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超醒の救世者  作者: ミライ
一章
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26/29

試験 ーその3ー

「ただいまより、実技試験を開始する。……始め!!」


 試験官の一言で、会場にいた受験生が一斉に動き始めた。無論、誠志(せいじ)のチームもその一つである。

 説明された依頼内容を簡単にまとめると、第二区画に散りばめられたあるものを集めてこいという……所謂、落とし物を探しというものだった。これに関しては、誠志は何度か経験があるので、実際の空気感などはわかってはいたが、いつも同行していた(あつむ)の超能力に助けられていたため、その経験を百パーセント生かし切れるわけでは無かった。

 勿論、試験がこれだけであれば、去年よりも圧倒的に簡単だと言えるだろう。しかし、そんな話があるはずもなく……この試験には一つの大きな障害が設定されている。

 それが、試験官が身につけているバッジを一つ以上持ち帰るというものだ。

 これは、今までの対人戦の試験の代替として用意されたもので、今回四人一組のチームである点を見れば、人によっては簡単になっているのは間違いない。勿論こちらもそんな美味しい話なわけがなく……担当する試験官は皆、本部所属の精鋭揃いだった。

 誠志が今目指しているのが、学生治安維持委員会(S M C)の支部で、これは全ての区画に存在している。それに対して、本部は第一区画にしか存在せず、難易度の高い依頼や、危険度の高い任務を中心的に扱っている。そのため、そんじょそこらの超能力者よりも圧倒的に強く、場合によっては支部長の愛月(まなつ)よりも権力が上のことがあるのだ。

 その本部に所属している実力者が試験官であるならば、胸につけられたバッジを取るのは至難と言える。一応、取らなくても合格することはできるが、そのためには制限時間内に数えきれないほどの指定された物を持ち帰る必要がある。

 試験官が徘徊し、何百人もいる受験生とそれを取り合っているため、現実的とは言えない方法だった。


「よし、俺の分は終わりだな」


 そのため、誠志たちは試験官と戦って、バッジを奪うことに決めていた。勿論、バッジだけ持ち帰っても合格できるわけないので、まず始めに手分けして指定された物を最低限集めてから、万全の状態で戦うつもりだった。しかし、事はそう上手くは運ばず……。


『すまん、試験官の一人と接敵した』


 チームメンバーの一人からの連絡。場所は位置情報が共有されているため、ある程度はわかるが、今誠志がいる場所からは少し離れていた。他の二人はもう直ぐ着く頃なので、戦闘は任せて一旦誠志は、接敵したメンバーが集めきれていない分を回収することにした。

 三分後、誠志はメンバーの元へと向かう道中で、しっかりと足りない分を集め終えた。後は、試験官からバッジを取るだけだ。

 三人の超能力は戦闘向きで、誠志はサポートがメインだ。もしかしたら、誠志が着く頃には戦闘が終わって、バッジを回収しているかもしれないと。そんな考えが、頭をよぎらない事はなかった。

 しかし、そんな考えも近づくにつれて肌に触れる凍えた空気が知らせてくる。『世の中そう甘くはない』と。

 誠志が着いた頃には時すでに遅し、戦場は巨大な氷塊で包まれてしまっていた。


「……?!みんな……ッ!!」


 誠志は、氷塊をよじ登り中の様子を確認しようと動き出した。誠志が触れても、氷は消えない。超能力でできた物であるのは間違いないため、やはり一度具現化してしまうと誠志に太刀打ちする事はできないのだろう。

 滑る地面に苦戦しながらもやっとの思いで中を覗き込むと、そこには一人の少女と戦う二人の姿が見えた。


「あの子は……」


 試験官と思われる少女……いや、試験官の少女に誠志は会ったことがある。それもそのはず、彼女は誠志の筆記試験を担当した試験官だったからだ。

 勿論、試験官が皆本部所属と知っていたため、あの場でこの事実は理解できていたはずだった。しかし、自分よりも小さな子が、そんなわけないと、偏見じみた思いを心のどこかで思ってしまっていたのだろう。そのため、実際に戦闘を目撃した時の衝撃が、重く誠志にのしかかった。

 狛猫(はくびょう)漣李(れんり)、中学二年生。学生治安維持委員会(S M C)に入れるのが中学一年生からで、まずは支部に所属することを考えると、彼女の昇進スピードは最短とも言える。

 実際に彼女は未来都市でもかなり有名人なのだが、ここに来てから日が浅い誠志は、自分以外に目を向ける時間があまりなかったためその事実を知らなかった。

 そんな彼女には、界隈では有名な二つ名が存在する。白に水色のメッシュが入った髪と、獲物を見据える淡いブルーの瞳からつけられたその名は『青眼の白雪姫(スノウ・ブルーム)』未来都市の中でも、指折りの超能力者だ。

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