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神様の慈悲  作者: 河藤
第二章 グランテスト大国へ
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第19話 贈り物という名の面倒

10分ほど王家一家の再開が行われ、終わると俺も部屋に入った。

ソルネル様も喜んでいるように見える。

泣き過ぎで目を赤く腫らしたアメリアが俺に聞いてきた。


「シドさん、シドさんはこの後どうするつもりですか?」


「あぁ、とりあえず宿にでも行ってから考えるつもりだけど…。」


「こんなに助けてもらったんですもの。しばらくここ(王城)にいませんか?」


「そうよ!お母様の言う通りだわ!今から宿に行っても部屋があるかどうか怪しいですもの!そうしてください!いいですわよね、お父様?」


アメリアが興奮したように国王陛下に呼びかける。

国に来て初めての宿が王城とは。


「それは我も賛成だ。生命の水(エリクサー)だけでなく、ジュリアの記憶まで戻してくれたのだ。ずっといてくれてもいいぞ。」


「いや流石にずっとは…。」


「ずっとは、という事はしばらくはいますよね⁉︎部屋を案内します!付いてきてください!」


「え、ちょ、急すぎない?」


そう言うもアメリアに引っ張られて行く。

この力強く無いですか⁉︎


「シドさん、そうしなさい。さっき言った事も忘れずにね。」


ソルネル様の言葉を聞きながら俺は部屋から退場した。

グイグイ腕を引っ張られて連れていかれた部屋は前世では考えもできないようなとてつもなく広い部屋だった。

机やクローゼット、ベッドまで必要な物は全部置いてある。

これが王城か…。

この一部屋だけで普通の家のリビング二部屋分はあるぞ。

ってかベッドデカッ!

これが噂のキングサイズか?


「ここがシドさんの部屋となります。」


「………。」


「シドさん?」


「ふぇ?あぁ、わかった。ありがとう…。」


ついつい呆然としてしまった。

変な声が出たぞ。


「ん?アメリア、あの扉なんだ?」


そう言って俺は部屋の奥にある扉を指差した。


「あぁ、これですか。どうぞ、開けてみてください。」


言われるがままに近づき扉を開くとその先には女子っぽい部屋があった。

ナンダコレ。


「見ての通り、私の部屋に繋がっています!ちなみにその一つ先の部屋はカリーナが使っています。」


なにそれ。

なんで王家姉妹の部屋の隣に俺の部屋が来るの?

よりにもよってなんで繋がってるの?

ツッコミどころ満載なんですけど。


「いや流石にこれは…」


「寝る前には私とカリーナとミエラとシドさんの4人でお話ししましょう!」


女子会か!

なんでそこに俺が含まれてるんだよ⁉︎

疲れたからとりあえずこの場を離れよう。


「ちょっとソルネル様に後で部屋に来るように言われたんだけど、ソルネル様の部屋ってどこ?」


「お祖母様の?珍しいわね、お祖母様が自室に人を呼ぶなんて…。お祖母様の部屋ならこの先を少し行くとありますよ。」


「そうか、ありがとう。」


言われた通りソルネル様の部屋へと向かう。


が、ここでトラブル発生。

やっぱりアメリアに付いてきてもらうべきだった。

…ここどこ?

広過ぎて迷子になった。


(リーヴ…ここどこ?)


『王城です。』


それはわかってるんだよぅ…。


『私も詳しく内部を知らないのでわかりません。』


そりゃそうだよな…どうしよう。


「どうかされたのですか?」


イケメンっぽい声が背後からかかる。

振り向くと1人の騎士が立っていた。

ん?どこかで見た覚えがある…。

【完全記憶】がある筈なんだけど。


「シド様、私です。生命の水(エリクサー)で身体を治してもらった…。」


「あぁ、あのボロボロだった騎士!」


思い出した!

生命の水(エリクサー)の証明にされた部位欠損があったイケメン君だ。


「もう大丈夫なのか?」


「えぇ、おかげさまで。今はリハビリのようなものです。と、そうだ、何かお困りですか?」


「うん、ソルネル様の部屋ってどこ?迷っちゃって…。あと出来れば城内の地図みたいな物も見せて欲しい。しばらく城にいる事になったから。」


「それなら僕が案内します。僕はこの国の騎士団で中隊長をしている、エルヴィスと言います。」


「シド・テンペスト・シリウスだ。よろしく。」


そう言って握手をしてからまず城内と国内の地図を見せてもらった。

これで【マップ】にもリーヴに聞いても迷子になる事はない筈だ。

念のためエルヴィスに案内してもらった。

アメリアはこの先を少し、と言った。

全く違う。

何が少しだ、曲がり角とかかなりあるじゃ無いか。

説明が雑すぎる。


「到着しました、ソルネル様のお部屋です。」


「ありがとう、エルヴィス君。」


「い、いえ、それでは、また…。」


エルヴィスが行くとすぐに扉が開いた。

そこから顔を出したのはソルネル様だった。


「ったく、遅かったね。何をしていたんだい?」


「いや、迷子になってました。」


「ふふ、そんなとこまであの人にそっくりとはね…。さぁ、中にお入り。」


?あの人?

疑問に思いながらも部屋に入り、向き合って腰を下ろした。


「さて、話だけど…これは私じゃなくて私の夫、つまり前国王陛下からなの。」


「え…なんで前国王陛下が私に…?」


俺はこの世界に来てから一ヶ月経ってないから面識無いぞ。


「その前にあなた、その「私」ってのやめなさいな。私はわかってるからいいけどアメリアは勘違いしてるわよ。」


「え…何を?」


「さぁ?自分で確かめてごらん。あぁ、あんたのせいで話が逸れたね。戻そうか。」


逸らしたのはそっちだ。


「実はね…話というのは夫の手紙を渡す事なんだ。」


「だからなんで僕に…?」


「そう言われたからよ。自分と同じような魔力を持つ者にこの手紙を渡せと。」


やっぱり意味がわからない。


「そんな事分かるんですか?」


「えぇ。私は魔眼の持ち主なの。その中でも私の魔眼は人の魔力の色を見極める事が出来るの。」


『ソルネルの説明により、異身体【魔眼:魔力識別】を獲得しました。』


………。

人の身体能力までコピーできるのかよ。

もうチートではちきれそう。


(リーヴ、魔眼って何?)


『魔眼とは、本来生まれた時から魔力の多い者が持つ、特別な身体能力の一つです。それらは任意で使用、解除出来ます。ちなみにマスターはそれらの異身体も全て獲得できます。』


試しに魔眼を使ってソルネル様を見てみる。

すると大きなオレンジの霧のようなものがソルネル様の周りを漂っていた。

これのことか?


「でね、あなたの魔力は私の夫のものと全く同じ色をしているの。と言うか同じ色の人を見た事が無いの。普通同じ魔力を持つ人なんていないのに。色は一緒でも濃さや明るさがみんな違うのよ。」


「じゃあ僕の魔力は何色ですか?」


「夫と同じ濃さ、明るさの白銀プラチナ色ね。光っているわ。でもあなたのはもっと強いわね。えーと…あぁ、あった。これよ。」


そう言ってソルネルさんは机から手紙を取り出し俺に手渡した。


「ここで読んでも?」


「えぇ、どうぞ。私はお茶を入れてくるわ。ゆっくりしていてちょうだい。」


「すいません…。」


手紙に付いている封を切り、中身を取り出す。

そこには前国王陛下からの手紙が入っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


この手紙を読んでいる人へ


どうも、僕は前国王のハイドだ。

この手紙を君が読んでいるという事は僕はもう死んでいるんだろうね。

ソルネルには条件として、僕やバレンと同じ魔力で信用できる人に渡せ、と言ってあるから君は大丈夫だろう。

さて、僕はこのグランテスト大国の王家の長男として生まれたわけだけど…。

びっくりしたよ。

見た目は子供なのに前世の記憶があるんだ!

つまり僕は転生者ってわけだ。

バレンも君も転生者ってわけだ。

まさかそんなにいるとは思わなかったけどね。

僕の前世は日本人で、日本生まれの日本育ちだった。

死因は寿命。

君がなんでこの世界にいるのかは知らないけど、僕は君にお願いがある。

僕の持っていた面倒ごとを君に押し付けたい。

バレンには即答で拒否されたからね。

今はソルネルが持っているはずだ。

詳しくはそちらから。

僕からのお願いはこれくらいだ。

もしも君が僕を蘇らせる事が出来るなら、霊体でもいいから呼び出してほしい。

色々と教えられる事があるはずだ。

まぁ、つまり…この先も頑張ってくれ(笑)。


愛された前国王、ハイド・ブフェル・グランテストより


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


最後の最後でふざけんなッ!

良い感じで終わらせろよ!

なんだ(笑)って、前国王フレンドリー過ぎんだろ。

転生者ってそんなにいるもんか?


「お茶が入りました。どうぞ。」


「あぁ、ありがとう。」


そう言ってタキシードを着た羊からとりあえずお茶を受け取る。

良い匂いがする紅茶だ。

飲んでみると鼻から匂いが抜けていくようだった。

………。


「ぶふぉっっっ!」


思わず紅茶を吐き出した。

なんで羊がお茶運んできてんだよ!

自然過ぎて違和感なかったわ!


「何してるんだい?まったく…確かに最初は私も驚いたけどお茶は吹き出さなかったわよ。失神したぐらいだわ。」


「…そっちの方が酷いでしょ…。」


「そこは良いのよ。馬、おしぼりを持ってきて。」


ソルネル様がそう言うとまたもやタキシードを着た馬が部屋に入ってきた。

その後には犬、猫、鶏と続いた。

どこぞの音楽隊か。

でまたその後ろには小さなタキシードを着たアライグマが付いてきている。

もちろん全員二足歩行。

頭だけ動物だ。

馬が机を拭いている。


「………。何ですかこれ……。」


「悪魔よ。」


悪魔っ!

これがこの世界の悪魔⁉︎

悪魔ってもっと禍々しい奴じゃ無いの⁉︎

急に犬っぽい悪魔が口を開いた。


「確かに上位の悪魔は人型ですが、私達はただの雑用悪魔なのでこんな感じです。ちなみにハイド様は上位の悪魔とも契約をしていました。」


心が読まれた…。


「お願いって言うのはね、この子達の所有権をあなたに移したいの。今は私はこの子たち、雑用悪魔しか使ってないけど契約はまだ切れてないから全ての所有権をあなたに移すわ。面倒臭いし。」


最後の言葉!

面倒臭いの⁉︎


「ちなみにこの子たちの名前は左から羊、馬、犬、猫、鳥、アライよ。」


「名前が安直過ぎるっ!」


圧倒的に酷いネーミングセンス!

羊、馬、犬、猫、鳥からのアライ!

そこはアライグマもそのままで行こうよ⁉︎

そんな事を考えていると手が光り、右中指に指輪が作られた。


「その指輪はこの子たちの所有者の証よ。この6体の悪魔を抜いても残り上級悪魔が7体、他にもいるわ。頑張ってちょうだいね。」


……………。

そんなにいるの…?



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



エルヴィス恋物語


僕の名前はエルヴィス・ジャック・オウェル、この国の貴族の次男坊だ。


しかし今は貴族という身分を隠して騎士団へと入団している。


隠しているのだから貴族の特権を振り回して入ったわけじゃ無い。


自分の実力で入団したのだ。


この国に住む人を守りたくて僕は入団した。


入ったばかりの時は雑務ばかりだったけど、働きが認められ、今では中隊長にもなれた。


初めて僕の隊の人達と会った時にはとても嬉しくて、みんな僕に話しかけてくれた。


今までよりも国内の警備や山間部での危険の対処に精を出した。


そんなある日、絶望の森近くの平原で叫び声が聞こえた。


慌てて駆けつけるとそこにはブラッドウルフに襲われている母子がいた。


子供はまだ幼いが、ブラッドウルフに容赦はない。


隊のみんなの声を聞こえずに僕は気づけば母子の前に飛び出していた。


そして左手足を噛み千切られた。


どうやら母子は無事なようだ。


母子を守れた喜びとブラッドウルフに何も出来なかった悔しみを噛み締めながら僕は気絶してしまった。


何日経ったのかわからなかったが、ベッドの上で気づくと声が聞こえてくる…。


「それではシド殿、やらせてもらうぞ…。」


薄く目を開けると僕の目の前には国王陛下がいた。


国王陛下の手に握られる小さな瓶から一滴の雫が僕の胸に落ちる。


その瞬間僕の身体は喜ぶかのように再生し始めた。


痛みは無くなり、失っていた手足も治った。


目を開くと奥に1人の女性が立っているのが見えた。


美しい銀髪に真紅の瞳がこちらを見つめていた。


その姿をじっくり見る事も無いまま僕は眠りに落ちた…。


起きると僕の身体はすっかり元どおりで、隊のみんなも泣いて喜び、夜は僕の完治を祝って小さなパーティを開くと言ってくれた。


どうやら僕はある薬の証明になったそうだ。


その薬は誰かわからないがとても綺麗な女の人が持って来た、と聞いた。


みんなが祝ってくれるのはとても嬉しい。


しかし、それでも頭に浮かぶのは先程の女性の事だけだ。


時間があったからリハビリを兼ねて城内の見回りをしていると、誰かの後ろ姿が目に入った。


背中まで伸ばして首元で一つにまとめている美しい銀髪。


間違い無く僕を救ってくれた薬を持ってきてくれたあの人だ。


近づいて声をかける。


「どうかされたのですか?」


考え込むような顔をして、思い出したように彼女は言った。


「あぁ、あのボロボロだった騎士!」


酷い言い様だが、覚えていてくれた事が何よりも嬉しかった。


彼女はシドさんといい、ソルネル様のお部屋を探しているようだった。


案内すると言う喜んでくれた。


横から見てみると本当に綺麗な人だった。


真紅の瞳は陽の光を受けて輝いていた。


ずっと見ていたい、そう思ったがすぐにソルネル様の部屋についてしまった。


「到着です。ソルネル様のお部屋です。」


「ありがとう、エルヴィス君。」


そう言ってシドさんは微笑んだ。


「い、いえ、それでは、また…。」


心臓の音が漏れてしまいそうな程激しく脈を打っている。


急いでその場を離れたが、顔が赤くなっているのが自分でもわかった。


そして僕は自覚した。


僕は、あの人、シドさんに一目惚れしてしまったのだと…。

名前をどうしましょうかね…。

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