2.砂の果実。 果実。 19
その扉を開く瞬間、背後で凄まじい気の膨れ上がりを感じたコットスは、一瞬、動きを止めようとした。無論、止めない。コットスは、有り余る膂力をすべて傾けて、その扉を押し開いた。ある意味、それは、運命的な一瞬だった。
「コットス!」
タマウの痩せた声がその大広間に響いた。この街の最大権力者である泉の翁が大仰にコットスに声をかけようとして遮られた。
「下がれ!」
コットスの気迫に押されて翁は尻餅をついた。それを気にとめたのは翁とその取り巻きだけだった。が、彼らに取っては非常に重要な事だ。尻餅を付いたまま、翁は叫ぶ。
「貴様!履き違えるな!私こそが、この街の所有者なのだ!貴様など、所詮……
誰も聞いてはいなかった。コットスが懐から、青い炎を上げる果実を取り出した瞬間から。翁の事など彼を守っているはずの衛兵さえも意識の中から、消失した。青白く燃え上がる砂の果実をコットスは掲げた。
「……これが、果実だ。創国の宝珠、砂の果実だ。」
その一瞬で、その場にいた全員が納得した。それを本物だと認めた。本物には本物として認めさせる力があるのだ。そこに疑問は生じない。これは、これまで数多のドラフ達が探し見つけられずにいた、砂の果実だ。そう、それはついに。
……果実は帰還したのだ。
コットスはこのウキハ最奥の部屋を進み、そうあるべき場所に、美しいデザート皿に果実を置いた。例の一本足のテーブルに。全てが駒送りで、誰もが息を飲んだ。果実の帰還だ。創国の宝珠。国を創り、国を動かしたという果実。完全世界の遺物。これで全てが変わるのだ。迫り来るラーダンモールを倒し、崩落の脅威から逃れるのだ。砂漠も、このノースラドの戦争も関係ない。全ては果実の力で退けられるのだ。果実は皆の視線を一身に集め……そして、
「……どういうことだ?」
コットスは呟いた。果実は沈黙した。全ての光が消えて石のように……沈黙した。何も起こらない。何も。つまりそれは、始まりを意味した。ラーダンモールの軍隊による虐殺の始まりを。ウキハの最奥の部屋に沈黙と絶望が訪れた。果実が全てを無条件に解決してくれるのでは無かったのか。
だが、この部屋に一人、笑う者がいた。この沈黙を楽しんでいる。コットスの思い通りに進まない事に満足している。この場の皆が充分に沈黙の苦痛を噛み締めたところで、ゆっくりと立ち上がった。背の低いコットスの前で、異様な長身が目を引いた。
「コットス……




