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THE GLOBAL  作者: YATA0401
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第五章 酸素という希望

教科書を読み終えた後も、俺たちは任務を続けた。


「資源回収を再開する。」


俺の一声で全員が動き出す。


レイ博士たちは周囲の調査を進め、特殊部隊Aチームは周辺の警戒を担当した。


数時間後。


研究回収班のコンテナには、鉄鉱石に似た未知の鉱石、高純度石油、数種類の植物サンプル、土壌、微生物などが次々と収納されていく。


「転送準備。」


「GE本部との転移回線接続。」


「転送開始。」


青白い光がコンテナを包み、一つ、また一つとGE本部へ送られていく。


そのたびに地下都市では歓声が上がっていることだろう。


人類にとって、一つひとつが未来への希望だった。


「これで主要な資源はほぼ回収完了です。」


レイ博士がタブレットを確認しながら言った。


「想定以上の成果ですね。」


フォックスが笑う。


「今回は当たりの世界線だったな。」


「まだ油断はできない。」


シャドウが短く返す。


その時だった。


ファルコンが遠くを指差した。


「……あれって何だ?」


森の奥。


木々の間から、巨大な銀色の円柱がいくつも見えていた。


近づくにつれ、その大きさが分かる。


一本だけでも建物ほどの高さがある。


「タンク……?」


俺たちは慎重に施設へ近づく。


フェンスには錆びた看板が残されていた。


『大気管理施設 第七貯蔵区画』


「大気管理?」


レイ博士が首をかしげる。


施設内は静まり返っていた。


機械だけが低い音を立てながら、今も稼働し続けている。


研究員が分析装置を取り出し、巨大なタンクへ接続する。


数秒後。


「……え?」


研究員の顔色が変わる。


「どうした?」


フォックスが尋ねる。


「信じられません……。」


研究員は画面を何度も見直した。


「このタンクの中身……。」


「酸素です。」


「酸素?」


ファルコンが聞き返す。


「純度九九・九%以上。」


「しかも……。」


研究員はタンク全体を見上げた。


「一基だけで数千トン規模あります。」


全員が思わず巨大なタンクを見上げる。


一本ではない。


二本でもない。


施設内には、同じ巨大タンクが何十本も並んでいた。


レイ博士が計算を始める。


数秒後、その手が止まる。


「全部合わせれば……。」


「何十万トン規模になります。」


フォックスが目を丸くする。


「そんな量、何に使うんだよ。」


誰も答えられなかった。


俺は通信機を取り出す。


「こちらハウンド。」


『オーバーウォッチだ。』


「新たな発見です。」


「巨大な酸素貯蔵施設を発見しました。」


通信の向こうが少し静かになる。


『……酸素?』


「はい。」


「純度は非常に高く、貯蔵量は何十万トン規模と推定されます。」


オーバーウォッチの声が少し強くなる。


『本当なら地下都市を維持できる量だ。』


「こちらでもそう判断しています。」


レイ博士が横から頷いた。


「転送は可能です。」


俺は通信を続ける。


「転送設備を起動します。」


『許可する。』


『地下施設側でも受け入れ準備を開始した。』


研究員たちは巨大な転送アンカーを設置し始めた。


通常のコンテナ転送とは違う。


超大型物資専用の設備だ。


「転送座標固定。」


「GE本部接続。」


「圧力安定。」


「転送可能です!」


レイ博士が俺を見る。


俺は頷いた。


「開始。」


次の瞬間。


巨大なタンク全体が青白い光に包まれる。


空間がわずかに歪み、数千トンもの酸素を収めたタンクがゆっくりと消えていった。


数秒後。


通信機から歓声が響く。


『成功です!』


『酸素タンク、地下都市へ到着!』


『漏れなし!』


『酸素供給システム接続開始!』


さらに別の研究員の興奮した声が聞こえる。


『地下居住区の酸素備蓄率が一二%上昇!』


『これで当面の酸素不足は大きく改善できます!』


オーバーウォッチも珍しく嬉しそうだった。


『よくやった。』


『これだけでも今回の任務は歴史に残る成果だ。』


フォックスが小さくガッツポーズをする。


「やったな!」


ファルコンも安堵したように笑う。


「地下のみんなが助かる……。」


俺も胸をなで下ろした。


だが、その時。


シャドウが施設の奥を見つめたまま言った。


「……妙だ。」


「何が?」


「酸素が多すぎる。」


その一言で全員の表情が引き締まる。


確かにそうだった。


この世界は森林に覆われ、大気も正常だ。


普通なら、これほど莫大な量の酸素を人工的に貯蔵する必要はない。


レイ博士も腕を組む。


「災害への備え……?」


「いや。」


別の研究員が首を振る。


「それにしては規模が異常です。」


「この量は国家備蓄どころではありません。」


俺は巨大なタンク群を見渡した。


まだ数十本。


いや、その奥にも同じタンクが並んでいる。


まるで、この世界が酸素を"集め続けなければならない理由"があるかのように。


「こちらハウンド。」


俺は再び通信機を開く。


「酸素の転送は成功しました。」


「ですが、新たな疑問があります。」


『聞こう。』


「この世界には、なぜこれほど大量の酸素が保管されているのか……。」


「その理由がまったく分かりません。」


通信の向こうで、オーバーウォッチは静かに答えた。


『……その答えが、この世界最大の秘密かもしれない。』


俺は巨大な酸素タンクを見つめる。


美しい自然。


澄んだ空気。


そして、必要ないはずの膨大な酸素。


W-001には、まだ誰も知らない真実が眠っていた。


第五章 終

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