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世界が生まれ変わる物語。  作者: ゆうわ
第二章 砂の果実。
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2.砂の果実。 ウキハ。 4


 何の為に催された晩餐会だったのか忘れてしまった。でも、幸せな晩餐会だった。ノースラドの小国トマの王城で開催された晩餐会だった。まだ、苦痛を知らずにいたタマウは父や母や家臣達に囲まれて幸せだった。皆、お酒を飲み過ぎて浮かれて、騒がしかった。でも、そこには笑顔が溢れていて、幸せがあった。バルコニーのドアが開くまでは、確かに。夜風が吹き込み、カーテンが翻り、人々は不吉を感じて振り返る。バルコニーの暗がりにぼんやりと浮かぶ白い影。乳白色の全身鎧を身に纏った騎士だ。がしり、がしりと近づいてくる。衛兵が対処するより早く、それは笑った。ぎぃぃぃぃぃっと。


 「トマ国国王か?私は今、ローランド、ザ・ブック、ファゴサイトを探している。まずは国王に訊ねようと、此処にきたわけだ。」


 クォの大天使、世界に剣を捧げたと言われるその騎士は傲岸に言い放った。トマ国国王は、衛兵を身振りで制してから、返す。


 「知らんよ。濁眼の聖騎士よ。センス(神々の感覚)を持つそなたであれば、勝手に見つければ良かろう。そして、手にした時は、この国を立ち去れ。」

 

 濁眼の聖騎士は口の端を大きくひきつらせて笑った。彼の目は魂を見つめ、嘘を読み取る。


 「理解した。」


 濁眼は踵を返して、バルコニーへと戻る。暗い夜風が吹いた。王が質問を投げかける。


 「濁眼よ!そなたは何故、クォの大騎士団を抜けたのだ。今、光の央都(ラシニル)はどうなっているのだ?大天使よ!」


 濁眼は少しだけ振り返り、口を開いた。


 「タマウ!しっかりして!血は止まったわ!タマウ!」


 ハルの言葉で記憶の沼からタマウは向け出した。


 あ……あ。そうだ。あの時からだ。あの時、私の幸せは終わり、絶望の旅が始まったのだ。そうだ。私は全てを失った。家族も友達も国も人々の笑顔もああ、皆の命も。全て、清浄な大地さえも。ああ。そうだ。もう、嫌。これ以上、誰かを失うのは。もう……


 タマウはゆっくりと立ち上がった。ハルが止めようとするが、タマウは虚ろな瞳で彼女を制した。


 「私はやるべきことを……為すべきことを。」


 タマウは無事な左手を果実に載せて、命じた。


 「果実よ。目覚めなさい。今がその時です。」


 だが果実は答えない。タマウは瞳を閉じる。そしてゆっくりと手首から先が失われた右手を振り上げて、


 「タマウ。ちょっと、なにする……


 振り下ろした。血が吹き出す。タマウは叫ぶ。


 「果実よ!目覚めなさい!!」


 また腕を振り上げて打ち下ろす。肉が捻れる気味の悪い音が響いて、血がまき散らされる。タマウは狂ったように叫ぶ。起きろ!起きろ!オキロ!オキロおおおお!!果実!果実!カジツ!かじつ!ガジヅ!!タマウの血は周囲にまき散らされて部屋を赤く染めた。部屋中の人々はタマウの狂気に触れて硬直し、狂ってしまった亡国の姫を絶望を持って見つめた。


 ……きっともう、誰も助からないのだ。全員、奈落に呑まれて、死ぬ。ローグロスの忌まわしい蟲に肉を噛まれ、骨を啜られるのだ。


 ハルが恐怖と戦いながら、タマウを止めに入ろうとした時、ウキハは大きく、本当に大きく傾き、遂に沈み始めた。人々は新たな悲鳴を……


(ニヤマカ)を確認。私は、第6座(オ・オー)、第3果実。世界樹(ラコルム)の枝が破損しています。修復の見込みは有りません。周囲に連携可能な果実、枝、幹は存在しません。現在地を離脱します。浮葉(ウキハ)を起動。」


 それは遂に目覚めて光を取り戻した。血で赤く染まった部屋は果実の美しい蒼い光に包み込まれる……



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