2.砂の果実。 決戦。 10
「……消えた?」
高坂は遠雷にマイトの大部分を吸い取られながらも、何とか意識を保ち、天為とあの男の戦いの帰趨を見守っていた、つもりだった。だが、二人は消えた。高坂の鳶狩りの目をもってしても消えたようにしか見えなかった。死を覚悟の上でもう一度、遠雷を鳴らそうとしたその瞬間に消えたのだ。ウキハから確認出来る限りの周囲をぐるりと見渡そうとした高坂の前で、世界が割れた。燃え上がる巨大な黒馬が現れる。6つの蹄が世界を踏みしめる。その背には濁眼の聖騎士。彼の頭部は既に修復している。するりと黒馬から降りた濁眼の聖騎士は、割れた世界を背に告げる。
「貴様。面白い物を持っているな。私の目は魂を見る。それが過ごして来た年月を見る。貴様が武器として使用したそれは、完全世界の遺物だ。つまり1000年を遡る。ラコルムがまだ生きていた時代のアイテムだ。貴様のような一般人が所有する権利は無い。それは、伝説の中に生きる者達が所有すべき物な
呼雪の刃が濁眼の後頭部を捉える寸前で濁眼は回避して、天為を叩き落とした。同時に殴りかかってきた高坂の攻撃をかわして、彼を殴り倒した。二人共、打撃で息も出来ず、衝撃で視界が白飛びしていた。濁眼は天為に向き直り、問う。
「貴様のその刀は更に古い。まぁ、それは遺物ではなく別物だが。さて、どうやって狭間の世界を抜けてきたのだ。あの場所は無限のマイトを持つ者しか通ることのできない世界だ。」
天為は苦痛に身を捩りながらも、答えた。
「あんのくたーさんばーくさんほーでい。理解したか?クソクラエだよ。」
吐き捨てて引きつった笑いを濁眼に投げる。高坂は震えながらも、立ち上がろうとしている。濁眼はその二人の強がりを見て笑う。ぎぃぃぃ。高坂の顔を正面から殴り、天為の腹を蹴り上げた。二人は倒れ込む。天為はごぼり、と良くない血の塊を吐き出した。身体の中のどこかが損傷したのだ。それもとても良くない場所が。濁眼の聖騎士は、確かめるように自身の再生した頭部を触り、ゆっくりと呟いた。
「全く感心する。ただの人間が良くここまでこの私に挑む事ができるのだ。だが、まぁ、いい。もう、死ね。私は先を急ぐ。果実がこの下にあるのだ。恐らく、確認されている世界唯一の果実だ。果実は世界樹そのものだ。私が手にする事のであれば、ま……
唐突に、濁眼の聖騎士の言葉が消えた。濁眼は口をぱくぱくと動かしているが、声にならなかった。それまで大人しく濁眼の聖騎士の側に佇んでいた狭間の王は何かを感じ取り、世界を見上げて……そして、狭間の世界へと、消えた。彼らは気付いた。消えたのはロロクエストラムダだけではない。世界から、音も消えたのだ。そして、彼らの頭の中に御御鳴りが降ってくる。




