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世界が生まれ変わる物語。  作者: ゆうわ
第二章 砂の果実。
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2.砂の果実。 それぞれの結末。 6


 ◆天為と高坂。 ……アンの解放直後。


 「さて、タマウからの伝言だ。この街を救ってくれてありがとう、と。私も同時に救われたと伝えて欲しいとの事だった。意味は彼らになら伝わると言っていたが、これでいいか?」


 コットスは、少し自信なさげに、元トマ国王女タマウの伝言を伝えた。天為と高坂にはその意味が嫌という程に伝わった。天為はもう少し酔っていたら泣いちゃったかもと思った。そうだね。もし、クレイフが全滅していたら、俺達はもう、まともでいられなかったかもしれない。これはクレイフではなく、トマであり、ビゲイトであり、カシャであり、リンであり、あの時の全てだったから。彼等にとっては。


 「ねぇ、彼女はもう大丈夫そう?」


 ハルは聞いた。タマウの右腕は永遠に失われてしまった。治療が間に合わなかったのだ。


 「ああ。大丈夫だ。まだ、体力が戻っていないが問題はない。果実を従える新しいクレイフの王女になるだろう。最早、トマの涙などではない。」


 「そか。ならいいや。ところで……ほんっとおおおおに、王都には寄らないの?ステキな食べ物やお風呂とか、さいっこうに美味しいお酒がアルかもよ?」


 かははは、と天為の月色の髪と瞳が砂漠の光の中に踊った。


 「しつこいね、ハルも。その話の途中だったっけ?美味しいお酒って言うけど、お酒は全部美味しいんだよね。実は。」


 天為はグラスを掲げて、ハルに乾杯した。空のグラスをウキハの玉座にも見えるその岩の窪みに置いて立ち上がる。グラスは割れない。脇に落としていたドラムロールの荷物入れを取り上げて肩に掛ける。ふーっと、軽く長く息を吐き出した。彼の切れ長の瞳は陽光に照らし出されるウキハの屋上を見据えた。ハルはその横顔に見取れていた。何か普遍性を感じさせる美しさがそこにはあった。ずうううっと、見てられる。


 ……何を見てるんだろ?天為。


 言葉に成らないその疑問は、当然、答えに成らない。それは、そのまま砂漠の空に消えた。天為は歩き出し、それが合図だった。高坂も歩き始める。ちょっと下唇が出ちゃってるが、ハルも歩き始めた。セツナは大人しくしている。ウキハのヘリには、コットスがウキハ内部の螺旋階段の先にあった開かずの扉の向こうから引っ張り出してきたモノがあった。異質の馬だ。石のような卵の殻のような質感を持つそれには頭も首もないが、10本の脚があり、それでも、確かに馬だった。人を運び、連れて行く。ハルはこの異質の馬と親和性が高く、角を操作する事で、馬を操る事ができた。一番前にハルが跨がり、その後ろに高坂、荷物と続き、最後に天為が後ろ向きで跨がった。


 「行くのか。」


 コットスは最後に呟いた。確認ではない。引き止めたのでもない。彼らしくも無く、寂しかったのだ。ハルは馬の操作に夢中だし、セツナは大人しくしている。高坂は無口で、天為は……天為はそう、いつも通りだ。いつも通りに笑い、4人はウキハの頂上から飛び降りて、旅立った。ごく、あっさりと。天為の笑いだけが微かに残ったが、やがてそれも、風に吹かれて消えていった。ウキハは浮かび、空を飛んでいる。直径10キロメートルはあろうかと言う巨大な岩の塊だ。蒼い空に浮かんでいた。涼やかな風が抜けた。コットスは改めてネクタイを締め直し、号令を発した。


 「王都サザへ!これはただの区切りだ!休んでいる暇は無いぞ。」


 スーツの埃を払い、歩き出す。足音は常に高く。でも、その口元は微笑んでいた。彼にはまた、これから別の戦いが待っているのだ。今、此処を飛び出して行った天為達に別の旅が待っているように。それを日常と呼ぶ者もいるし、仕事と言う者もいる。あなたは何と呼んでいるのだろうか?目の前に終わりなく続くソレを。少なくとも、コットスは、天為は高坂達は、こう呼んでいた。


 冒険、と。


 長く苦しい旅で、得る物もあるが、失う物も多い。止めたくて、休みたくて、投げ出したくて。でも、ソレは続く。それを彼らは冒険と呼んでいた。辛く詰まらない時も多い。光無く、闇に沈む事も多い。ゴールなどなく……でも、それは、冒険だった。未知への挑戦だ。コットスは一瞬振り返り、天為達の進んだ先を見つめた。既に彼らの影は無い。コットスは笑う。コットスは応援していた。忘れないで欲しい。冒険者は冒険者を応援している。いつだって、どこにいようとも。あなたがそれを忘れているときでさえも。応援しているのだ。いや、忘れてもいい。思い出して欲しい。私達がみんな、応援していることを。かつん、かつん、かつん。彼は進む。少し笑いながら。……そして、コットスはウキハの影へと降りて行った。全ては終わり……そして、これから始まるのだ。



 ◆熱砂の国サザ ……数日後。王都到着。



 浮葉ウキハが王都サザに到着した時は、既に王都は死んでいた。巨大な王城はおろか、広大な城下町にさえ、誰もいなかった。コットスは決断し、タマウが行動する。動物達は怯えて、叫び逃げ惑った。草木は震えて、花びらを落とした。浮かび上がったのだ。


 王都が。


 浮葉ウキハの比ではない。50キロメートル四方の巨大な街がそのまま全て浮かび、ウキハと一体化したのだ。創国当時の姿を見せる、それは正に国そのものだった。そして、クレイフと王都サザが絡まったその巨大な大地はゆっくりと方向転換し、沈む夜の世界に潜り込んでいった。そしてこれは、人類最後の希望とはなる、が、まだ、誰も知らない。


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