第12話 蒼雷
「創星龍様が契約をなされたのなら、私とも契約をしていただけますか?」
そう言ってシェルも俺と従魔契約を行った。
これで俺の従魔は2体となった。
焚き火を囲んでいると、アヴェルが思い出したかのように言う。
「主よ、お主の名にはテンペストと入っているが、【雷化】は使えるのか?」
「雷化?なんだそれ?」
「やはり知らなかったか…。【雷化】とはスキルの一種だ。名にお主のようにテンペスト等の魔法の属性名が入る者はその属性を身に纏うことができるのだ。炎を纏うならばフレイム、水を纏うならリクイッドのようなものだ。」
「じゃあ、名前の中に属性を表す語を入れると使えるものなのか?」
「いえ、使える者は限られております。その名をつけられる事を許された者の身体には、生まれた時から何かしらの紋章が入っています。」
「うむ、火属性ならば炎の紋章が、水属性なら雫の紋章が、雷属性なら稲妻の紋章が入っておるぞ。」
「紋章…。じゃあこれはどうなんだ?」
そう言って俺は左脇腹にある紋章も見せた。
中心に八芒星があり、それを二重の円が覆っている。
それは今シェルとアヴェルの言ったどれにも一致しない紋章だった。
「む…なんだこれは…。シェルよ、このような紋章を見たことはあるか?」
「いえ、初めてです…。もしかして…いや、でも…。」
「何か心当たりがあるのか?」
実際俺もかなり気になっていた。
しかしコーラスやカトルに見せるのもちょっと、と思っていたのだ。
「憶測でしかありませんが…。シド様、あなたは幾つの属性の魔法が使えますか?」
「ん?全属性使えるけど…?」
その瞬間シェルとアヴェルが目を見開いた。
「お主!全ての属性の魔法が使えるのか!」
「え、まぁ…。」
「…古代から六芒星は魔法の全属性を表すものとされています。しかし、全属性魔法を操ることができる者などいる事はありえません。多くても4つが限界です。現に、大魔導士と呼ばれた男も4属性までしか使うことはできませんでした。その者はフレイムの名を持っていて、【炎化】のスキルを持っていました。」
「それがお主のその紋章を見る限りだと全ての属性を纏うことが出来ると思われるのだ。」
「しかし俺は【雷化】も何もできないぞ?」
すると俺の頭の中に例の電子音声が流れた。
『テンペストの名に違和感の無いよう、スキル【雷化】を会得しました。』
『紋章に違和感の無いよう、スキル【炎化】、【水装者】、【風災者】、【凍氷者】、【硬質化】、【聖纒人】、【堕落者】を会得しました。』
………。
わぉ。
まさかの全属性を纏えるようになっちゃった。
【堕落者】は闇魔法を纏うのだろうけど、俺は堕落するつもりは無い。
「訂正、今出来るようになった。」
「「今⁉︎」」
「そう、今。」
ひとまず【雷化】を発動してみる。
すると身体中に電気を纏うような感覚がした。
右手を見てみると蒼色の稲妻を纏っていた。
なぜかシェルとアヴェルが呆然として俺を見ている。
「な…お主、蒼雷を操れるの…?」
「蒼雷?なんだそれ?」
アヴェルとシェルに会ってからかなり多くの事を知ったが、疑問の方が多いな。
いちいち聞くのも悪い気がするな。
『所持者の疑問に答えるため、スキル【完全回答】を手に入れました。』
……。
また新しいスキルを手に入れたようだ。
今夜だけで10個のスキルを手に入れたぞ。
都合が良すぎて怖いな。
しかし…、【完全回答】か。
どんなスキルだ?
そう思ってステータスから確認しようとすると脳内に電子音声が響いた。
しかし今までの電子音声とは違い、まだ人間味のある声だった。
『スキル【完全回答】とは、このスキルの所持者が疑問に思った事、他のスキルの補助、行動を起こす場合に必要な演算等を行います。』
自分の中にこの世界の先生ができたようなものか?
『そうとも言えますが違うとも言えます。私はマスターの前世の世界の情報も呼び出す事が可能です。また、これよりスキルのレベルアップ、会得等の情報は私がお教えします。』
前世《地球》の情報までか!
この世界に産業革命を起こす事も可能なのか⁉︎
とりあえずそれは置いといて…まず蒼雷ってなんだ?
『蒼雷、とは、神が操る事の出来る雷の事です。通常、人間に行使する事は不可能です。また、人間が使う事は許されておりません。しかし、マスターは女神ヘスティアのミスにより、蒼雷を扱う事が出来ます。コーラスが蒼い雷魔法に反応したのも、カトルが人界に降りて来たのも、その蒼雷を隠す事が目的だったと思われます。』
そう言うことか…。
そう考えれば色々と辻褄が合うな。
ん?
でもカトルは俺にそんな事言わなかったぞ?
忘れてたのか?
ちなみに、今の俺と【完全回答】のやりとりにかかっていた時間は1秒にも満たない。
なのでシェルとアヴェルは俺に違和感は抱いていない(筈だ)。
「いや、やはり蒼雷に関してはわかった。どうやら扱えるようだ。」
「そうか…。となれば、もしかしたら他の属性でも神の力が使えるやもしれぬな。」
「その他についても色々と俺のメイドに聞きたい事があるから一度家に帰ろうと思うんだが…一緒に来るか?」
アヴェルとシェルは俺の従魔になったわけだから、カトルとの約束も果たさなくては。
それに通常時の魔力のコントロールについても聞きたい事があるからな。
「さて、それじゃ行こうか。幸い、家にはまだ部屋が余っている。しばらくはそこで過ごせば良い。」
実際ついてこられてバレでもしたら面倒臭い事になる。
創星龍を従魔にしている事を知られたらそれこそ大事だ。
下手すれば国のために働く、なんて事になるかもしれない。
それに【瞬間移動】を使えばすぐに家にも帰れるし、ここにも戻ってきて、すぐに下山を再開できる。
2人に俺のスキルについて説明してから、俺は2人も対象に入れて家へとテレポートした。
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「うわっ!びっくりした!って、あれ?シドさん、もう帰ってきたんですか?」
家に帰ると目の前にカトルがいた。
何故か外に。
「いや、そうじゃなくて…。で、なんでお前は外にいるんだ?」
「いやぁ…ちょっと今は中にいれるような状況じゃないと言うか…、中々に気まずいと言うか…。あと、後ろのお2人さんはどなたですか?」
「ん?あぁ、俺の従魔になったんだ。ってか寒ッ!もう中入るぞ。」
「え、あっ、ちょっとまっ」
カトルが言い終える前に家の扉を開けると、そこには怒っているように見えるコーラスと、床に正座しているヘスティアが居た。
なんでヘスティアがここに居るんだ?
コーラスが俺に気づいた。
「?マスター、お帰りなさいませ。」
「ただいま。で、なんでヘスティアが床に正座しているんだ?」
「あぁ、シド君!ごめんなさい!またミスしてしまいました!」
「魔力の事か?速さの事か?異常にスキルの会得が早い事か?それとも蒼雷の事か?」
「マスターはもう既に蒼雷の事も知っていましたか…。と言うことは後ろのお2人もその事を…?」
「あぁ、その事については心配無いよ。この2人は俺の従魔だから。」
そうして俺はコーラス、カトル、ヘスティアの3人に今までの経緯を話した。
話終わると、床に正座していたヘスティアが思い出したように言った。
「創星龍って…もしかしてウォロ君⁉︎」
「やっと思い出したか、ヘスティアよ。」
どうやらこの2人は知り合いのようだ。
すると俺がおもっていたことをカトルが訪ねてくれた。
「お2人は知り合い何ですか?」
「え?飲み友達だったのよー。でもちょっと前から急に会えなくなっちゃって。」
「ちなみに、こいつが言うちょっと前と言うのは我が邪龍戦で傷を負った時の事だ。」
いや、お前らおっさんか。
飲み友達って。
そこからはアヴェルとヘスティアの昔話が始まった。
2人は放っといて、俺はカトルに【雷化】のスキルなどの、魔法を身に纏う事が出来るようになった事と、通常時の魔力のコントロールについてを聞くことにする。
「あぁ、そういえば、シドさんには魔法の使い方しか教えてなかったですね。魔力のコントロールについても【知識強制収納】しましょうか?」
「頼む。」
【痛覚軽減】で痛みも和らぐだろう。
前と同じようにカトルは俺の頭に手を置いた。
こちらも、前と同じく情報が雪崩れ込んでくる。
しかし驚くほど痛みは無い。
というよりも、痛みが全く無い。
もうこれは【痛覚無効】じゃないの?
情報の収納が終わると、どうすれば魔力を抑えられるのかがわかった。
「あれ、シドさん、前みたいにいたそうじゃないですけど…もしかして新しい扉開いちゃいましたか?」
「んなわけあるか。【痛覚軽減】のスキルのおかげだ。」
すると【完全回答】が報告してきた。
『カトルからの魔力のコントロールについての【知識強制収納】により、スキル【炎化】は【進化】により【大炎龍】へと進化しました。』
『カトルからの魔力のコントロールについての【知識強制収納】により、スキル【水装者】は【進化】により【海王】へと進化しました。』
『カトルからの魔力のコントロールについての【知識強制収納】により、スキル【聖纒人】は【進化】により【創星者】へと進化しました。』
なんかすごい事になったな。
【海王】とか海の王だぞ。
本物とか出てきませんように…。
「とりあえず知りたい事は知れた。シェルは一番奥の部屋を使ってくれ。アヴェルにはその手前の部屋を使ってもらおう。今日はもう寝よう。2人はしばらくここに住んでもらって構わない。何かあったら連絡するからそれまでは待っといてくれ。」
「分かりました。こちらも何かあったら指輪を通して連絡します。」
そう言って俺たちは自分の部屋に戻り、眠りについた。




