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超醒の救世者  作者: ミライ
一章
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28/29

試験 ーその5ー

 誠志(せいじ)瑞樹(みずき)は、最後の作戦を話し合っていた。

 (あきら)堰葉(どうば)の渾身の一撃を漣李(れんり)が躱してから、およそ三分が経過していた。その間も、瑞樹の超能力を突発的に解除することで、隙を作ろうとしていたが、すでに読まれてしまっていたようで、漣李には全く聞かなかった。


「これならいける」

「本当に、それでいくつもり?結構賭けよ」


 心配する瑞樹を横目に、誠志は走り出していた。

 二人への作戦共有は、戦闘中に行うしかない。戦いの最中、全くのド素人がそれをするのは非常に難しいため、作戦の要である昌にしっかりと伝える時間を確保したかった。そのため……。


「堰葉、一分耐えてくれ!!」

「……わかった!何か策があんだろ?」

「助かる!!」


 堰葉と出会ってまだ数時間しかたっていないが、自己紹介でのことや、戦闘中に昌を気にかけていたことからも、誠志の提案を承諾してくれると信じていた。

 いきなり誠志に引っ張られた昌は驚いたような顔をしていたが、誠志の目を見て状況を瞬時に理解する。そして、なるべく手短に作戦を話した。


「昌、できるか?」

「……できると言い切ることはできませんが、任せられたならやり遂げますよ」


 そういって、昌は漣李に向かって走り出した。誠志も、作戦通りに行動を始める。

 堰葉と戦っていた漣李は、二人の出方をうかがっていた。昌が戦線復帰してきたとしても、対応は変わらないだろう。それよりも、誠志の方が気がかりだった。愛月(まなつ)たちが誠志の超能力を、『触れている者の超能力を使えなくする力』と登録したため、漣李はそう認識している。そのため、誠志の接近を許せば氷塊が作れなくなり、負ける可能性が跳ね上がることも理解していた。

 つまり、漣李が今ここで最も警戒すべきは誠志なのだ。

(来た!!)

 誠志の読み通り、氷塊の配分を堰葉・昌に一つづつ、誠志に二つに変更してきた。

 これこそが最大の計略。誠志自身を使った特大のブラフによって、漣李の隙を作り出すことに成功した。


「おいおい、よそ見すんなよ!」


 相手にしていた氷塊の数が減ったことで堰葉の負担が軽減され、今まで出せなかった最大限の力を叩きこむために、漣李に向かって走り出した。

 漣李は冷静に、今まで通りに対応したつもりだろう。しかし、力を溜める猶予を与えてしまったがために、漣李が作り出した氷塊は堰葉の拳に粉々に粉砕された。そして、休む暇を与えずに、堰葉の陰から水弾が漣李に迫る。

 意表を突かれたとはいえ、漣李は至って冷静だ。そのため、昌が放った水弾も的確に対処してくる。実際、昌に割いていた氷塊で防げばいいので、漣李の手数が減ったわけではない。堰葉も、一撃に力を籠め過ぎたせいか、その場に硬直してしまっている。昌も、二発目の準備はしていない。誠志も手の届く範囲にはいない。つまり、追撃は不可能。

 油断していないとはいえ、漣李は一瞬そう思ってしまった。瞬間、再び氷が摩擦力を失った。


「二度目は効かないわ」

「それはどうですかね?」


 確かに、漣李は氷で滑ることはなかった。しかし、漣李は体勢を崩してしまった。

 氷が摩擦力を失う寸前で、誠志は空中に飛び上がっていた。そのため、滑ることなく漣李に近づいていた。それを見ていたため、漣李は空中に回避する択を捨てて、滑らないように踏ん張って迎え撃つことにしたのだ。しかし、それがよくなかった。漣李は、昌が作り出した水流によって足を取られたのだ。

 仰向けに倒れた漣李に向かって、誠志の手が伸びる。


「甘い!」


 どれだけ体勢を崩していても、距離の目算さえ見誤らなければ、氷塊は誠志の行く手を拒む。


「本当にそうですか?」

「え?」


 漣李の視線が一点に集まる。それは、自身の胸につけられたバッジ。いや、胸についていたはずのバッジ。瑞樹が手に取ったバッジに、漣李の視線が、皆の視線が集まった。

 この瞬間、誠志たちの実技試験合格が確定した。

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