表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界が生まれ変わる物語。  作者: ゆうわ
第二章 砂の果実。
70/184

2.砂の果実。 果実。 16


 天為は風を感じた。


 流れが変わる時にはいつも感じる。彼は風を感じた。足元にはストクフの頭部が転がっている。何かが変わったのだ。何が?ストクフの死が変化を呼んだのか?いや……天為ははっとなって顔を上げた。放棄してきたクレイフの方角を見た。


 「まじか。」


 ラーダンモールの灰色の軍勢が姿を表しつつあった。その数、3000。いや、まだ増える。ギルド月雲や、クレイフ守備隊の残党等では抑えきれない。だが、そんな事は知っていた。天為が今、驚愕し、目を見開いたのは……走り出した。全力で。ウキハに向かって。その時が今なら、戦おう。でも、そうじゃない。だから、天為は走り出した。


 ……風が吹き始めた。全てが決着するぞ。


 ◆


 ホードは、倒れ込んだ。コットスは容赦なくその頭部を踏み潰した。ウキハの正門前では、ホードの残党との戦いが続けられていた。戦いの決着は見えていた。ホードが勝つことはない。月雲の勝利だ。月雲の死者数も500名は超えていないだろう。上出来だった。大勝利と言ってもいい。月雲の戦士達は、士気も高く覇気に満ちていて、ホードを殲滅していく。誰かが勝利の雄叫びを上げようとした。だが、それは先を越される。まぁ、二番手でも良いか、と改めて息を吸い込んだ所で、気づいた。今、このウキハに響いているのは勝利の鬨の声ではない。戦いの警鐘だった。


 「下がれーー!!ラーダンモールの軍勢だー!」


 見張り役の兵士が叫び、世界は一転した。絶望の津波が押し寄せる。


 ◆


 コットスとハルとセツナは、警告の叫びに振り返った。ラーダンモールだ。思っていた以上に近い。そして、多い。


 「急げ!ウキハに籠もるぞ!」


 コットスは瞬時に判断した。同じく、ハルも。


 「先に!あたしは残る。」


 セツナはその瞬間にハルを説得する事を諦めて、姿を隠した。マイトを使い切っている彼女に出来ることなどない。コットスは眉間に皺を寄せ、ハルを睨んだが、元より助ける義務は無い。好きにすればいい。だが、死ぬだろうな、この女は。しかし、ハルは立ち止まり戦う事に生き残りの可能性を見たのだ。彼女はウキハの地底湖での戦いを思い出していた。あのような乱戦を行う輩……自身の命を顧みない戦士との戦いを行えるような要塞ではない。ウキハは。ただの岩の固まりだ。盛り上がっただけの地面だ。迷路のような洞穴の中で大混戦が始まれば、さらに多くが死ぬだろう。そうなれば、誰であろうと戦いを制御する事は出来ない。何の戦術も無い、ただの殺し合いが行われるだけだ。


 ……それじゃ、ダメ。


 今、この一瞬、確かにハルは独りで逃げるという選択肢が残されていた。術者であり空間と空間を繋げるキーであるハルであれば、自分独りであれば、それは可能だった。でも、そうしない。何故?どうして?ハルには解らなかった。キルクと決別しようとしているのは、五書を軸に繰り広げられる終わらない争いが不毛に思えたから。そんな事に命を懸けることに意味が見いだせなかったから。でも、じゃあ、今は?今はその時なの?操られ、流されて生きてきた。そろそろもういいんじゃないかな?そういうのは。そろそろ、知ったっていいんじゃないかな?うん。そう。そろそろ、知るべきなんだ。


 ……あたしが何者であるのか。


 それは、自身の可能性についての回答だ。それは、人生の指針になる答えなのだ。馬鹿らしく青臭い、でも!ハルは覚悟を決めていた。全力。全てを、目の前のラーダンモールにぶつける。霧のボウモアなど、あたしの敵じゃない。


 (……こい、いくぞ!)


 決意を固めたハルの前に、月色の髪と瞳を持つ、痩せた黒ずくめの男が走り込んできた。


 「駄目だ!追いつかれる!」


 地上に出たラーダンモールの灰色の軍勢は、驚く程の速度で進んだ。ウキハまでの後数キロさえ逃がしてはくれない。


 「術を行使するから、完了まで、あいつらを留めて!」


 「はぁ?」


 天為は驚いてハルの瞳の奥を覗き込んだ。彼女の瞳の奥は燃えていた。本気だ。正気かはわからない。だが、ラーダンモールの軍勢と戦うつもりだ。


 「かははははは!おもしろ。」


 天為は笑い、ハルの横で立ち止まった。大きく息を吸って、吐き出した。大長尺の古刀呼雪を抜き放つ。やってみるか。天為は回れ右をしてラーダンモールと向き合った。3000対2。なんだこの戦い。でも、彼は不敵な笑顔で言い放った。


 「さぁ、盛り上がって参りました!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ