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A.U.R.A.《オーラ》高度犯罪分析局 ――たった一人の死を追う逆算プロファイル  作者: 久茉莉himari


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【31】オーラ、マイアミに向かう。〜さようならを全てに〜

朝、7時。


ギャレットがスーツに着替え、出張バッグを持ってリビングに現れると、ヴェイル博士はにこりと微笑んで言った。


「タクシーを呼びますか?」とだけ。


ギャレットは「ええ。もう呼びました」と答える。


ロドンはヴェイル博士の横にきちんと座り、ギャレットを見上げている。


ギャレットは思わず、スーツの胸ポケットにある金の十字架に、ポケットの上から触れた。


博士はロドンに向かって、やさしく言った。


「ロークが帰るんだって。

お見送りしよう!」


ロドンが小さく「ワン」と答える。


ギャレットは嫌な予感がした。


なぜなら――

博士の手にはバイオリンがあったからだ。


二人、並んでタクシーを待つ。


秋の始まりを告げる風の中、ギャレットの予感は的中する。


博士がバイオリンを弾き出す。


その曲は『亡き王女のためのパヴァーヌ』


ゆったりと、哀しく、美しいメロディがギャレットの胸を引き裂く。


もう二度と、この家に来ることはないだろう。


この美しくやさしく、聡明な、儚い人の為に食事を作り、氷水を入れることもない。


二人で食事をすることも。


勝負のない追いかけっこも。


ロドンの世話をすることも。


ギャレットは神に感謝する。


裸足で裏庭に立てたことを。


あの感触を、一生、自分は忘れないだろう。


そうして、タクシーがやって来る。


ヴェイル博士は演奏を止めると、はにかんだ笑顔で言った。


「じゃあ、また。

ギャビー」


そのやさしい甘ったるい声を聞き、笑顔を見て、ギャレットは知る。


ヴェイル博士は、ジャコビーのカウンセリングテープの解析に関わっていない、と。


ギャレットは、微笑む。


「さようなら。

セオ」


ちょっと驚いた顔になった博士が瞳を丸くする。


淡いヴァイオレットグレーの瞳を。


風に揺れ、頬に掛かる、アッシュブロンドのストレートの髪。


ヴェイル博士の横にきちんと座って、ギャレットを見ているロドンの無垢な瞳。


その全てに、ギャレットは別れを告げたのだった。





午後1時。


ギャレットはNYのオーラの会議室にいた。


ギャレットが淡々と説明を始める。


マイク・ジャコビーが『トランス・ジェフリー』と偽名を使って、マイアミでキャロライン・ベントン精神医学博士のカウンセリングを受けていたこと。


しかし、内容はただの『患者に精神的異常は見られず。話し合い。』で、『マイアミでの生活』を話していただけだということ。


その内容から、リアムの幼馴染が『エリオ・エヴァレット』と判明したこと。


エリオは、マイアミに本社があり、全国展開している総合ファシリティマネジメントの一流企業の三男。


ただし、一介の会社員として現場に出て働いている。


そして、エリオはジュリアン・クロフォードと親しいこと。


リアムの住んでいた部屋はクロフォードのペーパーカンパニー所有の持ち物で、リアムはクロフォードの"好意"でそこに住んでいたこと、を。


口火を切ったのはヴォーン捜査官だ。


「ジャコビーは、相当エリオに入れ込んでいた。


だが、エリオの自慢話をする相手がいない。


そこで精神科医にカウンセリングという形で、話を聞いて貰っていたんですね!」


ギャレットが即座に厳しい声で「違う」と告げる。


「君たちは、まだジャコビーのカウンセリングテープを聞いていないから分からないだろうが、エリオ――通称エリーはジャコビーの世界を変えた。


君たちはノラが抽出した、重要な会話を聞いてから判断しろ。


次に、君たちのウェルズ特別捜査官のプロファイルを聞こう」


ギャレットの言葉を受けて、クロウ捜査官が話し出す。


「主任の読み通りだった。


ウェルズ特別捜査官とエレナは、ただの幼馴染じゃない。


エレナのミドルネームの名付け親は、ウェルズ特別捜査官の父親、ウェルズ海軍大将だった。


つまり、生まれた時からの付き合いだ。


エレナを守る為なら、彼はマイアミにも行くだろう」


「それに、この夏、ウェルズ特別捜査官は三度マイアミに行っているわ。


休暇を取って日帰りで、ね」とアッシュ捜査官が続ける。


「でも、エレナのどんなSNSにも、ウェルズ特別捜査官の訪問は載っていない。


たぶん、素敵な休暇の為にマイアミに行ったんじゃないわ。


それにウェルズ特別捜査官の親しい友人は、エレナ以外マイアミには一人もいない。


エレナに会いに行ったとしか思えない。


そして、"エレナの為に"リアムと関わったのよ」


ギャレットのスティールブルーの瞳がギラリと光る。


「リアムはエレナと、お隣同士としてだろうが――


初めて握手をした時に、『俺なんかと握手した手を洗って下さい』と言ったそうだ。


自己評価が非常に低い。


それに、何らかの事情があって高校も中退している。


ノラ」


「ハイッ!」と勢い良くノラの声がスピーカーから響く。


「エリオ・エヴァレットの最終学歴は?」


「えっと……うわー!!


マサチューセッツ工科大学です!


電気工学・計算機科学部、通称EECSを上位3%の成績で卒業しています!」


ヴォーン捜査官が腕組みをする。


「あのマイク・ジャコビーの世界を変えて、ジュリアン・クロフォードのような癖のある人物とも親しく、兄姉と年の離れた野心の無い三男……。


彼はプロファイルと一致します!


彼はリアムの幼馴染というより、親友ではないでしょうか?」


クロウ捜査官が思案げに口を開く。


「だがなあ……。


そんな天才のお坊ちゃんと、自己評価が低いリアムがどうやって親友になる?


まず、幼馴染と言ったって、同じ区域内に住んでいなければならない。


それに、エリオはたぶん私立校だろ?


リアムはその私立校に通えたのか?


エレナとウェルズ特別捜査官は分かる。


同じ上流階級の生まれで、家は隣同士だからな」


その時、アッシュ捜査官が声を上げた。


「待って……!


エリオはジャコビーの世界を変えた!


主任、エリオからジャコビーに声を掛けてるのよね?」


「その通り」とギャレットが一言答える。


アッシュ捜査官が深く頷く。


「エリオは天賦の才があるのよ!


観察眼と魅力的な言動というね。


エリオから何らかの機会に、リアムに声を掛けて仲良くなったかもしれないわ!」


「あり得るな」


ギャレットはそう言うと、厳しい声で続けた。


「FBIはヴォーン捜査官の見立て同様、プロファイルを進めているだろう。


エリオがジャコビーの"真の理解者"であり、シアトルでの事件をそそのかした人物だと。


だが、その前提が間違っている。


エリオはそそのかしてもいないし、ジャコビーをトランス・ジェフリーだと信じて、善意で行動していた。


つまり、FBIの前提でエリオに接触すれば、今度はジャコビーのテープがエリオの弁護団にとっては証拠品になる。


ジャコビー自身が語っているからだ。


それに、エリオはまだリアムの死を知らないだろう。


彼は未だに何ら行動を起こしていないからな。


もし、知ったら、彼は永遠に口を閉ざす」


クロウ捜査官が眉を顰める。


「じゃあどうする!?」


ギャレットは三人を見渡すと、静かに宣告した。


「我々はこれよりマイアミに向かう。


どんな手を使っても、FBIよりも早くエリオに接触する。


くれぐれもFBIの行動分析課も、ジャコビーのテープを解析していることを忘れるな。


30分後に出発。


以上」


そして、ギャレットはマイアミで出会う。


神様のギフトたちに――

こまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

次回も読んで下さると嬉しいです☆


毎日17時更新☆


Xはこちら→ https://x.com/himari61290


自作のキービジュアルやキャラクターカード貼ってます♪

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