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永遠のブルー  作者: 結城 遼介
第二章 豊橋大決戦!

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11. 秘密結社『アトラス』


 恐竜みたいな着ぐるみの背中のチャックをブラック先輩に下ろしてもらう。

 まだ初夏とはいえ、着ぐるみで屋外のヒーローショーにでてると脱水で死にそうになる。


「先輩も早く脱いだほうがいいですよ。ほら、後ろ向いてください」

「ありがとう」


 相変わらず無機質な機械音声だが。この一月、一緒に行動するようになってわかったことがある。

 ブラック先輩は意外といい人だ。

 常にヒーロースーツを脱がないので、素顔は分からないが、気遣いもできるし、ちゃんと挨拶やお礼の言葉を伝えてくれる。当たり前っちゃ、当たり前なんだが。神城さんと一緒にいると、そんなことが当たり前ということを忘れてしまう。神城さんの場合、御尊顔を拝見させて頂くだけで十分な見返りなのだが。


 ヴィランの着ぐるみを脱いでも、いやむしろ脱いだあとの方がブラック先輩はヴィランに見える。

 全身を真っ黒な機械式のヒーロースーツが覆っているためだ。


「ブラック先輩、こんな炎天下で、そんなスーツに着ぐるみって死んじゃいません?」

「大丈夫だ。このスーツには内部の温度調整機能がついている。砂漠でも南極でも生きていける」

「ええっ。ズルっ。俺もそれ欲しいっす」

「星乃博士に頼めば、近いものは作ってくれると思うが。このスーツはもともとアトラスレンジャーのときのものだから、今の設備では同じものは作れないだろうな」


 アトラスレンジャー。

 それがすべての始まり。


     *


「もともと私のギフト《未来予知(ヴィジョン)》とアトラスレッドの赤星猛の《不死鳥の流焔(フェニックス・メテオ)》の組み合わせは最強だった。私が《未来予知(ヴィジョン)》で未来の映像をひろいあげ、先手をうって戦略をたてる。それを赤星率いる最強のアトラスレンジャーが実行していく。負けるはずがなかった。今考えても、あれほど最強の布陣はなかった」

「赤星さんが、あの伝説のアトラスレッド!? え、だって、赤星さん、東京進出間違いなしとか言われてたけど、その前に引退になって……」


 俺のヒーローとしての師匠ともいうべき赤星さんが、まさか伝説のヒーローだったなんて。

 確かに赤星さんならそれくらいの地位にいてもおかしくない。あの人に勝てるイメージなんて今の自分でも全然できない。

 赤星さんの強さを身にしみて感じているからこそ、そして神城さんの恐ろしさを知っているからこそ、まったくわからねえ。

 2人がいて、負けるわけねえだろう。


「アトラスレンジャーは国防最前線で戦っていたからな。プロフィールは非公開だった。お前みたいな自己顕示欲の塊みたいなフザケたメンバーもいなかったしな」


 あら、辛辣。


「ちょ、待ってくださいよ、神城さん。俺だって、そのくらいのことわきまえてますって」

「んじゃ、お前、アトラスレンジャーになったとして、内緒にしてられるか?」

「辞令もらった瞬間に親類縁者手当たり次第に電話、メールしまくりますね」

「ほらな、こういう奴なんだよ」

「うわ、こっわ、誘導尋問ってやつっすか」


 ガンバルマンピンクとサムライブラックがため息をつきながら、頭に手を当てている。

 なんだ? 俺が悪いのか?


「あの」


 それまで沈黙を保っていたアカデミー上がりの新人くんが手を挙げる。


「疲れたんで、どっかで休ませてもらえませんか?」


 この流れで!!

 ウソだろ!? おいおい、俺だってまだ若者の部類だと思ってるけど、イマドキの若者どうなってんの!?

 こういう奴が退職代行とか頼むんだろうな。


「ごめんごめん、駆くん、こっちで休もっか」


 慌てて、神城さんの顔色を伺いながらガンバルマンピンクが新人を奥の部屋に連れて行った。

 俺が何か言う前に、神城さんが「あいつのことはとりあえずほっとけ。あんな奴だが、あいつの力もいずれどうしても必要になる。今は待つしかない」


 駆って言ったか?

 あんな新人があんだけ自分勝手に動いて怒られないなんて。あいつがいったいどれほどのもんだってんだ。


「ってか、アトラスレンジャーって、神城さんと赤星さんとブラック先輩、あとさっきの花村さんがいて……、それだけチート能力持ちが集まってて負けるわけないでしょうが」


「負けたんだ」


 こんな風に神城さんが敗北を認めるところをはじめてみた。


「相手は世界に1人しかいないレアギフト《時間跳躍(ループ)》の持ち主、白宮英雄だ」

「白宮……ってまさか、ヒーロー省長官の!?」


 ちょ、待てよ。長官がラスボスって。大物すぎだろ。

 しかも、ギフトが《時間跳躍(ループ)》って、それは《未来予知(ヴィジョン)》と並ぶ最強の7大レアギフト(アルティメットセブン)の1つだ。


「そうだ。あいつは《時間跳躍(ループ)》を使い、何度も過去に戻り、数多の世界線で私とアトラスレンジャーと戦い続けた。そして、私たちの全ての勝ち筋を読みきり、とうとう私たちを打ち負かした」

「そんな……、時間操作系ギフトの私的使用は世界的犯罪じゃないっすか」


 神城さんは淡々と語るが。

 胸の中には計り知れない想いがこめられているように思えた。

 俺の知らない時代の神城さんの話。

 やべえ、尊すぎる……。


「この世界は、はじめてアトラスレンジャーと私が、白宮英雄に負けた世界線だ。その責任は私がとらないといけない」


 神城さんが過ぎ去りし時から未来へと目を向ける。その視線はもう揺らがなかった。

 強え人だな。


「ここは、私が作った秘密結社『アトラス』。どうする、青木? 今ならまだ引き返せるぞ。すでに世間じゃ、指名手配中だろうが」

「いや、それもう引き返せないっすよね? どの道を歩いても犯罪者なら、神城さんと同じ道を歩いていきますよ。で、俺は何をしたらいいんですか?」


 神城さんはとびっきりの笑顔を見せる。

 この世の全てが神城さんにトキめいちゃう可愛さだ。この笑顔があれば、他にはなんにもいらない。


「相手がヒーローなんだからやるこた決まってるだろ。ヒーロー潰しだ」


 それってヴィランじゃね!?


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