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世界が生まれ変わる物語。  作者: ゆうわ
第二章 砂の果実。
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2.砂の果実。 開幕。 16


 その男は、満面の笑みを浮かべていた。


 上等な喪服に身を包んだ男だ。長めの黒髪が整えられ、綺麗に後方に流れている。


 ……ああ、いい気分だ。」


 白い黒目と黒い白目を持つその男は寛いだ様子で、地底湖の湖畔に立っていた。ダットも無様な奴隷達も生意気そうなスーツの男も全て死んだ。皆、死んでいた。その男……天為が、「痣の男」と呼ぶ……は、満足して、微笑んでいた。邪悪なギザギザの歯をむき出しにしている。


 「あぁー。すっきりした。殺すとすっきりする。解放されるねぇ。」


 真実を知る者達……オーリ……からはノードと呼ばれるその男は、狂った感想を述べていた。求められてもいないのに。痣の男は、うつ伏せに倒れ込んでいる天為の背中から生えていた。裸足の足の踝から先が天為の背中にある痣にめり込んでいた。彼等は繋がっていた。

 さて、と男は思案する。久し振りに本当に久し振りに解放された。天為がコーマを経てアンノクターに到達してからは、全くといっていいほど解放される事がなくなった。まさしく、アンノクター・サンバーク・サンホーディだ。あぁ。忌々しい。まぁ、だが、ローランドから離れたのは、良いことだ。まずは、天為の毒を消して、引っ込むとするか……但し、表層だ。薄皮一枚の所に居させて貰うぞ、天為。いや……と男は気づいた。監視者の視線を。


 「気にいらねぇなぁ!」


 痣の男は叫んだ。見開かれた黒い白目が拡張し、圧縮されたオンを発した。それは黒い炎となり男の視線の先を炙り出す。


 ……ぶつん。


 隔離した時と同じ音を出して、彼等は世界に戻ってきた。セツナとハルと高坂だ。彼等は、セツナの隔殻の術により、此方と彼方の狭間に身を寄せていたのだ。それが痣の男のオン……負のマイト……で術が破られ、此方に引きずり出されたのだ。


 「は?へぇ。随分と、古びたのが出てきたな。堕ちたか?なぁ、世界はお前の事など用済みだってよ。かけけけけ。」


 毒のある乾いた笑いを男は発した。言葉の意味が分からないハルと高坂は、ただ、身構えた。セツナは違った。


 「ノードの分際で、私に話しかけないでください。何故、ノードが此処にいるのです。穴蔵に戻って模倣劇の続きでもしたらどうですか。」


 心底、汚らしいモノを見た、セツナの目はそう語っていた。底には蔑みがあった。高坂はそれを感じて……セツナとは本当の仲間にはなれない……と直感した。恐らく、痣の男も同じ感情を抱いたのだろう。先程の死の叫び……アルルーン……を発した。今度はセツナもハルも、高坂でさえも対応出来なかった。


 ……駄目だ、間に合わ


 心臓が悲鳴に鷲掴みされ、血液が沸騰しようとその嵩を増した。身体中の穴という穴から、血を吹き出す……直前、痣の男は口を塞がれた。痣の男は驚愕に目を見開いた。私の叫びにこれほどまでに接近して、影響を受けないなどと。誰だ。


 「何だ。貴様は。その叫びは?」


 コットスは力強い掌で、痣の男の頭蓋骨を鷲掴みにしていた。彼は、痣の男のアルルーンが自分には効かないことを理解したが、ずっと倒れた振りをしていたのだ。高坂達が突然消えた事に用心して、様子を窺っていたのだ。コットスは知っていた。問題を理解せずに対処しては、本質を見誤りしっぺ返しを食らう。さて、今はどうする?どう対処する?情報が足りない。正と誤が混ざり合っている。さて……。

 コットスが思考を巡らせるのを感じた痣の男は、コットスと交渉を開始した。


 「面白いなぁ。お前。あれだ、特異点か?お前はマイトを打ち消す。違うか?当たりだろ?で、何故、俺がそれを知って


 コットスは頭蓋骨を握りつぶした。痣の男は、真っ黒い体液を吹き出してしぼんで消えた。


 「まぁ、取り敢えず排除だ。」


 不明への対処としては次善の策だが、まぁ、悪くない。お手本通り。コットスは痣の男の黒い体液で汚れた掌を見て、そして、見下ろした。天為を。うつ伏せに倒れたままだ。さて、どうしたものか。コットスは答えを出せず、でも……そうして、ようやく地底湖に静寂が戻った。

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