↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
A.U.R.A.《オーラ》高度犯罪分析局 ――たった一人の死を追う逆算プロファイル  作者: 久茉莉himari


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/36

【29】神様のギフトの断罪よりも残酷な答え。〜誰のせいでもない雨に濡れて〜

ジャコビーが"穏やか"に話を続ける。


「エリーは『知ってるよ!ニュースの範囲だけね!』と答えると、悪戯っ子のようにニッと笑って言いました。


『でもさあ〜!


ジャコビーの"気持ち"をニュースは教えてくれないじゃん?


ジャコビーの奥さんの言い分は分かるよ?


ジャコビーを悪く言わなきゃ、自分と子供たちが破滅するからね!


でも、ジャコビーが"全部悪い"かは、俺には分かんない。


だいたいさあ、奥さんの昇進を妬んだからって、『じゃあ今日から俺は爆弾魔になります!』ってなる?


そんなに単純なものじゃないでしょ?

人生って!


生きて行くだけで辛い日もあるし!


誰のせいでもないのに、雨が降って、俺たちは濡れるし!』と。


私は頭を殴られたような感覚を覚えました。


この27歳くらいの青年が、人生の真理を言っている。


しかも、ニュースを見ても、それを鵜呑みにしていない。


だから、私は訊いた。


FBIの正式発表を見たかい?と。


すると――

エリーはアハハと笑い飛ばしたんです。


『FBIは、ジャコビーを逮捕する為には、どんなことでもするよ?


例えば、ジャコビーをわざと刺激する情報を流すとかね!


良くあるやつ〜!


それで逮捕したら、後で訂正の記者会見をちょろっと流して終わり!


まあジャコビーが爆弾を爆発させたのは、圧倒的に悪いよ?


罪のない人たちを恐怖に陥れた。


そして、公共の建物を破壊した。


ただ、一つだけ、ジャコビーは一線を越えなかった。


欲望に駆られた犯罪者や差別主義者、それとテロリストなんかと違って、人間を標的にしなかった。


でも、FBI側に立ってみてよ。


捜査の為に何でもやる!ってなるよね?


それが彼らの仕事じゃん?』と。


私は、神様が本当にいると、人生で初めて思いました。


教会に行くのは人生の義務だと思っていた。


でも、私の目の前に、神が下されたギフトのような人間が、現実に存在するんです」


ギャレットは思わず、テープをまた一時停止した。


今までの自分なら――

ヴェイル博士に出会う前の自分なら、痛まなかった胸が痛い。


今までの自分なら、切り捨てていた側の犯罪者にも、共感している自分がいる。


『エリー』の言う通りだ。


俺たちはジャコビーを逮捕する為なら、どんな"揺さぶり"も掛けただろう。


妻の証言もそうだ。


自分と――

何より子供たちを守る為なら、もう爆弾魔として烙印を押された元夫を悪く言うに決まっている。


FBIの取り調べが"スムーズに行く"ような証言だって、進んでしただろう。


俺たちは、ジャコビーの"気持ち"を考えたか?


否。


プロファイルしただけだ――


ギャレットはスマホを掴んだ。


ノラが「ハイッ!」と勢い良く通話に出る。


「SNSのハッシュタグを調べて欲しい。


『世界が変わる』


この言葉を使っている、並べ替えている、その他、この言葉に繋がるハッシュタグだ」


「えーと……もの凄い数があります!


うわー……!!


スピリチュアル系とか、新興宗教でも個人でも世界中でわんさか出ます!!


億単位ですよ!億!


絞る情報を下さい!」


「位置情報をマイアミに絞れ」


ギャレットの鋭い声に、ノラが直ぐ様答える。


「えーと……!!

それでも、かなりの数です!」


「男性、髪の毛はサンドブロンド、瞳の色はブルーで顔認証に掛けろ。


ブルーは特徴的な瞳だ。


ビー玉の様に澄んでいて、光っているように見える。


年は20歳から22歳」


「ちょっと……お待ちを……!!


って……!


えぇ!?

何で!?


うわー!!

うわー!!

大変ですッ!!」


ノラが悲鳴じみた声を上げる。


ギャレットが静かに訊く。


「何だ?」


「ジュリアン・クロフォードのSNSに、主任の言った通りの外見で、ハッシュタグ『船上パーティ』『マイアミ』『親しい友達』『シャンパンはロゼ』そして最後に『世界が変わるから』です!」


「その画像を」


「もう、送りました!」


「ご苦労。


では、明日、この青年に絞って、全てのSNSでこの青年を顔認証に掛けろ」


「了解です!」


ブチッとノラから通話が切れる。


ギャレットはパソコンに送られたその画像を見た。


船上パーティの中心にいるクロフォードは、彫刻のように美しい顔を崩し、楽しそうに笑っている。


そして、その隣には――

サンドブロンドの髪の毛を海風でなびかせ、ジャコビーの言った通り、まるでビー玉の様な澄んだブルーの瞳をした20歳くらいの青年がつまらなさそうに、カメラを見ていた。





ギャレットはそこで、一旦リビングに向かった。


なぜなら、もう22時を過ぎていたからだ。


リビングの照明は落とされ、ダイニングテーブルに灯りが点いている。


ロドンはどこにもいない。


きっと裏庭から放たれ、森の中を駆けているのだろう。


ダイニングテーブルに向かうと、そこにはクロワッサンのローストビーフサンドと白いメモが置かれてあった。


「だって……クロワッサンを温めて、後は切るだけだから……」


そう言って、ヴェイル博士が、ちょっぴり膨れた顔をして横を向いて言ったことを思い出す。


メモには『先に休みます。ロドンは遊びに行ってます。お疲れ様。S』と書かれてあった。


ギャレットは一瞬、ヴェイル博士の様子を見に行こうかと思って、止めた。


寝入りばなに起こすかもしれないと思って。


そして、ブラックコーヒーを淹れると、ローストビーフサンドを食べた。


そして、考える。


ジャコビーはどんな"気持ち"で、『エリー』に『爆弾魔ジャコビー』をどう思うか聞いたのだろうか?と。


きっとジャコビーは、聞かずにはいられなかったのだろう。


神様のギフトが、自分を断罪してくれたら、離れられた。


だが、神様のギフトは――

断罪よりも、もっと残酷だったのだ。


ジャコビーをやさしく包んだ。


ニュースを鵜呑みにせず、『爆弾魔ジャコビー』の"気持ち"が分からないから、分からないと正直に答えてくれた。


そして、FBIなんだから、どんな手を使って捜査をして当然だと言いながら――


『一つだけ、ジャコビーは一線を越えなかった』と言った。


そう、ジャコビーは、人間は殺していない。


そして、ジャコビーは突然、爆弾魔になった訳ではない。


誰のせいでもないのに、雨は降る。


雨に打たれても、何とも無いと思っていた過去の自分が、ギャレットには不思議に思えた。


こうして、ローストビーフサンドを食べて、幸福を噛み締めている自分が、本当の自分だと、本能が告げてくる。


そして、あの青年はジュリアン・クロフォードとも知り合いだった。


船上パーティに招かれ、彼の口癖をハッシュタグに使われるくらいには。


そうして、ギャレットは確信する。


あの青年こそ、リアムの幼馴染だと。


そのギャレットの確信は、証明される。


皮肉にも『爆弾魔ジャコビー』の"証言"のお陰で。

こまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

次回も読んで下さると嬉しいです☆


毎日17時更新☆


Xはこちら→ https://x.com/himari61290


自作のキービジュアルやキャラクターカード貼ってます♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。