2.砂の果実。 決戦。 5
燃え上がり、天を貫いた獄焔は彼が右手を払う事で消失した。
……ぎぃぃぃぃ。
彼は笑う。口の端を歪めて。砂の果実を目前にして、細々とした雑事に捕らわれている場合ではない。速やかにその完全世界の遺物を手にする必要がある。そう、彼はコナゴナになった世界を救い、再構築する義務があるのだ。まぁ、実のところ神は、そんな義務を課してはいないのだが。
濁眼の聖騎士は白濁した瞳を周囲に向ける。一切の魂は感じられなかった。ただ一つ、天為と名乗ったあの剣士が振るっていた大長尺の古刀だけはそこに生き残っていた。大地に突き刺さっている。そう言えば前回もそうだったかもしれない。あの時は見過ごしたが。濁眼の聖騎士は唯一の生き残りである、呼雪に歩み寄る。世界に14振りある「キー」を所有する濁眼の聖騎士からすれば呼雪など、どうということも無いのだが、この縁は別だ。今また、こうして合間見えるとは。意味は後で解るものだ。聖騎士は呼雪を持ち帰ろうと歩み寄った。
大地は砂に覆われて、空は抜けて青く、世界は静かで美しかった。落魂で出来た巨大なクレーターの中心で、名もない聖騎士だけが動く。完全世界が生まれる以前の混沌とした時代の生き残りであるところの呼雪を手にしようとクォの大天使は歩を進める。あの時何故、天為を見逃したのか?理由はどうとでもつけられたが、納得はしていなかった。だが、これで何となく理解出来た。今日、この時、この場所で再び出会い、この妖刀を受け渡す事に意味があったのだ。あるいは、ここで落魂を落とす事に。いずれにしてもそして、今日この時の意味はまた後日、知ることになるのだ。
……運命とは不明の連続なのだ。
濁眼の聖騎士は笑う。口の端を大きく歪めて。彼は確信していた。どのような物語のどんな主人公でさえ敵わないのだと。この、クォの大天使、12の無刀を駆る騎士、無名、世界に剣を捧げた騎士……ありとあらゆる名で呼ばれるこの濁眼の聖騎士には。あるいは、そう、まさに語り部でさえも。だが……
……来い。
そして、天為は呟いた。




