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世界が生まれ変わる物語。  作者: ゆうわ
第二章 砂の果実。
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2.砂の果実。 ウキハ。 2


 ウキハ最奥の部屋で、果実は微睡んでいた。独楽状の一本足のテーブルの上で。その横で愚かな老人が唾を飛ばしてスーツ姿の男を罵倒していた。貴様の責任だ、どう償うのだ、と。だが、その男は微笑んでいた。どうするべきか?それに気付いたのだ。背ばかり高い無能な泉の翁を改めて突き飛ばし、街人をかき分け、倒れていたタマウを助け起こす。


 「いつか、言いましたね。私達の利害が一致していると。」


 助け起こしながら、コットスはタマウに言った。痩せて細い頬や顎に踏みつけられた傷を負いながらも、タマウは何とか答えた。


 「ええ。でも、あなたにとっての利がないと、私はお答えしました。」


 なぜ今ここで、コットスがこの話をムシカエスのかタマウは解らないまま答えた。その素直さをコットスは好ましく思い……あぁ、そう。好ましく想った。


 「ふふ。」


 彼の体は勝手に笑った。コットスは少し驚きながらも、自身のその反応を受け入れた。彼は彼女の手を引き、一本脚のテーブルへと、果実の、元へと進んだ。ラーダンモールを恐れて、怒りの矛先を求めて右往左往する街人達の間を縫って、二人は進んだ。誰の言葉も関係なかった。まるで駆け落ちする恋人達のように。光を失い、固く外郭を閉ざす砂の果実の前まで彼らは進んだ。


 「血を以て、果実を育てよ。果実は砂を守り、国を運ぶ……サザは果実をかざし、人々を導いた。砂の果実はサザの血を認め、大船を繰り出し、王国を動かした。」


 コットスはこの砂漠の国、サザの創国の主、サザの残した意味不明のうたの一節をなぞった。きょとんとするタマウが可愛らしく想えた。


 「世界樹は知っています。自身を創造した主を。そして、その主を認識して主の為に力を発揮するのです。そのことをサザはこの拙い歌の一節で伝えているのです。」


 まだ、タマウはぽかんとして、コットスを見上げでいる。泉の翁達がいよいよ怒りに身を任せ、騒ぎ始め、ラーダンモールを恐れる街人達の喧騒も極大に達しようとしていた。


 「今、このコナゴナになった世界(リム・リナ)に残る国々の王族は全て過去から引き継いでいる古い血筋です。勿論、貴方も。残念ながら、私ではだめなのです。創造主ではないから。でも、貴方なら。タマウ。果実に命じて下さい。目を覚まし、血を継承する者に力をはじめとする貸すように。」


 ウキハ最奥のこの部屋の喧騒はいよいよ、盛り上がり、爆発しようとしていた。泉の翁の取り巻きはとにかく大声を出し、混乱を助長していた。行き先など関係ない。とにかく混乱が大きくなればいいのだ。翁はバカだった。ここを議会の会議場と勘違いしていた。トニカク騒いで混乱させて決着を引き伸ばせば勝ちだと考えていた。騒ぎに飲み込まれる人々は不安と不明に怯えて雑音をますます増大させる。そして、


 「コットス!」


 この最奥の部屋の両開きのドアを押し開き、更なる混乱が現れる。ギルド月雲の構成員に案内されたハナが到着したのだ。ハルは叫んだ。


 「ラーダンモールと鯨と濁眼の聖騎士!ウキハに向かってるわ!ここを棄てて砂漠の奥に逃げるしか……


 最後まで叫ぶ前に、本当の混乱が追いかけてくる。それはホランだった。満面の笑みでハルを羽交い締めにして、そのまま部屋の中央に、コットスの、果実の元に向かって突進した。


 「事務屋コットス!無様だなぁ!」


 ホランは叫んだ。でも、その声は彼の声では無い。女性の声だ。ホランの顔が縦に割れ、中から美しい女性の小さな顔が現れる。白く愛らしいその顔を縁取る銀色の艶やかな髪がくぐもった部屋の空気に踊る。一瞬でコットスを仕留めて、果実を奪える距離まで接近した。コットスは彼らしくもなく、正に無様に叫んだ。


 「ボウモア!!」


 美しいボウモアは煙を纏い、ホランの中から姿を現した。コットスを殺し、果実を盗もうと彼に飛びかかる。部屋の喧騒は頂点に達する。その中でもう一つ別の意思が動く。怪我人の振りをしていた男が立ち上がり、満面の笑みを浮かべて、騒ぎの中心に飛び込んだ。いつか、そう、いつかハルが殺し損なった街のチンピラだ。根付いてしまった禍根だ。彼は腐った復讐心だけを頼りに生き残り、うずくまるように過ごしてここまでたどり着いたのだ。目的は一つ。


 ……殺す。ナイフを乳房に埋め込んでやる。切り裂いて弄んで、肉を喰らってやる……


 果実に向き合うタマウ。ボウモアと対峙するコットス。ボウモアに捕縛されたハル。ハルを狙う街のチンピラ。全てが果実の周囲に重なり、最後の一瞬を迎える。砂漠の日は頂点を過ぎて落ち始めようとしていた。誰の思惑も汲み取らず、だだ、過ぎて落ちようとしていた。

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