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THE GLOBAL  作者: YATA0401
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第六章 赤い災厄


巨大な酸素タンクを見上げながら、俺たちはしばらく沈黙していた。


この世界には、まだ隠された秘密がある。


そんな予感だけが、胸の奥で膨らんでいく。


「ハウンド。」


レイ博士がタブレットを確認する。


「最後の酸素タンクも転送完了しました。」


「これで今回予定されていた資源回収はすべて終了です。」


俺は頷いた。


「了解。撤収準備に入る。」


研究回収班が装備をまとめ始めた、その時だった。


――ウゥゥゥゥゥゥン!!


突然、街中に巨大なサイレンが鳴り響いた。


空気が震えるほどの警報音だった。


「な、なんだ!?」


フォックスがロケットランチャーを構える。


ファルコンも即座に周囲へ狙撃銃を向けた。


「敵襲?」


しかし、敵は現れない。


代わりに街の様子が一変した。


これまで感情もなく、一定の速度で歩いていた住民たちが、一斉に走り始めたのだ。


「……走ってる?」


ファルコンが目を見開く。


機械のようだった人々が、まるで同じ命令を受けたかのように同じ方向へ向かっていく。


街中の至る所で、地面が開き始めた。


地下へ続く巨大なシェルターだった。


住民たちは無言のまま、その中へ次々と入っていく。


「避難してるのか……?」


シャドウが呟く。


俺は通信機を開く。


「こちらハウンド!」


『オーバーウォッチだ!』


「住民が一斉に地下シェルターへ避難を開始!」


『原因は!?』


「不明!」


その瞬間だった。


ゴゴゴゴゴ……


遠くの山が揺れ始めた。


地響きが足元まで伝わる。


「山が……動いてる。」


フォックスが息をのむ。


山肌に一本の亀裂が走った。


そして。


バキィィン!!


大地が裂ける。


裂け目から噴き出したのは、溶岩ではなかった。


真っ赤な液体。


血のように赤いそれが、滝のように山肌を流れ落ちてくる。


「なんだ、あれ……。」


レイ博士が震える声を漏らす。


研究員が急いで分析装置を向ける。


しかし。


「解析不能!」


「データがありません!」


赤い液体は勢いよく谷を埋め、街へ向かって押し寄せてくる。


その中で。


何かが動いた。


ズルリ――。


巨大な影。


一本。


二本。


いや。


何十本。


赤い液体の中から、巨大な生物が姿を現した。


体は細長く、巨大な寄生虫のような姿。


全身が深紅に染まり、何本もの触手のような器官を揺らしながら街へ向かって進んでくる。


一匹だけではない。


赤い液体の中から、次々と姿を現していく。


「生物反応多数!」


研究員が叫ぶ。


「数え切れません!」


「全長は十五メートル以上!」


「なんだよ、あれ……。」


フォックスの表情から笑みが消えた。


住民たちは無言のままシェルターへ入り続けている。


しかし。


避難が間に合わない者もいた。


赤い液体が道路へ流れ込み、その人々を飲み込む。


続いて巨大な寄生虫のような生物が近づき、その場から姿を消した住民たちを取り込んでいく。


それでも周囲の住民は悲鳴一つ上げない。


ただ命令されたように避難を続けていた。


「まずい!」


俺は叫ぶ。


「液体がこっちへ来る!」


赤い流れは勢いを増し、施設の目前まで迫っていた。


「ハウンド!」


シャドウが上を指差す。


「酸素タンク!」


巨大な円柱状のタンク。


高さは二十メートル近い。


「あそこなら!」


「全員、登れ!」


俺は叫んだ。


特殊部隊Aチームは研究回収班を援護しながら、非常階段を駆け上がる。


フォックスが最後尾で周囲を警戒する。


「急げ!」


赤い液体が施設へ流れ込む。


ガシャン!


階段の下部が赤い流れに飲まれた。


あと数秒遅ければ逃げられなかった。


全員が頂上へ到達した瞬間、階段の大半が赤い液体に覆われる。


「セーフ……。」


ファルコンが息を切らす。


俺たちはタンクの上に身を伏せた。


眼下では赤い液体が街中を流れ続けている。


巨大な寄生虫のような生物たちも、その中を泳ぐように移動していた。


シャドウが小さく呟く。


「動くな。」


「見つかる。」


全員が息を潜める。


一匹の巨大な生物がタンクのすぐ近くまで近づいてきた。


頭部らしき部分をゆっくり持ち上げ、周囲を探るように揺れる。


フォックスがロケットランチャーを握り直す。


俺は小さく首を振った。


撃てば、他の個体まで呼び寄せるかもしれない。


その生物は数秒間その場に留まると、再び赤い液体の中へ戻っていった。


「……行ったか。」


誰も返事をしない。


緊張で声も出なかった。


通信機からオーバーウォッチの声が聞こえる。


『ハウンド、応答しろ。』


俺はできるだけ小さな声で答える。


「こちらハウンド……。」


『状況を報告しろ。』


「正体不明の赤い液体と巨大生物が出現。」


「現在、酸素タンク上部で身を隠しています。」


通信の向こうでオーバーウォッチが息をのむ。


『交戦はするな。』


『生き残ることを最優先にしろ。』


「了解。」


通信を切る。


赤い液体は、まるで街全体を覆い尽くすように流れ続けていた。


美しかったW-001は、わずか数分で赤く染まってしまった。


そして俺たちは、この災厄が偶然ではなく、この世界で繰り返されている"何か"なのではないかと感じ始めていた。


第六章 終

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