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世界が生まれ変わる物語。  作者: ゆうわ
第二章 砂の果実。
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2.砂の果実。 果実。 10


 天為とハルとコットスの3人は走った。長い長い地下道を。思った通り、ハルは足が遅い。


 「つかさ、遅すぎない?キミ。胸が無駄に大きいってゆーか。」


 いつもであれば、言い返してぶん殴ってやる所だったが、それができなかった。息が上がり、軽口の一つも叩けない。赤い顔で天為を少し睨んだだけだ。


 「このままだと、杭の人々に追いつかれちゃ……


 「来たぞ。」


 殿を守るコットスが言う。二人は振り返る。それは、ざわざわと地下道を押しわたって来る。道幅いっぱいに広がり、狂気の瞳をこちらに向ける。邪印が刻まれた杭が相も変わらず、口中に突き刺さっている。一切の感情も疲弊も見せずにラーダンモールは接近する。ある者は走り、ある者は飛び跳ねながら、四つん這いで走る者、天井を移動する者……地下道の空間全体を埋め尽くし、浸食するかのように接近する。男も女も子供も老人も。口中に杭を埋め込まれ無表情に迫る。まだ100メートルは離れているが、追いつかれるのは時間の問題だ。疲弊しない追跡者から逃げる事は出来ない。コットスは逡巡する。


 ……これだけ狭い地下道だ。取り囲む事は出来ない。どう見ても2対1程度の戦いだろう……迎え打つか?いや、10体や20体なら、賢明だろう。50なら賭けだ。では、100は?1000は?敵は何体だ?


 それでもコットスは足を止める事が出来ず、判断が付かずに走り続けた。天為は、気を大きく拡散させる。後方のラーダンモールに向けて気を飛ばす。


 ……1000は居る。


 天為は瞬時に決断した。


 「足を止めるな!逃げ切るよ!」


 無理だ、とコットスは思う。だが、そう、天為は正しい。立ち止まりラーダンモールを迎え打ち、奇跡的に3人の体力が続き全ての敵を倒す奇跡と、このまま走り奇跡的に3人の体力が続き敵から逃げ切れる奇跡。どちらがより多くの可能性を持っているのか。それは、後者だ。全ての敵を倒すのにかかる時間とこのまま走りウキハに到達するまでの時間を想定すればどちらにベットするべきかは明確だった。


 ……そうだな。先程の迷いは混乱だ。恐怖が連れて来た死神だ。


 と、そこまで思い……コットスは笑った。そう言えばこの天為もドラフ達から死神と呼ばれる存在なのだと、コットスはハルを追い抜いた。ハルは足を止め、ラーダンモールの群れに向き合っていた。コットスは足を止めない天為も。ただ叫ぶ。


 「ハル!走れ!」


 「無理!」


 ハルはアッタマニキテいた。誰にだって苦手なことは有る。あたしが唯一苦手なのは走ること。馬鹿にしなくたっていいじゃない。何もそんなに大勢で追っかけなくてもいいじゃない。もー、あったまにきた!そう。得手不得手はある。無理なものは無理。では、どうする?ハルはハルの判断を下す。戦いの判断を。天為とコットスは足を止めない。彼等は無情のドラフであり、冷血の事務屋だ。自身の判断のみを信じ、行動する。彼等の判断は、逃げ。戦いは死だ。肩の上のセツナはハルを走らせようとするが、セツナの声に耳を貸さなかった。今のセツナの術ではあれだけ多数のラーダンモールを相手にする事は出来ない。顕現させれば可能なのだが、今はその力がない。セツナはハルの髪を精一杯引っ張り、ハルを動かそうとした。当然ハルは動かない。死が迫る。


 「ハーーール!!」


 天為のよく通る声が地下道を満たし、狂ったラーダンモールと進軍の靴音をかき消した。


 ハルは目を閉じ、マイトを整えコントロールして柔らかな胸の前で両手を合わせた。


 ……ラーダンモールの群れが迫る。



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