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427話 再出発と聞き取り調査

 良い宿で一晩、十分な休息を取ったら出発である。魔導具だらけの魔導都市に長居は無用。お風呂でお湯を出す装置すら起動できない人間に、留まる理由などないのだ…。

 まあ、アエモスさんが代わりに動かしてくれたから入れはしたが。止水もできないとなると不便を通り越して邪魔なんだよね…。いや、邪魔なのは私の方か、ははは。


 でも街中も、物理法則を無視した流れの水路が色んな所に張り巡らされ、見所がたくさん有って楽しかったのは間違いない。うん、観光で寄るには良い街だよ、エンアスグリィサ。美味しい食べ物も多かったし。


 何はともあれ、まずは移動だ。



鈍亀(どんがめ)ちゃ~ん、今日はよろしくね~。」ゾゾゾゾゾゾ…! ゾゾゾゾゾゾ…!

「ギュギュ~~♪」


 目の前には岩みたいな茶緑色の甲羅。牛ぐらいに大きく、頭と尻尾が常に隠れている魔物の亀「鈍亀」ちゃんである。

 その凸凹(でこぼこ)部分に沿って、私は金束子(かなだわし)状の呪鉄製デッキブラシをゆっくりと滑り(こす)っている。この子達にはこれが何故か効くのだ。



「長旅だけど、無理なく進んでね~。」ゾゾッ!ゾゾッ!ゾゾッ…!

「ギュッギュギュ~♪♪」


「ほ~う、随分喜んどる。面白いお嬢さんじゃな。」

「ええ、とても、素敵な、方です。」にこにこ…

(──馬車馬代わりの魔亀(かめ)に客が奉仕しかも呪怨(のろい)の金属の清掃道具を使用なぜわざわざこんな手間を?金は払ったにも関わらず意図が不明過ぎる、亀の甲羅には感覚神経が走っているが分厚い甲殻と魔力耐性に保護され…それを貫通して刺激か?いやその意味は?眷属(けんぞく)化?使役?角兎や酸蛇の方がよっぽど…単なる触れ合い目的、なのか?? 非常識過ぎるだろ。交流する上で態度を軟化させるのは常套手段だが人相手ではなく家畜の魔物では──)眼鏡ピカピカ無駄思考…



 この街の周辺には、小麦や各種野菜の大規模農場はもちろんのこと「実験村(じっけんむら)」と呼ばれる研究拠点が多数存在するらしい。そこでは比較的重要度の低い作物を様々な条件下で育成しているそう。


 私の目的である糊麦(のりむぎ)はこの街から南西方向、「実験村・西の13」って場所で栽培されていて、粘着力の強弱調整、生産性向上や収穫に向く品種改良などを日々調べているんだとか。

 水源がこの街の大河とは別らしく水路等は繋がっていない為、ここからは再びの陸路での移動だ。


 しかし食べ物ではない作物だから街からはえらく離れた位置に存在していて、馬車で1~2日掛かるみたい。しかも現状、定期便はこの鈍亀ちゃん馬車しかない。


 再びのフラットさんの浮遊椅子with鉄荷車でも良かったけど…、まあ、ここまで来れば無理に急ぐ必要もない。現地の人と交流の有る御者(ぎょしゃ)のおじさんからも話を聞けるし、まったりと目的地を目指そうと思う。




 ──────────




 のっし のっし のっし のっし…!



「いやぁ、速いですね~。」

「お嬢さんが相手してくれたおかげじゃな。鈍亀(こいつ)もいたく張り切っとるわ。」


 甲羅マッサージ(?)で元気100倍になった鈍亀ちゃんは結構な速度で爆進していた。体感的に時速30キロの車くらいはあるかもしれない。



「それにこの鉄の板もええしな。尻が全然痛くねぇわ。こんなもん本当に貰ってええんかい?」

「はい、どうぞ。即席で作ったやつですし、さっきも言いましたけど数日すれば()びて使い物にならなくなりますし。」


 私とおじさんは鈍亀ちゃん馬車の御者台(ぎょしゃだい)に並んで座っている。鉄板バネで衝撃吸収の座椅子を後付けさせてもらったから、スピードが出て強く揺れても問題無し。


 ちなみに、アエモスさんとフラットさんは幌馬車内の荷台後方に居る。同じ鉄座椅子をセットしてるから多分大丈夫なはず。休憩の時にでもまた意見を聞こう。



「しっかし、後ろに乗っとる男…。フラットって言ってたよな…?」


 後方を(うかが)う様に声を潜めたおじさんの(つぶや)きが耳に届いた。思わずそちらの話題に乗る。



「はい、失礼眼鏡(フラット)さんですね。どうかしました?」

「精霊様を家畜みたいに使う、あの(・・)フラットで合ってんかね?」髪色やら顔の道具からして…

「まあ、魔導具の中に各種属性の精霊を組み込んでる変わった技術者ではありますね。」

「そんな奴を乗せることになるとはねぇ…。」


 おじさんの目には警戒や困惑の色が見てとれた。

 本当に悪名高いな、あの人。



「まあ、割に話は通じますから大丈夫ですよ?」

「そうかい? 別に襲ってこなけりゃ構わないんだけどね。」

「まあ傲慢(ごうまん)と言うかエゴイストと言うか、当たりは強いですけど。理不尽に襲ってきたりは…、」


 事前告知なく攻撃してきたことは有ったな…。いや、でも、あれは私の呪鉄(やり)を狙ってのことだったから、ギリセーフ…? う~ん…。



煌光国(こうこうこく)から流れてきたんだろ? それでよくまあ好き勝手できるもんだよ。」

「…。」


 実はフラットさん、勇者やら聖女やらが居る【煌光国】の人だったらしい。アエモスさんが教えてくれたところによると、正確には大陸西側に有るその属国出身だそう。言われてみたらくすんだ金髪にも見える頭髪である。

 そこから若い頃に亡命して大陸中央にやって来て、エルフに交じって様々な研究を始めて今に至る…、とか。なかなか苦労してるよね。そりゃ精神が(すさ)んであんな性格にもなるわ、と少し同情したくらいだ。


 まあ、その会話を眼鏡(レンズ)で盗聴してたみたいで、翌日に魔物と無駄に連戦させられたから酷い(いい)性格してるのはその通りだけど。



「まあ、安心してください。彼が無体(むたい)なことをしようとしたらぶっ叩きますから!」鉄ハリセン展開っ…!

「はっはっはっ! 頼もしいお嬢さんじゃ。その時はよろしく頼むわな。」

「ええ!」


 村の規模やどんな人が居るか、鈍亀ちゃんに揺られながら色々と雑談していく。

 その中でおじさんがぽつりと言った。



「ま、問題を解決してくれんなら技術屋でも旅の人でも助かるしなぁ。」


 実は、(くだん)の糊麦村ではちょっとしたトラブルが発生しているらしいのだ。


 街の冒険者ギルドの情報によると、厄介で妙な「夢魔(むま)」が出没していて村の作業に遅れが出てるとか。冒険者を何度か派遣済みなのに全て失敗、なのに怪我人は無く、その夢魔は今も村に居座り続けている、とのこと。

 安全が確保されていない場所だが氏族エルフの後ろ盾が有る私達なら大丈夫だろう、可能なら討伐してほしい、とも言われたのだが。



「ふふふ…、お米の道を(はば)む者は捻り潰してやりますよ…。」

「コメのみち…??」なんだいそりゃ…?


 ま、なるようになるさ~。


次回は5月3日予定です。

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