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世界が生まれ変わる物語。  作者: ゆうわ
第二章 砂の果実。
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2.砂の果実。 開幕。 10

 ざ、ざざざばぁぁぁぁ……


 美しい月色の髪とお揃いの瞳が深い深い地底湖から浮かび上がる。氷のように澄んだ水の中から浮かんで分離した。下着だけのその姿は濡れて波と同化していた。地下の薄暗がりに溶け込んでいた。


 「は、はぁっ……。」


 天為は大きく息をついた。目標とする湖畔の戦いを眺めながら、天為は大きく息を吸い……ゆっくりと吐き出した。彼の精神はどんどんと研ぎ澄まされ加速して、遂には世界を置き去りにする。極限の集中状態。心頭滅却の境地に達する。極限の集中状態が精神を加速させ、相対的に世界の時間が停止する。天為は、無限の魂の時の中で、湖畔の戦いを分析した。


 ……珍しいな。


 高坂は苦戦していた。長身の格闘家に。高坂は抜群の破壊力を持つ拳を武器に、接近戦では破格の強さを発揮する。その高坂が苦戦しているのだ。高坂の拳も蹴りも、長身の男はなめるようにかわし、長い体肢を絡めて投げた。


 ……柔術か。


 長身の男……ホランは、柔術使いだった。強力だが、直線的な高坂の攻撃をホランはいなして、高坂を投げる。投げて関節技に持ち込もうとする。しかし、基本的な身体能力で勝る高坂は、受け身を取り、関節技を避ける。どちらも決定打を打てず、じゃれあうような取り組みを繰り返していた。


 ……まぁ、珍しいけど、あいつの本職じゃ無いからな。格闘は。


 天為はその不毛な戦いに突っ込んで行った。接近戦は天為の担当だ。天為は氷が溶けるようにしか進まない世界の中で、マイトを無限に拡散させて、それとつながりそれを把握していた。彼には見えていた。可能性が。この先何が起こり、何が起こらないのか。天為は、未来のいくつかを見ていた。……正確には、未来を推測していた。目の前で戦いを繰り広げる二人の動きを観察し、消化して理解する。そして、次の動きを予測していくのだ。極限の速度で回り続ける天為の精神は、一瞬を無限に拡張し、全ての選択肢を検討し、最も妥当な未来を導き出すのだ。彼は明確に未来を予測する。完全に緻密なその予測は、視覚的に見る事が出来た。今、天為が見ている未来は、二人の戦いと一人の傍観者がいる未来だ。彼らは自分達の戦いに夢中で天為の存在に気付いていない。だから、戦い続ける未来が見えるのだ。天為はマイトを完全に世界に融合させている。人としての気配は消滅していた。湖畔の細波に紛れて接近する。彼はただの風でしかなかった。未来に天為の動きが加わり始める。長身の男が天為の出現に驚き、呼吸を乱して高坂に拳を打ち込まれる。


 ……いや、


 天為は無限の未来から、真実の一瞬を見いだす。高坂の拳が届く前に天為の呼雪が男の真下から、全てをすくい上げ、切断する。驚愕するコットスが行動を起こすより早く、渦を巻く天為の刀筋がコットスを捉え、首を切断する。無数にある未来が一つずつ消えていき、この未来が徐々に濃くなり、固定していく。天為が彼らに気付かれぬまま十分に接近し、遂に未来が固定する。その瞬間。


 ……何だ。


 天為は気付いた。コットスの目線に。コットスは全く体を動かさずに目だけを動かしてていた。いつの間にか、コットスは二人の戦いではなく天為の方を見ていた。


 ……違う。


 気配を消し、湖上の暗がりと波のさざめきに埋もれる天為に気付いているのではない。コットスの目線は僅かに天為をそれて……彼の後方を見ている。


 ……何だ。何を見ている?


 天為の視界から、未来の映像が消えた。そうだ。彼は未来が見える訳ではない。彼が予測する未来を見ているだけなのだ。そして、コットスが天為の後方に見る何かも、見ることは出来ずにいた。把握不能の要素が未来の推測を不可能にした。


 ……何だ?何がいるんだ?


 天為は背中に冷たい汗が湧き上がるのを感じた。無限に拡散している彼のマイトは彼の後方世界とも同化していた。見えてはいないが、魂は触れていた。それに。天為は、それを理解しようとする。彼の魂は、生きても死んでもいないその存在に触れていた。いや、その存在達に。


 ……50はいるぞ、おい。


 天為は完全に未来を失った。予測不能の世界の中で、でも、しかし、天為は笑う。


 ……かははは。面白い。いいぜ。来いよ。


 一か八か、天為は横に飛び退きながら、背後を振り返る。俺はつつくぞ。藪をつつく。


 ……さぁ、来い未来。


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