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永遠のブルー  作者: 結城 遼介
第二章 豊橋大決戦!

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13. アンチヒーロー


「君が新しいブルーかい? ずいぶん神城さんも趣味が悪くなったもんだ。君みたいなのを僕の後釜に据えるなんて」


 俺とブラック先輩を前にずいぶん余裕をかましてくれやがる。


「神城さん、言ってたぜ。俺の前任者はオイタが過ぎたんで、今度のブルーは顔で選んだってな」

『言ってないが』


 ヘッドギアから神城さんの不服申し立てが届く。


『まあ、まかしといてくださいよ。ああいうプライドの塊みてぇな奴は挑発に弱いんすよ』


 小声で、神城さんをなだめる。


「そうだ、そうだ。こんなことも言ってたなぁ。俺の前任、人間がちっちぇえみたいでね。今度は俺みたいな懐のでっけぇ人間を選ん……」


 気がついたら目の前に北条新がいた。

 すげえ形相だ。細長い目を見開いて充血してやがる。予想通りだが、若干効きすぎたかな。


「あんまし、調子こいてんじゃねえぞ、二番煎じが! 《疾風迅雷(スピード・マスター)》!!」


 音速を超える光速で動き回るガイアレッドの姿が捉えきれねえ。こいつのギフトのことは事前に神城さんから聞いていたが、アトラスレンジャーってのはどいつもこいつもピーキーなギフトをもってやがる。

 気づいたときにはもうその突進だけでふっ飛ばされてた。50mくらい飛ばされただろうか? 壁を突き破り、草原のようなところで土砂を巻き上げ、ようやく止まった。


「スピードってのはさ、そのまま力になるんだよね」


 それだけ吹き飛ばされたにも関わらず、次の瞬間にはもう隣にいやがった。腹を蹴飛ばされ、無理やり仰向けにさせられる。ニヤけた細目がこちらを見下してきやがる。


「豊橋くんだりの元ローカルヒーローが、国防を担うガイアソルジャーに敵うと思ってんの? 調子にのってんじゃねぇよ。だいたいお前ら、なんのつもりなんだ。国に楯突いて、ヒーロー様に立ち向かいやがって。やってることヴィランだぜ。わかってんのかよ」


 俺もそう思うよ。

 ……だけどな。

 俺の大切な人が言うんだもんよ。


――私たちはヴィランじゃない。無関係な人を巻きこみ、傷つけるつもりはない。私たちなりの正義を行うだけだ。私たちの敵がヒーローの仮面をかぶっているというのなら、私たちは、アンチヒーローだ。


 俺は北条新の足をつかむ。


「ん?」


 俺の全身を黄金の炎が包みこむ。


「俺達は……ヴィランじゃねぇ」


 《黄金の爆炎(ゴッド・フレア)》、思いどおりにいかねえギフトだってことはこの一月でよくわかった。だけどよ、こいつをぶっ倒さねえで、誰をぶっ倒すってんだ。神城さんを悲しませたこいつを、俺はぜってぇ許さねぇ。 


「アンチヒーローだ!!」


 俺がふっ飛ばされた距離だけ、ガイアレッドをぶん殴り、ぶっ飛ばした。

 ふと気がついたら、豊橋動植物園――のんほいパークのアフリカエリアがひっちゃかめっちゃかになってた。

 動物たち、無事でいてくれよ!


     *


「私がレインボーブリッジにたどり着いた時、すでにアトラスイエローはヴィランに捕まっていた」


 相変わらずの機械音声なので、ブラック先輩の感情はよくわからない。だけど、なんか悲しい響きを感じた。


「蜘蛛のようなギフトを扱えるヴィランがいて、蜘蛛の巣に、アトラスイエローは捕縛されていた。その周りには数多のヒーローが血を流して倒れていた。レインボーブリッジ戦線において、我々ヒーロー側は全滅させられていた。そして、その前にいるはずのない人物がいた。そのとき、スカイツリーにいるはずだったアトラスブルー、……北条新。彼が囚われのイエローの前に立っていた。私ははじめ、ブルーがイエローを助けに来てくれたのだと思った。でも、ヘッドギアをつけていない素顔のブルーの目を見た時、それが間違いだと気付かされた。彼の、北条新の目は狂っていた。この時がくるのを待っていたと言わんばかりに。彼は私を見ると、すぐにイエローに向き直り、次の瞬間にはもう手刀でイエローの胸を貫いていた」


 思い出したくもねえ過去なんだろう。

 当然だ。

 でも、頭の中に焼きついちまって、決して消せない。

 そんな感じの話し方だった。


「何が起きたのかわからなかった。ブルーに声をかけようとしたのだけれど、声にならなかった。ただブルーがこちらを見て、悪魔のような笑みを見せた。ブルーはゆっくりと私の方に歩み寄って来て、私のヘッドギアに血だらけの右手をなすりつけ、同じように私の右手に血をなすりつけた。ヘッドギアを介してアトラスレンジャー本部も、その映像を観ていた、はず」

「ああ、観ていた」


 神城さんもまた、感情を排した機械的な声だった。


「次の瞬間にはもう、アトラスブルーはいなくなっていた。事件が終わり、アトラスレンジャーが解散するまで、彼がその姿を見せることはなかった。私は心を砕かれ、気がつくと《黒き侍(ブラック・サムライ)》が暴走を始めた。《黒き侍(ブラック・サムライ)》は我が家系に伝わりし、相続系ギフト。その力の強大さゆえに、使役にはとんでもない精神力を必要とする。そのときの私に《黒き侍(ブラック・サムライ)》を使役する精神力はなかった。レインボーブリッジの破壊は実際に私の《黒き侍(ブラック・サムライ)》が行なったこと。そして、ヒーロー省長官である白宮英雄に取り押さえられた時、アトラスイエローの死は、私の行なったこととされ、私は……ヒーロー免許を剥奪された」


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