2.砂の果実。 果実。 11
迫り来るラーダンモールと向き合ったハルは胸の前で手を合わせ目を閉じていた。そのまま式を唱え……目を見開いた。アーモンド型の愛らしい瞳だ。合わせた掌を引き離そうとする。だが、それには非常に大きなマイトと力を必要とする為、なかなか掌を離す事が出来ない。ラーダンモールは押し寄せる。その距離はとっくに50メートルを切っている。ハルを切り刻むまで、もう、10秒もかからないだろう。ハルは必死に手を開こうとする。それができれば術は完成なのだ。
「うぎぎぎ……ひ、ひらけぇ……か、げぇ、お!りぃぃ……うあああっ!」
ラーダンモールはハルの眼前10メートル。遂にハルは両手を離した。腰を落とし、大きく又を開き、左の掌をラーダンモールに向ける。
「戻れ!イワム!!」
ハルの掌直前の空間が裂けて、異空と繋がる。閉じこめられて怒り狂ったイワムが飛び出し、ラーダンモールを丸呑みにしていく。ラーダンモール達は何が起こったのか理解出来ず、対処出来ずに巨大ミミズに飲み込まれた。イワムは補食したラーダンモールの群れを締め付け圧死させる。圧死させる為に身体を絞り込んだイワムと地下道の隙間に向けてハルは右の掌を突き出した。
「お前も戻れ!」
再び異空が繋がり、もう一体のイワムが現れる。この左右のイワムはハルがウキハで破気と影檻の術で異空間に飛ばし、捕縛したイワムだった。ハルはイワムを捕らえていた魔力の檻を開いたのだ。自由になった右のイワムは、仲間の身体の上を滑り、ラーダンモールの群れに突っ込む。更に多くのラーダンモールを飲み込んでいく。そうしている間に、左のイワムが次のラーダンモールに襲いかかる。瞬く間に左右のイワムは100体以上のラーダンモールをそのハラの中に収めた。
「ざまぁみなさい。次追っかけたらぶっとばすからね。」
ハルはきぃぃっと、歯を剥き出しにしてラーダンモールを威嚇してから……本当に気が進まなかったが……再び、走り出した。天為もコットスも姿は見えなかった。
「……まー、冷たい。」
ハルはちょっと膨れながらも、一生懸命走って行った。イワムはただの時間稼ぎだ。ラーダンモール達が何が起こっているのか理解するか、あの根暗美人のボウモアが騒ぎに気付けば対処されてしまう。だが、それで充分だった。ウキハまで残り5キロメートルも無い。セツナはハルの後ろを飛んで行く。ハルの術に驚きながら。
……ハルって、相当の術の使い手。ウキハで対峙した後、あの大きなイワムをずっと捕らえる為にマイトを取られながら、ダットを召還してたなんて……ひょっとして、他にも……
この世界での自身の異質を理解しているセツナは、ハルと仲良くなりたいと思いながらも、近づけずにいた。オーリとサムサラムドは結局の所、理解しあえないのだ。なぜなら、そこに本当の魂などないのだから。
では、今見ているのは何だ?
単純で答えの出せない問。セツナは飲み込み……そして、いつの間にか関わり過ぎているこの物語の結末を見るべく、ハルのあとを追って行った。




