2.砂の果実。 果実。 1
……で、だ。何故、果実を欲しがらない?何が目的だ。」
コットスは、混戦が続くクレイフの地下で、岩壁を背に、彼らに問うた。ガンウェルが絶命する、まだ、少し前の時刻だ。
「後で教える……気が向いたらね。」
天為は答え、コットスは笑う。コットスは表情や仕草、マイトの強弱、それらのさざなう様子を感じ取り、人の真偽を計る。ハルは、利害に左右され、真偽を使い分ける。高坂はコットスが理解出来ない何か……果実とは関係ない何か……に従っている。そして、信じれない事に、天為は嘘をつかない。彼が、そう言うのであれば、そうなのだろう……と、いう気にさせる。解らない。コットスが真偽を計れない人間は初めてだった。だが、面白い事には変わりない。良いだろう。私達は歩き始めた。たどり着く所にたどり着くのだ。
「下らない質問をした。忘れてくれ。」
言って、笑い。壁を押した。一本の指で。そして、そこは沈み、めり込んだ。ごしり、と岩が軋む音が響く。
ここは、クレイフの地下深く。コットスの案内で、進んだ場所だ。方向付けたのは天為。天為はウキハの地底湖の入り口に対して最も高い地下「水路」に果実はあると断言したのだ。その場所に果実はあると天為は宣言した。コットスはその一言で、それが真実だと悟った。何故ならクレイフの地下に広がる地下水路は平坦に広がり、多層を成さない。これまでの数多のドラフ達は、俯瞰の地下水路の地図を眺めて、無駄な酒を煽っていた。そう。それでは、答えは出なかったのだ。水に沈んだ道の先を見なくてはならない。答えは水平方向に見なくては、辿り着けないのだ。地下道、ではなく、地下水路を。
彼らは、水没した地下道から、地下水路の上下を判断した。そして、地下水路の最も高い場所を発見した。その瞬間をコットスは思い出した。
……いや、あり得ない。」
コットスは思わずつぶやいた。天為が果実のありかとして指し示したその場所は、大広間の噴水の下。それは、街の中心であり、また、地下水路の中心でもあった。だが、そこに水が湧き出る理由はない。水が湧き出すとしたら、どこかほかの場所だ。
かはは。
と、天為は笑う。
「じゃ、水はどこから?」
その天為の一言で、コットスは沈黙した。そう。誰も知らないのだ。このクレイフを支える豊富な地下水がどこから湧いているのか。そう。周囲の地理を考えるのであれば、ウキハの方角から地下水が流れ込んでいなくてはおかしいのだ。ここは、ウキハより低く位置している。ここに突然水が湧き出す理由はない。だが、違う。これは、周知の事実だ。そう。水はこのクレイフから周囲に流れ去っていくのだ。水源となるような雨期も山脈もない。でも、水はこのクレイフの真下から湧き上がっているのだ。
では、何故?どこから?
誰も答えを見つけられずにいた。あぁ、そう、それはまるで、まるでまるでまるで、砂の果実を誰も見つけられずにいるように。コットスは、納得した。腑に落ちた。あぁ。彼は理解した。水と果実は重なるのだ。あぁ
。この街に住む人々には当たり前過ぎて気づくことが出来なかった事実。
……コットスは天為を理解し、彼を信じてここに誘った。
「ここは再奥。クレイフ地下道の最も古い場所だ。広間の噴水の直下にある、地底湖だ。ここだけは、扉があり、認められた者だけが入ることが出来る。」
コットスの背後には、澄み渡り暗くたゆたう地底湖が、待ち構えていた。そう。遥か昔、遠い遠い言い伝えの時代から、彼らのことを待ち望んでいたのだ。全てを、すくい上げてくれる……冒険者達のことを。




