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世界が生まれ変わる物語。  作者: ゆうわ
第二章 砂の果実。
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2.砂の果実。 果実。 5


 何を伝えれば、やり過ごせる?何を。


 ボウモアは必死で頭を働かせる。彼女はホードと濁眼との出会いと虐殺を知らない。だが数々の伝説からそれは容易に想像できた。目の前の濁眼の聖騎士は世界で一番強く、だからこそ孤立している。それは、情報の欠如を引き起こし……彼を愚者に落とし込んでいる。彼は世界を救うゲームをしているとの噂だ。だが、私や私が属する集団は逆のゲームに参加中だ。私はそれを知っている。彼は知らない。どうする?彼は無知。彼は最凶。彼は愚者……答えは決まっている。愚者を自由にしたとき、どんな天才でもその行動を予測する事は出来ない。だが、そう、だが、彼が愚者で在るのであれば……答えは決まっている。


 コントロールするしかない。


 アル中に酒を渡せば飲むだろう。孤島で飢え死に寸前の者に食べ物を渡せば食べる。単純に本質を突くしかない。彼は中央大陸の帝国、ラシニルの聖騎士団に属していた。だが、大国の理屈に嫌気がさし世界に身を投じた。世界を見て回り、世界を崩壊へと導く、九つの災害……九害……と出会い、そして、今の彼となった。ボウモアはどこまで知り何を知らぬか……だが、彼女はこのクレイフという場所を考慮して、告げた。


 「砂の果実を取りに行くところです。クオの大天使よ。お会い出来て光栄です。」


 ボウモアは彼女のかわいい胸に手を当ててゆるりとお辞儀した。背後の兵士達は微動だにしない。濁眼は蟲卵のように不気味に濡れる瞳でボウモアとその兵士を見つめた。


 「なるほど。丁度いい。私も砂の果実を探していた所だ。私は完全世界が残したありとあらゆる痕跡を探している。古い世界が残した欠片を集め紡いで世界を、再構築するのだ。私に相応しい、私だけの偉業だ。」


 馬鹿だ。こいつは。ボウモアは確信した。ああ、どれだけ強かろうが、このお粗末さであれば、どうとでもなる。戦いさえ避ければいい。ボウモアは濁眼を誘い込む。


 「であれば、お教え致しましょう。今、果実はウキハに向かっております。ウキハに隠れるクレイフの住人達の仲間がこの街から盗み出してしまったのです。」


 嘘は言っていない。だからこそばれる心配はない。こいつをウキハに導き、絶望と混乱の底に陥れてやる。あの調子に乗っている亡国の死神やコットスを……風がそよいだ。次瞬、轟音と共に洞穴は崩れ背後の兵士達がバラバラに切り裂かれた。無刀だ。濁眼の圧縮されたマイトの刃だ。何が起こったか理解出来ないボウモアは再び硬直し、冷や汗を流した。


 「私はマイトを見ることができる。お前達が光を見るように。私はマイトを見て判断する事ができる。魂の動きを。お前は嘘は言っていない、が、悪意がある。私の敵だ。」


 ボウモアはぞっとした。死を感じた。成る程、彼は愚者かもしれない。だが、だとしても強すぎる。マイトを見る?なんだそのでたらめは。ああ、この距離で世界最強の聖騎士を敵に回しては生き残ることなどできない。何か凶悪な術を行使するか?兵士達を襲いかからせるか?それとも、命乞い?いや……駄目だ、どれも駄目だ。そんな事では生き残れない。どうする……ぎいぃぃぃぃぃぃぃ……濁眼の聖騎士は口の端で笑い、ボウモアに襲い……かからずに踵を返した。


 「だが、嘘でなければ、それでいい。お前の生死など、意味がない。お前の魂は無価値だ。好きにしろ。」


 いつかどこかで彼に告げた台詞を残し、濁眼の聖騎士は闇色のマントを翻して歩き始めた。ウキハに向かった。ボウモアは両膝からその場に崩れ落ちた。四つん這いになり、恐怖に震える体を必死に抑えた。


 ……危なかった。危なかった。でも、乗り切った。この後は、奴の動きに注視する必要があるが、それでも致命的な瞬間は去った。後は何とかなる。


 四つん這いのまま、何とか呼吸を整えたボウモアは美しい漆黒の瞳を強く瞑り……ゆっくりと開いた。洞穴の地面には彼女の汗で出来た染みが広がっていた。

歩き去る濁眼の聖騎士の背中を睨み付けようとボウモアは片膝をつき前方を見据……ところで。ローランドを知らないか?」


 眼前に濁眼があった。炎のような熱を発する濁眼の聖騎士の顔が。ボウモアは三度、恐怖で硬直する。


 「……知らぬか。」


 ボウモアのマイトを読みとった濁眼の聖騎士は今度こそ、その場を立ち去った。ボウモアは恐怖に固まり、しばらくはその姿勢のまま、動けずにいた。

 



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