしか無いかな…。」


「え?呼ぶって誰を?」


「その前にレヴィ達には色々説明しなきゃいけないんだけど…。」


サタン達も召喚して悪魔は全員揃った。


「それで、主、説明ってなんですか?」


「えーと、まず、俺は転生者なんだ。」


「「「「「「「知ってます。」」」」」」」


「あ、知ってるんだ…え、知ってんの⁉︎」


綺麗にハモったな。


「えぇ、ハイド様も転生者でしたし、バレン様もですよね。ハイド様から契約時に聞いてます。」


「それで、ソルネル様が僕たちを継承するのも転生者だけってなってたんだよ。転生者は魔力の色が特殊らしいからすぐわかるんだって。」


「ちなみに我々以外にはその事は知りません。」


…どうやら悪夢達は全部知っていたらしい。

俺だけが取り残されてた感がある。


「それを踏まえて伝えたい事は?」


「…俺が転生した原因と現状についてだけど、元々は俺は…」


三度目の説明をすると全員が納得したような顔をした。


「原因はヘスティアですか…。」


「確かに奴ならしかねんのぉ。」


サタンとマモンがしみじみとそう言った。

なぜかみんな知っているような反応をする。


「面識あるの?」


「面識も何もたまに会いますね。」


「悪魔だからと言って神や天使と仲が悪いってわけじゃないんだよー。」


「そうなんだ…。」


手を合わせながらベルがそう言う。

なんか俺の中での悪魔のイメージが崩れる音がした。

対立してるイメージがあったんだけどなぁ。


「それで、最初に戻るけど…誰を呼ぶの?」


「うん、初めて俺がこの世界に来た時から側にいたコーラスってメイドをね。ほぼなんでもこなすから。」


コーラスの名を出した瞬間、悪魔達の目が見開かれた。

え、何その表情?


「…今コーラスと言われましたかな…?」


「え…?うん、言ったけど…なんで?」


マモンの顔が一気に青くなった。

他の6人も俯いている。


「もしかしてコーラスともなんかあるの?」


レヴィが青い顔をこちらに向けた。


「なんかあるなんてもんじゃ無いの…はぁ…なんでそんな人が人界にいんのよ…。」


「いや、本当に何があったッ⁉︎」


全員の顔が暗い。

いつも明るいベルでさえ暗い。

するとサラが話し出した。


「ご主人様は知らないかも知れませんが、昔は天使と悪魔も対立していたんです。今から600年ほど前ですかね、その時に「天魔大決戦」と呼ばれた天使対悪魔の戦争がありました。」


天魔大決戦、ねぇ…いかにも厨二臭漂うネーミングセンスだ。


「だいぶ長い間続いてたんだけどねー、最後は結局両方のトップが和解して収まったのー…その時にすっごく強くて滅茶苦茶な天使がいたのー。」


「今でも思い出すのぉ…天使軍の軍長となって自ら戦場を駆け巡り、目にも留まらぬ速さでバッサバッサと切り倒していく姿…。儂のこの傷もその天使につけられたものでしてな。」


そう言ったマモンの右肩から脇腹にかけて、いくつもの抉られたような切り傷があった。

何をどうすればこんな傷ができるんだよ…。

ん?まてよ、この話の流れからいくと…


「…もしかしてその時の天使って…」


「ご名答、それがあなたのメイドのコーラスよ…。」


なんで俺のメイドが最強の天使なのッッ⁉︎

元・天使軍の軍長なんでしょ?

ここで更に疑問。


「あのぉ、じゃあカトルって名前に聞き覚えは…?」


「え…なんで主がその名前知ってるんですか…?」


今度はフェゴールが答えた。

あ、やっぱり聞き覚えあるのね。


「カトルにはどんな因縁が?」


「まぁ言うのも嫌なんですけど…当時は俺とサタンの2人でペア組んでってたんですけど、その時にえげつない威力の魔法をポンポン出してくる天使がいましてね。」


「本当に…あれは俺たちより悪魔でした…。今俺とフェゴールが生きているのが不思議なくらいです。」


サタンは昔の事を思い出しているのか一人称が「俺」になっている。

なおさら聞きたいけどなんで俺のメイドはどちらもそんなに強いの?

確かにカトルは邪龍を余裕持って倒してたけど…。


「話を戻すけど、とりあえずコーラスだけこっちに呼ぼうと思うんだけど、サタン達も一緒にす…」


「「「「「「お断りします」」」」」」


ここまでハモるものか?

もうレヴィの顔が青色を通り越して白くなり始めた。


「え…じゃあ私だけ残ってコーラスと一緒にいるの…?」


「ごめんなさい、レヴィ。あなたが生贄になってちょうだい。」


サラの生贄発言に遂にレヴィが気を失った。

これだけで痙攣している。

よかった、これで夕食が1人分減った。

…これレヴィをベッドに寝かせといて朝起きたらコーラスがいる、って状況になったら中々面白そうだな…。

よし、今日中に呼びに行こう。


「ルシファー、ご主人様の顔が悪い事考えてる顔になってるよー?」


「何を考えてるのかわかりませんけど良からぬ事を考えてる事はわかりますね…。レヴィの巻き添えを食う事になる前に私達は帰りましょうか。」


「そうじゃな、犠牲になるのはは1人で十分じゃわい。それでは主殿、儂達はこれで…。」


レヴィを除く悪魔達が颯爽と撤退しようとしている。

まぁレヴィをいじればいいか。


「あぁ、また呼ぶ時にはよろしく。」


そうしてサタン達は気絶したレヴィを置いて帰っていった。

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