エピローグ
「クロード様、聞いても良いですか?」
クロードの目が『何を?』と先を促す。
「クロード様はどうしてわたしをパートナーに選んだんですか?」
いる意味がなくていい……そう言っていたけど。
クロードに接する機会が増えるほど、それだけではない気がして気になっていたのだ。
言葉を探すかのように遠くを見つめていたクロードが、ぽそりと言った。
「……マナリーフを休ませてたって」
「⁈」
同級生を治癒薬まみれにしちゃったアレ⁈
なんであんな恥ずかしいことを今さら⁉
一気に体温が上がる。
「パートナーも探さずに一人で呆けてたし」
クロードは悪びれることなく淡々と続けた。
呆けてたなんて……あれは途方に暮れてただけなのに。
「成績とか人脈とか……他の人間たちは求めるものがわかりやすい。でも君はそうじゃなかった」
「おかしな奴だな……って思ったから」
あの時無表情の下でそんなことを考えていたのか……。
「わからなかったんだ。なぜ人は……君は、あんなに必死になるのか」
思わず溜息が出そうになる。必死がわからないなんて、まったく羨ましいかぎりだ。
だけど……。
「悩んで苦しんでジタバタもがいて。 その中でしか見えない大切なものもあるんですよ!」
「……そうだな」
クロードはどこか満足そうに呟くと、遠くを見るような目をした。
そんなクロードを見てリナリアがふと気が付く。
「あ……クロード様、課題も終わったことですし、これでパートナーは解消ですね。短い間でしたがありがとうございました」
そういって頭を下げ、くるりとクロードに背を向けて歩き出そうとしたその瞬間
「リナリア」
突然手首を強く掴まれ、リナリアは危うくバランスを崩しかけた。
何とか体制は保ったが、リナリアを掴む手が緩まる気配はない。
そのままクロードがすっと顔を近づけて来たかと思うと、耳元で囁いた。
「放すはずがないだろう」
まるで逃すまいとしているかのように……リナリアの細い手首に巻き付いたクロードの長い指に、より一層の力が込められた。
指先が痺れるほどに。
リナリアを見つめる、深く澄んだブラックサファイアの瞳……。
危うく見とれかけ、リナリアは慌てて
「くくくく…クロード様! 距離感! 接近しすぎ! ダメッ絶対‼」
クロードからひょいと離れ、顔の前に大きく両手でばってんを作る。
「洞窟であんなに抱きついておきながら……今さらだな」
「へ…変な言い方しないでください‼ アレは……場の勢いというか……」
「何故だ?」
「も~‼ 人のこと変わり者扱いしておいて、何でもわたしに聞くのやめてください‼」
その瞬間——
クロードが口の端を上げてクスっと笑った。
初めて見るクロードの柔らかい笑顔。
そのあまりの美しさに――
呆けたようにその笑顔を見つめるリナリアに、クロードは一層笑みを濃くし、彼女の頬を優しく包んだ。
「ありがとうリリ……君が、俺に世界を見せてくれた……」
「クロード様……」
……そんな顔してそんなこと言うなんて
反則です……
心地よい風が、まるで踊るように二人の間を通り過ぎていった。
リナリアとクロードのお話は一旦ここまでとなりますが
機会があったらまた彼らのお話を書きたいなぁと思っています
最後までお読みくださり、本当にありがとうございました
*hana*




