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神様の慈悲  作者: 河藤
第二章 グランテスト大国へ
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第24話 グランテストの危機

部屋ではソルネル様と王妃のジュリア様、あらかじめ俺の事を兄と聞いていたシーベルト様以外の4人と俺とレヴィが頭を抱え込んでいた。


「まさか…そうだったんですか…。」


「逆になんで女だと思われてたんだ…。」


『えっと…まぁ…その…どういう事?』


『待てレヴィ、一番俺が説明を求めているから…。』


いや意味がわからん。

俺は男ですけど…?

さも当たり前かのようにソルネル様はお茶を飲んでいる。


「アメリア、いつからシドさんが女だと思ってたんだい?」


「え…いつからって…出会った時から…。」


そこからかよ!


「…なんで…?」


「え…だって自分の事私って言ってたし…容姿もそれっぽかったから…?」


「という事よ、シドさん。あなた、ここ(グランテスト)に来るまでに盗賊に出会ったわよね?」


「…はい、そうですけど…何か…?」


「その時盗賊さん達はなんて言ってたかしら?」


盗賊達の言葉?


「えーと…たっぷり可愛がってやる…傷つけるな…的な?」


「どう解釈したの?」


「いや、捕まえたら奴隷商とかに売られるのかと…。」


多分普通はそう思う筈。


「…シド殿、多くの国では奴隷が禁止されておるのだ…。その状態で傷つけるな、と言うのはおかしくないか?」


言われてみれば、確かに…。


「じゃあなんで?」


「つまりね…盗賊さん達もあなたを女だと思ってたのよ。」


「くっ…。」


横でレヴィが笑っている。


『レヴィ、後で話し合おうか…。』


『え?』


顔を強張らせながら凄い勢いでこちらを向いた。

決定事項だから拒否権は無いよ。

アメリアとカリーナ、ミエラはその場でフリーズして動かない。


「あの…ソルネル様や王妃様は最初から全部知っていて何も…?」


「えぇ、当然よ。だって面白いもの!」


「私も一緒ね。やっぱりジュリアさんとは気が合うわね。」


女性2人は知っていてそれを言わなかったらしい。

いや、そこは国王陛下も気づいとけよっ!


「俺の容姿ってどんなですか…?」


「鏡見た方が早いんじゃ無い?」


説教が決定したからかレヴィがもっともな事を言ってくる。

それじゃわからないから聞いてるんだけど?


「別にどっちにも見えるわよ?まぁ、第一印象でしょうね。アメリアはあなたが言った「私」の言葉から女だ、と思ったんでしょうね。」


「…一度部屋に戻って良いですか……?」


「お疲れ様。どうぞ。」


席を立ち、部屋に戻ろうとした瞬間、扉を開いて1人の騎士が飛び込んできた。


「陛下、緊急事態です!」


「いや、こちらも中々な緊急事態なんだが…。」


「それどころではありません!この国に魔獣の行進(モンスターパレード)が向かってきています!」


「なんだと⁉︎」


その知らせを聞いて全員が正常に戻った。

アメリア達のフリーズも解けたようだ。


「規模はどれ程だ?」


「使い魔の視点によれば多くの4方向から約6000体ずつ、合計2万4000体が向かって来ています!」


「なっ、2万4000⁉︎滅茶苦茶じゃ無いか?本当なのか?」


「間違いありません!」


ん?魔獣の行進(モンスターパレード)?なんだその遊園地のイベントみたいなの。


(リーヴ、魔獣の行進(モンスターパレード)って何?)


魔獣の行進(モンスターパレード)とは、数年に一度起きるか起きないかの魔獣の群れの行進です。

一般的には多くても600pまでです。』


おいじゃあ2万4000ってなんだ、限度6000じゃ無いのかよ。

報告に来た騎士が催促するように言う。


「陛下、どうされますか?」


「うむ、国民を国の中心に寄せ騎士団を展開しろ。全騎士を総動員して国を守るのだ!」


「はっ、それでは今から展開に移ります。」


話を聞いたミエラが周りの騎士に指示を出し始めた。


「アメリア様、私も行って来ます。」


「えぇ、気をつけてね、ミエラ…。」


言い終わると騎士とミエラは部屋を飛び出して行った。

………。


(リーヴ、この国の騎士団だけで勝てると思うか?)


『結果だけ言うと無理です。圧倒的な戦力差があります。魔獣の行進(モンスターパレード)にはブラッドウルフやステインベアなど、絶望の森の魔獣も含まれています。』


そりゃ無理だ。

そんな奴らが一斉にここに押し寄せてるんだろ?

騎士団には無理だ。

よし、決めた。


「陛下、俺も出ます。」


「何ッ⁉︎シド殿が?いや、しかし…」


「悩んでいる暇はありません。まずこの国全体に結界を張りましょう。」


「そっ、それは無理だ。そんな大きな結界を張れる者はこの国にはいない!」


いや、俺が張るんだけど?


(リーヴ、広範囲に力を伝える術は?)


『先の盗賊との戦闘のように地面を媒介として広範囲に結界を張れます。【結界魔法】を使う場合、杖を使った方がより強力になります。』


すぐに【亜空間収納インベントリ】からヘスティアから貰った杖を取り出し、範囲をこの国全体に設定して杖の先端に【結界魔法】を集めて部屋の床に突き立てる。

するとそこを中心に結界は広がり、あっという間にこの国全体を覆った。

すぐに【亜空間収納インベントリ】に杖をしまった。


「本当にこの大きさの結界を1人だけで…。」


カリーナが口を開けて驚いているが今は構っている余裕は無い。

4方向からそれぞれ6000匹ずつ、合わせて24000体の魔獣がグランテストに向かって進行しているのだ。

結界はちょっとやそこらで割れはしないだろうが、急ぐに越した事は無い。

顔がバレてはまずいので【創造クリエイト】でお面を作った。

パッと頭に出てきたのが狐のお面だったのでそれを被る。

頭の後ろで紐を結んでいるとレヴィから秘密の通信が入った。


『これ、向かって来てる4方向それぞれの奥に魔族がいるわ。』


『魔族?わかった。』


わかってないけどわかった。


(リーヴ、魔族って何?)


『魔族とは、今現在魔王の元、人間を生け贄として魔神を復活させようとしている者達です。明確な人間の敵です。』


敵なら容赦はしない。

罪の無い人を殺そうとしているんだ。だったらこっちこそ迎え撃つしか無い。

お面をつけてから思ったけど、【光学迷彩カメレオン】使えば良かった。

まぁ、いいか。


「レヴィ、女子3人で国内の人の混乱を鎮めてくれ。あとは他でどうにかする。」


「わかったわ。気をつけてね。」


(騎士団はどういう風に展開している?)


『【マップ】を表示します。』


【マップ】を見ると城門前に多くの青丸があった。

どうやら城門前に集まり、そこから防衛と殲滅に移るようだ。


「それでは陛下、行ってきます!」


そのまま部屋の窓から繋がっていたバルコニーから【空気凝固エアウォーク】を使って外へ飛び出した。

どうせ落ちてもどうって事無い筈だ。

…訂正。どうってこと無い事は無い。

この状況のせいで考え方が雑になっている。


(…リーヴ、俺ここから落ちたら死ぬ?)


『死にませんし怪我もしません。万が一怪我をしても【痛覚軽減】と【超再生】があります。』


よし、問題無し!

レヴィによれば4方向に魔族がいるようだ。

【魔力感知】を使ってみると確かにいる。


『サタン、ルシファー、フェゴール、マモン、魔獣の行進(モンスターパレード)の起こっている4方向に魔族がいる。それぞれ1匹ずつ倒してきてくれ。俺は国に向かう魔獣の行進(モンスターパレード)を止める。』


『御意。』


『ふぉっふぉっ、それでは急ぐかの?』


『さっさと終わらせましょう。』


『じゃあルシファーは東へ行きますので。』


そう言うと通信は切れた。

あの4人なら大丈夫だろう。

レヴィには国内を頼んだしあとは魔獣の行進(モンスターパレード)を止めるだけだ。


城門に近づいて来たのでそのまま降りると本当に怪我ひとつしなかった。

どうなってるんだろうね?


城門近くには先程飛び出して行ったミエラやエルヴィス、その他多くの騎士や冒険者らしき人達がいた。

騎士以外はギルドの人達か?

光学迷彩カメレオン】を使ってミエラに近づき声をかける。


「ミエラ、俺だ。」


「えっ…シド殿?なんでここに…?」


「お手伝い要員。結界も俺が張った。もうしばらくしたら出るのか?」


「はい、そうです。シド殿は?」


「勝手に暴れる。邪魔にはならない。」


「わかりました。騎士達には説明しておきます。」


そのまま場を離れてもう一度全体を見渡せるような高い場所へ行きそこから周りを見る。

見えたのは、この国に押し寄せる魔獣達だった。


「…ふぅ…さて、と。やるか」


殲滅戦の開始だ。

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