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世界が生まれ変わる物語。  作者: ゆうわ
第二章 砂の果実。
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2.砂の果実。 開幕。 12


 ……行くか!


 天為はラーダンモールに挑む。コットスとホランもそれに加わる。彼らは更に10体のラーダンモールを倒したが、そこで、乱戦に突入した。天為は流れる水のように兵士達の間を泳ぎ、呼雪を振るう。ホランは兵士に絡みつき次々と関節や骨を粉砕していく。


 ……こっわ!何この体捌き。


 今まで見た事もない滑らかな体術を目の当たりにして、高坂が苦戦するのも無理無いなと天為は感じた。コットスはその短身からは想像も出来ないような豪腕で兵士を吹き飛ばして行く。例の能力はラーダンモールには意味を為さないようだ。ラーダンモールは感覚と共にマイトも共有しているのだろう。コットスと対峙する兵士はマイトを失い、やや動きを鈍らせるが、どこからかマイトを補充して回復するため、倒れたりせずに行動を続けていた。だが、ラーダンモールより彼ら3人の方が遥かに戦闘に長けていた。混戦ではあったが徐々に場を制圧し始めていた。濡れたラーダンモールとの乱戦でホランはずぶ濡れになっていった。妙な肌寒さを感じる。コットスも同様だった。


 (寒い地下での戦いであまり身体を冷やすのは得策ではないな。)


 コットスはなるべく身体を濡らさぬように戦ったが関節技を多用するホランにはそれは無理な相談だった。一方で、長い刀を操る天為はラーダンモールの雫を被らずに済んでいた……が、彼は元々泳いでここまで来ていたのでずぶ濡れで、寒さでかなりの体力を既に奪われていた。天為もまた早期の決着を目指して、紙一重の半分の半分で攻撃を交わし、切り込んでいった。ラーダンモールは残り11体。


 ……ま、思った通りだよ。


 湖上の魔術師は笑う。ボウモアはこのラーダンモールでは月雲の「事務屋コットスと白蛇ホラン」の2人には勝てない事を理解していた。彼らに勝てるのは、熱砂騎士団のガンウェルと……


 (私位のものだ。)


 彼女は白く美しい腕を魔術師の長衣から差し出し、壊滅的な魔術を唱え、湖畔の間抜けな戦士達を消し炭、優しいラインの右の乳房に小さな投げナイフが刺さった。高坂の「鳶爪」だ。


 「浅いか。」


 湖岸で高坂が呟く。湖上のボウモアは、目を見開き、胸に刺さった鏃のような投げナイフを見つめた。光を全く反射しない闇色のナイフだ。岸辺から50メートルは離れている。この距離でナイフが届くのかとボウモアは呆然となった。そもそも魔術師の身体は魔力で護られており、大抵の刀や弓矢は弾き返してしまう……筈だ。この距離で魔力の障壁を突き抜けて乳房まで刃が到達する事など、あり得るのだろうか?いや、違う。私は戦いをしっかりと見ていた。あいつはそんなそぶりなど見せなかった。一体、私に気付かれないで、どの様に、いつ投げたのだ。イツノマに……胸のナイフを抜こうとするボウモアに再び高坂の鳶爪が襲いかかる。高坂は見ていたのだ。湖上の魔術師が術を唱えるため、一瞬、目線を外したのを。今度は、ナイフに目を落としたのを見ていた。見逃さなかった。同時に5つの爪が飛来する。3つはボウモアの障壁に阻まれ、弾かれた。1つはボウモアのフードを掠めて引き裂いた。最後の一つは露わになったボウモアの白く小さい頭部を捉えた。額に突き刺さり……突き抜けた。乱戦を戦いながらも全てを把握している天為は心で呟く。


 ……駄目だね。高坂。それは、ウツシミだ。


 頭部に穴の開いたボウモアは目を見開き、高坂を睨んだ。幼く愛らしい顔は一瞬で、憤怒の形相に歪みしわだらけの魔女のそれになった。


 「覚えておくぞ!亡国の死神よ!私は決して許さぬ!この手で貴様の魂を抜き取って見せるぞ!」


 そこで、ボウモアはふっと愛らしい顔に戻った。身体の輪郭がゆらゆらとなびく。


 「……此処を生きて帰られたら、の話だけどね。」


 最後にうふふと彼女は笑い、煙となった。煙は(陸で溺れな。)との言葉を残して消えた。高坂は軽く舌打ちしながらも、魔術師の現身のダメージはある程度、魔術師本人に移る事を知っていたので、今のところはこれでよしとしようと……が、思わず続けて本当の舌打ちをしてしまった。


 「か、勘弁してよ。」


 混戦の中の天為も敏感に事態の変化を悟った。コットス達はまだ気付かない。ちょっ、まさか……


 「オカワリ?しかも、オオモリじゃんか。」


 湖底から更に倍のラーダンモールが現れた。今いる分でぎりぎり倒せるかどうかの数だ。更にあれらがこの乱戦に加わるのでは勝てる見込みが無い。天為の背中に冷たい汗が流れ、古い大痣に沁みて不吉な痛みを発した。


 くっそ。盛り上がり過ぎじゃね?どうすんのよこれ。


 戦いではなく、脱出方法を探し始めた天為の前で、最後まで抵抗していた3体のラーダンモールが体を痙攣させながら、倒れた。違和感を感じたコットスはしかし、ホランも同じく倒れ込むのを見て、愕然と……いや、なんだこれは。身体に力が……こ……呼吸が……。コットスも膝を付いた。息が出来なく成りつつあった。術か?いつの間に?マズいぞ……。


 「どうしたのだ?」


 高坂が焦りの声を出す。目の前では、100体近いラーダンモールかざわざわと湖面に上がって来る。天為の身体が傾いで揺らぐ。


 「おい!!」


 高坂の絶望的な声が地底湖に響いた。天為は……ゆっくりと崩れ落ちた。


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