14. 永遠のブルー
俺の全身を黄金の爆炎が包みこんでいる。
《黄金の爆炎》、まったく思いどおりにならないギフトで困っちまう。
豊橋公会堂で火野さんをぶっ飛ばして以来、何度試そうとしても、俺は《黄金の爆炎》を再現できなかった。
神城さんは俺の力の源を『下心』だという、けれど俺に言わせればそれは『純愛』だ。
油断していたガイアレッド――北条新を捕まえた時、神城さんがヘッドギアを介して、『そいつをぶっ倒したら、キスしてやる』と言った。
その瞬間だ。
いとも簡単に《黄金の爆炎》が天をも焦がさんばかりに火を吹いた。
「俺達は……ヴィランじゃねぇ、アンチヒーローだ!!」
その勢いで、俺はガイアレッドをぶん殴った。
これが純愛でなくてなんだというのだ!
俺はその勢いのまま、ガイアレッドに詰め寄る。《黄金の爆炎》をまとった俺はいわばスーパーマリオのスターモードだ。すべてのステータスが爆上げされる。このトランスモードの間はアトラスレンジャーの能力値と比較しても遜色ないと星乃博士をして言わしめた。
倒れているガイアレッドにもう一撃くわえようとするが、奴は光速で離脱した。
が、視える。動体視力も増している今の俺なら、ガイアレッドの動きが追える!
「下等レンジャーが! 調子にのってんじゃねえ」
多分この荒い気性が北条新の素なんだろう。
《疾風迅雷》は伊達じゃない。
さっきまでと比べれば、目で追えるし、なんとか身体も動く、それでもやはり速度は敵わない。
俺の攻撃はわずかな差で、ことごとくかわされ、カウンターをくらい続けて、徐々に俺は追い詰められていった。
ガイアレッド、こいつはやはり火野さんとは違う。強さだけは本物、最強の敵だ。
ガイアレッドの高速の蹴りをギリギリでかわそうとしたが、逃げ遅れたシロサイが視界の端に見えた。
俺はゴッド・フレアを《防御強化》にふり、すんでのところでガイアレッドの攻撃を捕らえたが、それでも光速の蹴りの力は凄まじく、石壁にめり込むまで弾き飛ばされた。
完全に意識が飛んだ。
俺の脳裏に、過去の映像が走馬灯のように流れる。
アカデミーを卒業し、俺は神城さんにひとめぼれして、土下座をしてダイレンジャーにいれてもらった。
俺の人生の走馬灯は、神城さんに始まり、神城さんに終わる。当然のことだ。
神城さんに認めてもらうため、死ぬ気で働きまくった。神城さんに尽くして尽くして、そして、ある日、「青木、お前、ブルーレンジャーになれ」と言われた。
「え、イヤです。俺、レッドになるのが夢なんで」
と答えたら、赤星さんに笑われた。
「いきなりレッドは無理だよ。まずはブルーで力をつけていくのがいいと思うよ」
そうだ、思い出した。赤星さんのフォローを打ち消すように、神城さんが言ったんだ。
「バーカ、お前は青木だから永遠にブルーだ」
あのとき、俺はそれを神城さんの軽口だと思った。
でも、全てを知った今、その言葉の重みを感じる。
アトラスブルーの裏切りで、神城さんは全てを失った。
ダイレンジャーでも、俺がなるまで、ブルーレンジャーは欠番だった。
――永遠のブルー。
俺は、その期待に応えなければならない。
いつかの神城さんの言葉がよみがえる。
「青木誠は、神城レミのもとでどんな指令に対しても一切の不平不満をもたず、奴隷の如き奉仕を約束する」
それは、神城さんとのヒーロー契約の文言だ。
「青木誠は、神城レミを生命をかけて守ることを誓う」
神城さんは強い女性だ。弱いところなんてカケラも見せない。それでも、それだけの苦しみの果てに、傷ついてないわきゃないんだ。
「青木誠は、何があっても神城レミを信じ、裏切らないことを誓う」
それは神城さんの祈りであり、俺の誓いだ。
俺は神城さんをぜっっってぇ裏切らねえ。
そして、神城さんを裏切り、傷つけた、かつてのアトラスブルー、北条新を許さねえ。
俺の全身の《黄金の爆炎》が再び燃え上がる。
「しつこい男は嫌われるよ」
「先輩の助言はありがたいっすけど、俺には絶対に裏切れない人がいるんでね」
「そりゃ、俺へのあてつけかい?」
「へえ、意外と言葉通じるんすね」
「残念だよ。後輩をかわいがろうとしてたのに。すっかりキライになっちゃった」
「お互い様なんで、大丈夫っすよ」
ガイアレッドの初動に合わせ、俺は先程シロサイを守ったときの感覚を思い出す。今までのように勢いだけで戦うのではなく、《蒼の爆炎》と同じように《黄金の爆炎》を操った。脚部に集め、《速度強化》に全振りする。
周囲の時間がゆるやかになった気がする。
俺はガイアレッドと同じように、光速の世界に足を踏み入れていく。
もっと速く、もっと速く。
「うおおおらららぁぁぁ」
俺は光の世界で、ガイアレッドを捕らえ、その足を止めた。それだけで全ての力を使い切る。もう指一本動かせねえ。それでようやく、ほんの一瞬の足止め。でも、それで十分だ。ガイアレッドを許せねえのは俺だけじゃない。
立ち止まる俺達の前で《黒き侍》が刀を構える。
「幾星霜、この刻を待ち望んでいた」
黒い稲妻のような抜刀が、ガイアレッドを打ち倒した。




