2.砂の果実。 果実。 2
「大したものだ。」
高坂は、正直に呟いた。高坂はクレイフの地下に潜る天為とコットスとは別に動いていた。ウキハに戻っていた。クレイフにいるほぼ全ての堅気の住民がウキハに避難していた。天為がかつてはここに街が在ったのではないかと告げたその大洞窟に。高坂の感嘆は、無事大移動を終えた街人と、天為の洞察に向けられていた。まず間違いなく、ここは、いつかの時点で街であったに違いない。岩の空に覆われた砂漠の街。
「戦争ははじめてではない。ウキハのお陰で、信じられないような砂嵐も何十回も乗り越えている。」
単純な高坂の問いにホランは答えた。素直に。二人は似ていた。ふふ、と笑った。どちらともなく。
「だが、追撃の甘さは否めない。我々は避難したと言うよりは、誘い出され、追い込められたのだろう。」
ホランは状況を正確に判断していた。高坂も同意して、うむりと頷いた。高坂は本題に入る。彼は別に避難する為にここにいるのではない。当然、町の人々を助けようとしている訳ではない。
「しかし、この洞穴には無数のクリーチャーがいる。街人は、大丈夫なのか?」
「先程、何度も避難したと言ったろう。クリーチャーを駆除して安全な区画と危険な区画を分けている。昨日も近い内にここを使う可能性が在ったので、視察を行っていたのだ。」
高坂は内心ガッツポーズだ。よっし!後一息。
「地図は?」
「あぁ、こちらにある。来い。ウキハ防衛の為には必要な情報だ。」
ということで、高坂は目的を達した。ウキハ内部の完全で安全な地図を確認したかったのだ。我々の推測が正しければ、ウキハの心臓部へ行く道が示されているはずだ。それは街を救う筈だが、力はいつだって使い方次第だ。滅ぼす可能性もある。それが完全世界の遺物であれば尚更。
道すがら、高坂は問いかける。
「もっと上層に避難させなくてよいのか?」
昨日の探索結果から行けば、上層の空洞の方が大きく快適そうだった。街から攻めてくるホード達からも身を守り易そうだ。
「そうだな。一理ある、が、これまでありとあらゆる災害から身を守るためにウキハに避難した。その、経験から判断している。」
なる程。上層は守りやすいが逃げ場はない。特にこれだけ大勢の人間が逃げ込むような場所は。……さて、これは、キチトデルカキョウトデルカ。
そして、くだらない話を続ける間にウキハの中層にある部屋にたどり着いた。そこはそこ以外と違い、完全に部屋だった。居住区だった。突き当たりに大きな黒檀の机があった。ずっしりとした椅子も。高坂はここにはいない主の姿が見えた。コットスらしい部屋、だった。手前のテーブルには大きな地図が広げられていた。
「これがウキハの完全地図だ。多くのドラフが求めている、本当の地図だ。これは代々、月雲のメンバーが調査を続けて、ついにコットスが完成させたものだ。大広間や……
天為の行いを見てすっかり身につけてしまったウソを使いながら、高坂はホランの話を聞き流した。
……さて、どこだ?心臓部は?完全世界の葉の心臓部は。
高坂は地図を俯瞰する。不自然なパターン。利の無い配置。不要な空白……あ、あぁ。
高坂は地図を読み取った。彼は見つけた。葉の心臓部を。ウキハのコアとなる、その場所を。それは、戦いを決する発見……となる筈、だった。




