2.砂の果実。 果実。 6-1
それは、不思議な球体だった。
紙のように薄い漆黒の板が積層しており、その中心で、水色の優しい光を捉えていた。時折、赤になり、白になり、緑になり。
それは、正に天為が指差した、その場所にあった。岩ではない……だが、岩にしか見えない、世界樹に由来する物質で作られた……何かに覆われて地底湖の天蓋に隠れていた。天為はハルの術の力を借りて天蓋にロープを打ち付け、それを伝い果実に近づき、見つけて持ち帰った。そしてあっさりとコットスに渡した。果実はコットスの手の中で、微睡むように、うつらうつらと明滅している。天井に隠れていた時と違い、果実は溢れ出すマイトを隠そうとしない。生き生きと総てを解放している。彼は見つけたのだ。砂の果実を。
当初、彼は果実は水没していると考えた。ウキハから流れる水をせき止めた上で、ハルの空間を繋げる術で一気にクレイフの地下道の水を抜くつもりだった。だが、ウキハは水源ではなく、想像とは逆にクレイフから水は来ていた。ウキハより低い筈のクレイフから水が溢れて来ていたのだ。地下道はクレイフを高く、周囲を低く作られていた。水を周囲に流すためだ。だが、サザは平坦な国だ。膨大な地下水を作る山脈などなく、当然、街の地下に大量の水が湧く理由はもない。でも、では、水はどこから?天為は頭の中で、これまでのありとあらゆる情報を漁り、さらい、ひっくり返して、眺めた。
……血を、
血を以て、果実を育てよ。
果実は砂を潤し、国を生む。
血を以て、果実を育てよ。
果実は砂を守り、国を運ぶ。
我らは砂。
風に舞い、流浪する。
安寧はなく、滅びも無い。
我らは砂。
風に舞い、流浪する。
世界の隅々にまで渡り、命を繋ぐ。
日輪を愛し、砂と共に。
創国の王サザが残した言葉。そう、果実は砂を潤し国を生んだのだ、この砂漠に。だとすれば、水と果実は繋がる。無関係ではない。天為は確信し、コットスの地図を借りて、地下水路の最も高い位置を探した。そこから水が周囲に流れていると判断したのだ。そこは街の中心だった。当然だ。水の供給源を中心に街は形成されたのだから。サザは、水を供給する力を持った完全世界の宝殊を水源として、置いたのだ、と、天為は推察した。そして、彼らはここに到達して、ついにそれを手に入れたのだ。それは、コットスの手の中で揺らめいている。赤に青に黄色に緑に。




