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世界が生まれ変わる物語。  作者: ゆうわ
第二章 砂の果実。
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2.砂の果実。 果実。 15


 「か、勘弁してよ……。」


 とは言え、勘弁してくれない。高坂がなんと嘆こうと。彼もそれは理解している。天為は災難と共に帰ってくる。いつも。で、じゃ、どうすんの?って、お話し。彼はネワタを脇に放り、遠雷を組み立て始める。砂竜を仕留める時に、うっかり混乱して迷った彼の最大戦力の弓??だ。


 ……天為無しで落とせるのは、一回。どの程度、戦況に影響があるのか……。


 しかし、それ以外の選択肢を持たない高坂は、表情をこれ以上崩す事もなく、準備を進める。彼の眼下では、ラーダンモールの灰色の軍勢がウキハに緩やかに満ちていく海のように近づいてきていた。


 ◆


 ホードは、負けた。ギルド月雲に、いや、死に神に。ストクフとウー。二人の絶対的な戦士がウキハの上と下から、全てを潰す計画だった。


 が、


 ほぼ同時にそれは失われた。亡国の死に神の行く手と交錯した……ただ、それだけの為に。その後は一瞬だった。ホードの誰しもが、何が起こったのかも解らずに、急激に自身にかかる圧力が増大するのを感じ……絶命していった。次々と現れる月雲達によって。


 「コットスさんは、まだか?」


 ホランは呟く。ホランの位置からはまだ、ラーダンモールの軍勢は見えていない。


 ◆


 それを知るのは高坂のみだ。いつだって、視点が重要なのだ。鳶狩りの高坂はそれを死ぬほど理解している。だが、彼は月雲に伝える事よりも天為達を生き残るように対応する事に注力した。そう。クレイフは他人だ。自身の今に対応する事が必要なのだ。


 いつも、そうだね。いつもそうなのかもしれない。当事者はおきざりで、何かに気づく事もなくて……


 高坂すっかり慣れてしまった、薄い後悔に包まれながら、淡々と遠雷の準備を進めて行った。


 ……リン。


 ため息のように高坂の心からその名前が漏れ出した。そのため息に気づいた高坂は、情けない自分を励まし、奮い立たせて歯を食いしばった。筋肉が盛り上がり、マイトが練り上がり……そこにはいつもの狩人然とした高坂だけが存在していた。その高坂は素早く漆黒の棒状の物体をつなぎ合わせ、組み立ていく。すぐにそれは完成した。全長5メートル程もある長い棒の集合体だった。高坂はそれを右の腰に当てて前方に向けて構えた。その先端は戦場に向けられていた。


 ……遠雷。


 世界樹の枝から作られた、完全世界の弓だ。このリム・リナの弓とは違い、それに弦は無く弓も無く、矢だけから構成されていた。漆黒の長大な矢。その矢からは、生き物の血管のような管が無数に延びており、それは高坂の両腕に絡まっていた。


 一発。天為無しで使えるのは一発。タイミングを間違えれば、誰も救えない。


 高坂はその一瞬を待ってマイトを練り始めた。


 ◆


 タマウは、ウキハの再奥の部屋にいた。高坂がウキハの中心と睨んだ部屋だ。それは、広い広い部屋で、五名の見張り兼護衛のギルド員と街のお偉いさん達、体の弱い老人と……とても大事な大事な……けが人がいた。その部屋には如何にもコットスが好きそうな重厚で静かな艶を持つ家具が設えてあった。本棚や、絵画も。ただ、その部屋で一番目を引いたのは部屋の中央にあるルーレット状の机だった。机の足は一本で、ウキハの岩盤に突き立てられていた。独楽やジャイロに似ている。材質は漆黒の……何か、だった。


 「これが、台座なのか?砂の果実の?」


 背が異様に高い痩せこけた老人は眼光鋭く問いかける。痩せたタマウが細く答える。


 「彼は、コットスはそう信じていました。その台座に果実を載せる事で全ての力が解放される、と信じています……泉の翁。」


 タマウに泉の翁と呼ばれたその異様な長身の翁はふーん、と鼻から息を抜き、髭をごりごり掻いた。彼はこの街の長だった。その役職が、泉の翁、と呼ばれているのだ。一応、選挙で選ばれている。金と権力が好きな爺様だ。まぁ、街の長には相応しい。


 「まぁ、そんな上手くいくとは思えんが。」


 翁はまた、ふーんと、鼻から息を抜き、髭をごりごり掻いた。タマウは敏感に権力好きの匂いを嗅ぎ取り、泉の翁とは距離を置いていた。この人種は何でも利用しようとする。弱みと使い道のある人間なら特に。だから、タマウは距離を置いた。滅んだ国の最後の姫など、笑えるほどに色々使える。


 なるべく、関わらないようにしなくては。


 そのタマウの心情を感じ取り、翁は対抗心を燃やしていた。この亡国の姫君をどうやって、利用してやろうか。どうやって、搾取してやろうか?そんなことばかり考え、ますます眼光鋭くタマウを睨む。


 ……コットスは無事でしょうか。天為は……


 翁の眼光に気づかぬ振りをしながら、想う姫君はまだ、それを感じ取っていなかった。ここが最後となることに。この部屋で血を流し……ここで全てが終わる、ことを。


 物語は最後の角を曲がり、そして……事の大小には関係なく……全てが、激突しようとしていた。


 

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