3. レッド選抜試験 ③
「あー、もう、なんかあきたな」
美少女☆神城がまたなんか言い出した。
「もういいや、自己紹介」
自分で言っといて、って思うだろ。
俺からしてみたら、いつも通りよ。
神なんよ、神。
神オブ神。
「まあ、いいか。言いたいことは言ったしな」
「ちょっと待ってよ、レミちゃん。言いたいことって、俺のクビ宣告しかしてなくね」
「お前、今度レミちゃんって言ったら、このレッド選抜試験も即失格、即退場だかんな」
「俺、これ失格になったらそのままプータローじゃないっすか!?」
「わかったら気をつけろ。いろいろと、な」
一瞬、レミ……いやいや、神城さんの目がマジになる。なんだ……、気のせいか?
*
俺達のいた豊橋駅近くのダイレンジャーの本拠地のはいってる水上ビルから、豊橋駅へと皆で歩いていく。
豊橋駅にはカルミアという商業施設がはいっていて、その上層にホテルアソシア豊橋がある。
俺達はカルミアを横目に、その奥にあるホテルアソシア豊橋のエレベーターに乗り込む。
神城さんがエレベーターに鍵をさしこみ、極秘コードを打ちこむと、エレベーターはホテルアソシア豊橋の地下へと移動する。
豊橋でヒーローをしているものなら誰でも知っている。そこには広々としたヒーロー専用のスタジアムがあるのだ。四方をどんなスキルも通さない特殊な防壁で覆われたスタジアムはヒーローの訓練場として最適だし、万一の時にはとっておきのシェルターになる。
「さて、レッド選抜の第一試験だ」
神城さんが呟き、皆の間に緊張が走る。
ヒーロー試験の一次試験といえば、定番は体力テストやスキル検定だ。
ただ常識を忘却の彼方に投げ捨てた神城さんに、そんな型通りの提案があるとは思えねえ。
ヘタをすりゃ、俺達の命にも関わる。
「バトル・ロワイヤルだ。お前ら、やりあっちゃえよ」
ほらな、こういう人なんだよ。
悔しいけどさ。こういうときの神城さん、一番輝いてんだよね。
超カワイイ。
「最後に立ってたやつがレッドだ。分かりやすいだろ」
「しかし、神城司令。それはもう最終試験では」
さすがにこれはおかしいと感じたのだろう火野さんが意見する。だめなのよ、神城さんに意見しちゃ。それはダイレンジャーの鉄則なんよ。俺もよく感情でかみつくけど。神城さんが決めたことを撤回することは、ぜったいない。
「うるせえ、火野」
もう火野呼びだよ。
「第一試験だろうが、最終試験だろうが、要はレッド1人選べばいいんだよ。1人立ってりゃいいんだよ。あとお前、私に意見したな。減点だ。ダイレンジャーでは私が絶対だ。逆らうやつはいらない」
これだよ。ダイレンジャーの掟、絶対王政。神城司令の権限がめちゃ強なんよね。
思わず火野さんも口をつぐむ。
「それでいい。うちに昔いた青木ってやつも、私によく意見しては減給されてたな」
「それ完全に俺のことじゃないっすか! もう神城さんにとっては昔の男なんすか」
「ややこしい言い方するんじゃねえ。今も昔も未来永劫、私がお前の女になることはない!」
みんなの前でそんなこと言わなくていいのに。
「ただな、青木。お前がこの試験で落ちたら、もうお前は私に会うことはなくなる。それをよく考えるんだな」
レミちゃんはよくこういう言い方をするんだよな。多分そういう言い方しかできないのだろう。やれやれ勝ち気な女も困るぜ。離れたくないのなら素直にそう言えばいいのに。
俺はストレッチを始める。
周囲の皆も距離を取り始める。
そうさ、神城さんがそういうならやるしかないのさ。
最後に首をくるっと回し、俺は構えをとった。
ブルーレンジャーの構え。両手を竜の咆哮のように前に突き出す。
いや、違うな。思い直して、両手を斜め上に突き出す。5人のド真ん中に立つイメージだ。
それはレッドレンジャーの構えだ。
やってやる。
そして、レッド選抜試験が始まった。




