2.砂の果実。 果実。 13
ウキハに直結する地下道が封鎖されているのを見て三人は事態を直感した。状況は厳しい。恐らく、戦いが進みウキハは混乱しているのだ。ナンダカンダ言って、天為と……マジか?……コットスはハルを迎えに戻り、今、三人で走っていた。とにかく、地下をこれ以上進む利点は無い。
「地上に出よう!」
天為の提案にコットスは乗り、道を示す。クレイフの全ての地下道はコットスの頭の中に収まっている。えずきながら走るハルを両脇から抱えながら、彼らは地上へと向かう。まだ、ラーダンモールの姿は見えないがその圧力は徐々に近づいてきている。だが、大丈夫。間に合ったのだ。今、姿が見えていなければ、追いつかれる事はない。後はウキハで籠城戦だ。時間を稼ぎ……果実を起動させる事が出来れば、逃げ切りだ。
「もうちょっとだ!ハル頑張れ!」
言いながら、ハルを引きずるように彼らは地上に出た。そこは……砂塵の中。砂漠ではよく在る話だ。時折、突風が起こり、砂が世界を覆う。
「うわ、なんだこれ!」
視界が無い。天為は慌てて周囲の気配を探る。後方のラーダンモールばかりに気を取られて肝心の前方を確認する事を忘れていた。砂が目に入る。喉を刺し、天為は咳き込む。三人は一瞬、地下道からの出口で立ち止まる。天為は咳き込みながらも何とかマイトを整えて周囲を探ろうと……何だ?デジャヴ?これってどこかで……思いかけて思い当たる。ハルを突き飛ばすのと、大長尺の古刀を抜き放つのと、重い一撃を受け止めるのと、そいつの声がかかるのと、砂塵が晴れるのが、同時に起こった。
「貴様か!!」
薙刀を構えるホードは叫ぶ。驚きと喜びの狭間で。
「ストクフ!」
いつかどこかの砂鮹と戦っていた時と同じだ。地下から飛び出し、砂塵にまみれて、フィンドアの魔人に出会ったのだ。天為は笑ってしまう。
「かはははは!面白い!久しぶりだねぇ!折角の再開だ、どこかでお茶でも……
ストクフの2撃目が繰り出され、天為はかわす。
「不思議なものだな。」
ストクフは感傷的でこの殺し合いの場に相応しく無い言葉を……飲み込んで、踏み込む。天為はまた、薙刀をかわす。コットスは、目で天為に合図をして、ハルと共にその場を離れる。戦塵に紛れ、ウキハに向かう。当たり前だ。何しろ彼は果実を……この争いの中核を握っているのだ。天為はコットスの気配を意識の端で捉えながら、ストクフがコットスとハルに注意を向けないように、そのままサルシバイを続ける。シチュエーションは違うがやってる事は、あの夜と同じだ。
「酒の方が良かった?クレイフのサボテン酒なんでどう?結構イケルよ。まぁ、トマのイスイには遠く及ばないけ……
鋭い薙刀の突きが天為を襲い、彼は呼雪で受け流す。コットス達は視界から消えた。天為は一旦、間合いを取る。
「ま、こういうエニシなんだろね。俺達は。」
「ああ。そうだろうな。悪いが死んでもらう。我々は、国を移さなくてはならない。狂気の大魔法使いの絶叫の届かない土地に移り住むのだ。」
「で、そのために無数の無関係な人々を殺しちゃうと。」
「ああ。そうだ。殺す。死ねばいい。我々が生き残る。」
きっぱりと言い放つその言葉とは違い、表情は苦い。本当の悪人なら、こっちの気も楽なんだけどな、と思い、天為は最後の言葉をかける。
「弱肉強食、適者生存。何でもいいや。最後まで残った者だけが、物語を語る。全力でこいよ。ストクフ。今日は風邪引いてないから。俺には俺の都合がある。お前が国を背負うのなら、俺は、痣と共に世界を背負う。お前を殺し、物語を最後まで進める。」
言い切った天為にストクフは言葉を返さず、全力で踏み込んだ。天為は大きく息を吸い、全て吐き出した。天為の精神は研ぎ澄まされ、加速して世界を置き去りにする。相対的に時は減速し……そして、音を立てて時の歯車は停止する。
が、が、がこおおぉぉぉん。




