第17話 入国審査をまさかのスルー
城壁を確認してから【瞬間移動】する場所を探す。
流石にいきなり国内に現れたら驚かれるだろう。
道の脇にそれ林に入ると丁度いいひらけた場所があったのでそこに決め、アメリア達のに戻った。
突然現れた俺を見てアメリアは驚いたようだ。
「えっ!あぁ、なんだシドさんか。おかえりなさい。」
おい、なんだとはなんだ、なんだとは。
「もう到着されたのですか?」
「あぁ、それと1つ報告があるんだけど…」
俺は道中遭遇した盗賊達とその現場をアメリア達に報告した。
「それはアメリア様を狙っての事でしょう。」
「私も同感です。身代金を狙ってだと思うのですが…シド殿も同じように?」
「あぁ、一緒だ。」
どうやらミエラもバレンさんも同じ考えのようだ。
「で、どうする?今は道の脇に縛って転がしてあるけど。」
やっぱり国まで連れていくのだろうか。
騎士のミエラが説明してくれた。
「一般的には盗賊は生きているなら国に連行、死んでしまっているならその盗賊の証明になるような物を持参してから回収に向かいます。」
「じゃあ一旦そこに行って回収してから国に行こうか。」
30人ほど居たから荷車でも創造って乗せていけばいいだろう。
アメリアがはしゃいだように言う。
「早く行きましょう!シドさん、早く!テレポート!」
そんなに興味あるか。
すごいグイグイ来るな。
【瞬間移動】で運ぶ対象を設定してからなるべくまとまる。
「さて…【瞬間移動】。」
次に目を開けると、目の前には盗賊達が居た。
まだ気絶してる。
『予想以上の魔力量だったのでしょう。強制的に起こすまでは1日はこのままです。』
もうちょっと魔力を落とした方が良かったな。
「これは全てシド様が?」
「えぇ、とりあえず馬車につける荷車を作ります。それから乗せて行きましょう。」
大きめの荷車を創造り、ようやく全部乗せきった。
こいつら全員がっちりしてるから重い。
「こんなに可愛そうな盗賊見た事無いです…。」
確かに、俺も始めて見た盗賊の全員が白目を剥いて、そのうち数人が泡吹いてるっていうのは驚く。
これやったの俺だけど。
「さぁ、次は国の前に行きましょう!」
アメリアの興奮具合が妙に怖い。
こんなキャラだったか?
アメリアに急かされるようにしてさっきと同じように【瞬間移動】する。
「本当に1日足らずでグランテストに…。」
ミエラが呆然と呟く。
バレンさんが馬車の御者をし、後ろにアメリアとミエラと俺が乗ると馬車は動き出した。
すると御者席にいるバレンさんが振り向いて忠告してくれた。
「シド様、国内もしくは人前では魔纒はしない方がよろしいかと思われます。それだけで目立ってしまうので。」
「…?わかった、ありがとう。」
(リーヴ、魔纒って何?)
『魔纒とは、マスターやコーラスの言う、魔法を身に纏う事です。』
それの事か。
一般的には魔纒と呼ばれるのか。
確かに珍しいらしいし隠しておこう。
しばらく進むと城壁の関所に着き、それから兵士の男が前に進み出てきた。
「止まれ。ん?バレンさんでしたか。念のため証明証を見せていただいても?」
「えぇ、どうぞ。」
そう言うとバレンさんは何かを懐から出して兵士に見せた。
「確認しました。それでバレンさん、後ろの荷車とその銀髪の者は?」
「この方はアメリア様の、そしてソルネル様の救世主になろう方です。後ろの荷車には道中現れた盗賊が乗っています。こちらもこの方が1人で倒されました。」
兵士が驚いたようにこちらを見た。
「ッ!救世主と言う事は見つかったのですか⁉︎」
「はい、その通りです。」
「それでは急いでお通りください!」
そう言うと兵士は合図をし、関所の門を開かせた。
あれ、入国審査とかは?
恐る恐る兵士に聞いてみる。
「あの…入国審査とかは…?」
「あぁ、それならいりません。アメリア様やバレンさんがここまで信頼しているんです。心配無いでしょう。」
その言葉を聞いて安心した。
関所に来るまですっかり【隠蔽】の事を忘れていたのだ。
助かった。
兵士の言葉を聞いたアメリアが馬車から身を乗り出して兵士に言った。
「その通りです!心配いりません、私とミエラが保証します!」
馬車から荷車を取り外し、そのまま俺達は入国した。
外を見てみるとグランテスト大国は活気にあふれていた。
至る所に人がおり、路上に屋台を出して販売していたり、店の外で客引きをしていたりと、多くの人がいる。
前方には大きな白塗りの城が立っている。
デ◯ズニーの映画に出てきそうな城だ。
気になったのでアメリアに聞いてみる。
「アメリア、あの城は王様の?」
「はい、あの城はこの国の国王が住む王城です。」
ですよね。
流石王城と言うだけあって、とてつもなく大きい。
しかも綺麗。
しばらく馬車は国内を走った。
その間は雑談をしていたり、この国について教えてもらっていた。
見ての通りこの国は資源が豊富で、豊かな国らしい。
経済面も今のところ怪しいところは無く、至って平和らしい。
アメリアはこの国の色々な事を知っていた。
やはり貴族なのだろう、経済面も詳しい。
話していると急に馬車が止まり、バレンさんが馬車の扉を開けて声をかけてくれた。
「到着いたしました。」
馬車から降りると目の前には騎士が道をつくるようにズラッと並んでいた。
そして目の前には先程の王城。
すると騎士の道の奥から引き締まった体つきでブロンドの髪を持つ、ダンディーな男が歩いてきた。
その男はアメリアの前に片膝をつき、アメリアに言った。
「おかえりなさいませ、アメリア王女様。」
「えぇ、ただいま、ホルト。」
……へ?
今何て言った?
アメリア王女?
困惑しているとアメリアがこちらに向き直って挨拶をした。
「へへっ、驚いてますか?それでは、改めまして自己紹介をさせていただきます。私はアメリア・グレース・グランテスト、この国の第一王女です。以後お見知り置きを。」
「………。え、王女?アメリアが?」
「はい!シドさん、相当驚いていますよね?」
逆にこれで驚かない奴がいるだろうか。
貴族どころじゃなくその上の王族、しかも第一王女だったのだ。
心臓が止まりそうになった。
先程ホルトと呼ばれたダンディーがアメリアに聞いた。
「アメリア王女、こちらの者は?」
「この方は私達の命の恩人です。そして、お祖母様の容態を完治させる薬を醸造してくれた者です。」
「なっ、生命の水を!それがあればソルネル様を…。そちらのお方、私はホルト・ジェフ・イウェルトといいます。この度は我らが王女、アメリア様を助けていただき、誠にありがとうございました。」
ホルトさんが頭を下げたので慌てて頭を下げ返す。
「お初にお目にかかります、私はシド・テンペスト・シリウスと申します。どうぞ、よろしくお願い致します。」
「それではお互いの挨拶も終わったようですし、早速お父様とお祖母様のところへ行きましょう。」
そう言ってアメリアは俺たちを先導して騎士の道を歩き、城内へと入っていった。
やはり王城は内装も豪華で、至る所から高級さが溢れ出ている。
アメリアの先導があるからいいものの、1人だと迷子になってしまうだろう。
壁にかかる絵を見ながら歩いているとアメリアが止まった。
「この先にお父様とお母様、私の妹、そしてお祖母様がいます。既に城内の者によって連絡は行っているので準備は出来ています。」
そう言ってアメリアは豪華な扉を叩いた。
「アメリアです。失礼します。」
すると扉は開き、中の様子が露わになった。
そこにはイスに腰掛けるこの国の国王と、アメリアの妹かと思われる少女、そしてベッドに横たわり、身体中に黒い斑点を浮かび上がらせた太皇太后がいた。




