2.砂の果実。 果実。 14
……心頭滅却。
極限の集中状態が天為に訪れる。時は天為だけの為に流れ、存在する。世界は動きを止めた。天為はストクフの表情、筋肉の動き、姿勢、手足の微かな方向性から、全てを推測し、未来を見切る。ストクフの鋭く強い斬撃は、しかし、天為にかわされる。突き、切り、なぎ払い、魔炎を吐き出したが、全てかわされた。一つ攻撃がかわされる毎に天為は間合いを詰めて肉迫する。彼の月色の瞳が一撃毎に近づき、その光を増す。
……死に神。
ストクフはどっ、と冷や汗が吹き出し、心臓が悲鳴を上げながら心拍数が上がっていくのを感じた。天為は、ストクフの攻撃の全てを紙一重でかわしてくる。ストクフは理解した。身体能力は自分が上だが、天為は見切っている。攻撃の全てを把握して予測して、回避するのだ。ギリギリの回避を行い、間合いを詰めて来る。後、一回。後、一度攻撃をかわされたら、天為の間合いだ。ストクフは理解した。チャンスは後、一度。彼は捨て身の攻撃に出る。魔炎を吐き、自身が焼かれるのも構わずに炎に突っ込み、炎の中から、天為を攻撃した。
が、そこには誰も居なかった。
魔炎の先にはただの砂漠が広がっていた。冷気が地面から湧き上がる。ストクフは首が冷えるのを感じた。
……そうか。
天為はストクフの最後の攻撃を見切り、逆手に取り、魔炎でストクフの視界が奪われた瞬間に彼の懐に飛び込んだのだ。自身が焼かれるのも構わずに。ストクフは目を閉じた。呼雪が熱い砂漠の戦場に鋭月を描く。
……願わくば、願わくば……この旅団から少しでも生存者を出してくれぬか。願わくば……別の旅団に、残った武運を。新しい大地が、我々……
ストクフの雄々しい角が生えた頭部が宙を舞い……そして、砂にまみれた。彼の正義は潰えて……消えた。
そして、それでも、砂漠の戦いは続く。




