第25話 悪魔vs魔族
上から見ていると魔獣の行進は24000なんて数じゃ足らない気がしてきた。
(リーヴ、実際今魔獣の行進って全部で何匹いるんだ?)
『魔族の手によって増え続けています。先程35000に到達しました。』
あ、やっぱり増えてるんですねぇ。
蟻のように列をなす魔物たちはどんどん迫ってきている。
『サタン、ルシファー、フェゴール、マモンが4体の魔族を殺せば増殖は止まります。』
こうしている間にも魔族は魔獣を増やし続けている。
さて、どうしたもんかね…。
ーーーサタンサイドーーー
今サタンは魔族の1人の元に向かっている。
この先にいるためどんどんと反応が大きくなっているのがわかる。
遂に反応の目の前に来た。
そこにいたのは頭から尖った角を生やした灰色の髪を持つ魔族だった。
「お前がこの騒動を起こしている魔族か?」
「そうだけど、何お前?見たところ悪魔か?悪魔が俺様に何の用?」
サタンが魔族に向かって踏み出すが、一向に動く気配は無い。
「我が主人に命令されたのだ。ここでお前を殺し、この侵攻を止めろ、と。」
「へぇ、そうかそうか。大変だね、悪魔も。自分で出てこないような弱っちいご主人様に仕えるなんてさ?」
その言葉はサタンの琴線に触れてしまった。
怒りを押し殺し、サタンは尋ねた。
「…名はなんという?」
「え?俺様の名前?俺様の名はゲルミンだ。お前が最後に聞く名前だよ?」
「そうか…ゲルミンか…。ならばゲルミン、それは間違っているぞ…。」
目に静かに怒りを灯しながらサタンは言った。
「はい?何言ってるのかな?」
「間違っていると言っているのだ。俺の名はサタン、お前が最後に聞く名だ。」
そう言った刹那、サタンの姿は消え、次の瞬間にはサタンの右手はゲルミンの顔面を鷲掴みにしていた。
その勢いでゲルミンの後頭部を地面に叩きつける。
サタンとゲルミンを中心として地面に窪みが作られ、地割れを起こした。
「【黒の炎】」
顔面を掴んだままサタンはつぶやき、ゲルミンは黒く大きな炎に包まれた。
1秒後にはサタンの手には何も残っていなかった。
「…お前なんぞが我が主人を愚弄するな。」
そう言うとサタンは尊敬する主人の元へ帰っていった。
ーーールシファーサイドーーー
「こちらの方向で合ってる…んですよね?」
見た目からはわからないような重度の方向音痴のルシファーは森の奥に潜む魔族を止めるため、木々の間を縫って進んでいた。
「お、そろそろですかね…反応も大きくなってきましたし…。」
そう思っていると急に目の前が開けた。
その場所だけ木が無く、中心に倒れている丸太には1人の男が座っていた。
「えーと…あなたが魔族ですか?」
「ん?あんた誰?まぁいっか。うん、そうだよ!大正解、おめでとう!そして死ね!」
そう言うと魔族の男は手から禍々しい色をした液体状の物を飛ばしてきた。
球体状になって迫るがいとも容易くルシファーはかわした。
それが背後の木にぶつかると音を立てて木は腐れ落ちていった。
「全く…挨拶してすぐこれですか…。躾がなっていませんね…。」
「へぇ、まぁ避けるよね!あぁ、楽しめそうだ!」
男は満面の笑みを浮かべながらそう言った。
対してルシファーは本当に面白くなさそうにしている。
否、面倒臭そうにしている。
「あのですね…私暇じゃ無いんですよ?さっさと終わらせましょうか…。」
「ヤダね!せっかく楽しそうなんだからさ!」
これ見よがしにルシファーはため息を吐いて言った。
「はぁ…いいでしょう、相手をしてあげましょうか…。」
そう言った直後、ルシファーの姿が消えた。
「え!消えたよ!楽しみだなぁ!どんな事をしてく、れ、る………」
魔族の男は最後まで言い切らずに首を後ろに向けた。
そこには魔族の男の背中に手を当てたルシファーがいた。
離れようとするがルシファーの手から逃れられない。
「相手をするとは言いましたが、一瞬でしたね?」
そう言ったルシファーは笑みを浮かべて言った。
「【分解】」
【分解】が発動されたルシファーの右手が触れている場所を中心に魔族の男は表情を変えないまま塵へと化していき、風とともに散っていった。
「まぁ、他は大丈夫でしょう。…あ、名前を聞くのを忘れてましたね。」
そう言って周りに誰もいない森をルシファーは去っていった。
ーーーフェゴールサイドーーー
「あともうちょっとか?やっぱり一番俺が遠いじゃん…。」
不満を垂らしながら魔族を目指しているのはフェゴールだった。
「あ、見えた!やっと着いた!」
するとすぐ正面から音を立てて矢が飛んできた。
かなりの速さの矢をフェゴールは右手で掴んで止めた。
「うぉっ!ビックリした〜。ちょっとー、急すぎない?」
矢を射ってきたのは口元を隠した魔族だった。
話しかけるが応答は無い。
「…あのー…ちょっとは喋らない?名乗るぐらいしない?俺はフェゴールだけど、あんたは?」
「…………。」
魔族の男は何も言わずにフェゴールに向かってまたもや矢を射って来た。
「流石に傷つくんだけど⁉︎」
そんな軽口を叩きながらもフェゴールは確実に矢を掴みは捨てを繰り返している。
「…………。」
「…あ、もしかして恥ずかしがり屋さん?」
その言葉に起こったのか男は弓を短剣に持ち変えてフェゴールへと突っ込んだ。
急接近し切り裂こうとするがこれもフェゴールは魔族の男の頭上を飛び越す。
「あれ、怒っちゃった?ごめん、ごめん、悪気は無かったんだよ?」
「チッ…………。」
自分の攻撃を全てふざけているようの避けられているのが気に触るのか男も苛立ち始めた。
「実はさ、俺もさっさと終わらせて帰りたいんだよね。で、俺の仕事はあんたを消す事。んでもって、その仕事はもう終わりかけ。」
「?どう言う事だ………?」
「あ!やっと喋った!じゃあ教えるけどさ、さっきあんたが俺に突っ込んできた時軽く触れたの。さて、俺は何をしたでしょうか?」
おちょくっているとしか思えない口調でフェゴールは話しかける。
「チッ…」
またもや男は短剣を持ってフェゴールへ突っ込もうとした。
が、なぜか動けなかった。
男の足元には鎖が巻きついており、その先は地面に空いた黒い穴へとつながっていた。
フェゴールの持つスキル【地獄の礎】だ。
動けなくなった男にフェゴールはスキップしながら近づく。
「さーてと、では正解発表のお時間です!正解は…触れた瞬間に君の身体を爆弾に変えた、でした!」
「ッ!何ッッ⁉︎」
動揺を隠せないのか、目を大きく見開いて魔族は言う。
「あはは、良い表情だね…。まぁ、もう会う事は無いだろうから教えるけどさ、俺のスキル【爆弾魔】は触れた物を爆弾に作り変えれるんだよね。生物も可能。つまり今のあんたは生きた爆弾ってわけだ。俺が合図をすれば跡形もなく爆発するわけ。どーーーん、ってね。」
男は目を見開いてフェゴールを凝視する。
そして動く腕だけを使って必死に斬りかかろうとするがまず届かない。
「おっとっと…ったく、危ないなぁ。よし、自分で足切られても迷惑だし両腕も拘束しとこっか。」
わざとらしく斬撃を避けると魔族の足元からは新たに2本の鎖が生え、その両腕に巻きついた。
地面へと引っ張るため当然腕は動かせない。
「さて、俺も自作の爆弾に巻き込まれたくないしそろそろお暇するよ。」
「なっ…ま、待ってくれ!情報を…情報を渡すから、助けてくれ!」
「えーどうしよっかなぁ…?」
フェゴールは考えるようにしていたが急にその顔に浮かべていた笑みを消し目を開いた。
「淡い希望を抱くなよ?助けるわけ無いだろ。」
「え…ちょっとま…」
「悪いけど情報なんざ要らねぇよ。他がどう言おうと自分の命のために情報差し出す奴なんて俺は嫌いだからな。じゃあな。」
「た、頼む!待ってくれ!」
十分離れるとフェゴールは向き直り右手を上に挙げた。
「サヨナラ、哀れな魔族君。」
そう言ったフェゴールは指を鳴らした。
そしてそれをトリガーとし、【爆弾魔】は発動した。
爆発のせいで巻き起こった爆煙の後に魔族の姿は無く、そこには大きなクレーターだけ。
「…やり過ぎた?…ま、終わったし帰ろっかな〜。」
ーーーマモンサイドーーー
ほぼ同時に2方向から大きな音が聞こえた。
一方では盛大な土煙が、一方では黒い爆煙が上がっていた。
「土煙の方はサタンで爆煙の方はフェゴールかの?この調子だとルシファーも終わってそうじゃな。」
そう言いながらマモンは地面に血溜まりを作っている二つに別れた魔族の死体を目の前にしていた。
勝負は一瞬でついた。
対峙すると同時にマモンは抜刀術のようにして魔族を腰を境に斬ったのだ。
魔族は何もすることが出来ずに斬られ、出血によって息絶えた。
「では、ルシファーを迎えに行くかのぉ…奴はああ見えて方向音痴じゃからな。おっと、忘れておったわい。」
思い出したかのようにマモンは魔族に近づき、手に持つ刀を動かなくなった魔族に刺して唱えた。
「【陽炎】」
刃の先から噴き出す炎で魔族の身体は燃え、骨も残さずに消えた。
刀に付いた血を拭き取り杖に模した仕込み刀を仕舞ってから、マモンはルシファーの元へ向かった。
別にマモンの戦闘シーンを書くのが面倒くさかったわけではありません
(そもそも戦闘シーンと言えるかどうかも定かでは無い)
余談ですが個人的には思い浮かべやすいのでフェゴールが好きです




