2.砂の果実。 決戦。 9
ごろごろ……。
と、遠雷が鳴り響く。高台では、高坂が倒れ込んでいた。世界樹の幹から削りだした遠雷に、マイトを吸い尽くされて、失神寸前の状態だった。彼の腕はマイトを吸い上げる無数の管で、遠雷と接続されている。
……やったぞ。仕留めた。俺は……リン……。
高坂はリンを握り締めて、呟いた。息は荒く、意識は薄い。高坂は、満足そうに微笑んだ。
◆
天為は、遠雷の閃光に一時的に視力を奪われていたが、程なくして、視力は回復した。その彼の前に、濁眼。仁王立ちだ。頭部の左半分が消えていた。
「驚いた。」
天為は言葉を失った。濁眼の聖騎士は喋る。
「驚いた。まさかまさか。この私が傷を負うとは。しかも、続けて、2度。」
「死なない……のか?これで。」
天為の干からびた言葉が砂の上を転がる。そもそも、遠雷が直撃して、頭部半分で済むものなのか?いや、頭が吹き飛んでいるのに、何故生きていられるのだ?
「私は世界。世界そのものだ。世界に等しい魂が不死を実現している。ある意味、私は今、死に続け、魂は失われ続けている。だが、私の魂は無くなる事は無く、私は死に追いつかれる事はないのだ。」
ないないうるせーよ、と軽口を言おうとして言えず、天為は膝立ちのまま、濁眼の聖騎士を見つめる。
……そうか、これが神々の感覚を持つ者なんだ。
天為は、実感した。世界と同化出来る天為の精神は濁眼の頭部の傷から、本当に無限にマイトが流れ出しているのを感じていた。溢れ出すマイトが肉体を再生していく。天為の目の前で、傷は修復していった。濁眼の聖騎士は高台の上の高坂を見る。ウキハには果実があり、彼は落魂を落とすことが出来ない。それに彼は確認する必要があった。何が自分をここまで追い込んだのか?
「狭間の王よ!」
濁眼の聖騎士は呼ばわった。呼び声に応じて、彼と天為の間の空間が縦に割れてずれた。写真を縦に切ってずらしたようにしか見えなかった。ずれて現れた空間に黒く燃え上がる巨大な馬が潜んでいた。濁眼はその黒馬に手を伸ばし跨がり世界の切れ目の奥へと駆け込んでいった。そこは、魂以外何も存在しない、狭間の世界だ。死の世界だ。だが、天為は迷わず、濁眼の後を追い世界の狭間に飛び込んだ。




