9. 男にはやらなきゃならねえときがある!!
「お前の《蒼の爆炎》だが。ずっと謎だった。こないだみたいにわずかなバフ効果しかないこともあるし、時に天才だった赤星をしのぐような力を示すこともある。私はそのギフトをひそかに研究させていた」
おいおいおいおい、マジで語り始めたよ、この人。いやいやいやいや、下の人たち、そんな悠長に待ってくれませんって。
めちゃくちゃにじり寄ってますって。
火野さんなんて、もう階段を登り始めてますって。
「いや、あの、ちょっ、神城さん!?」
「時間がないのはわかってる。真面目に聞け。いいか、青木、お前のギフトはとんでもな……」
「とんでもない、っすか。いやー、嬉しいっすね。神城さんにそんなふうに言われると」
「違う! とんでもなく、……不謹慎だ。こんなギフト見たことがない」
「は? 不謹慎、……と言いますと?」
「お前のギフトは、下心が増すほど強くなる」
「は? 本気ですか?」
「こっちのセリフだ。ドアホウが。とにかく、今からお前の力を最大化する。私の言うことに全て「はい」と答えろ、心の底から、だ」
「はい」
「青木誠は、神城レミのもとでどんな指令に対しても一切の不平不満をもたず、奴隷の如き奉仕を約束する」
いきなりとんでもねえことを言い出しやがった。
ってか、俺の下心に気づいてて、それをもてあそんでんだから神城さんもたいがいだよな。
「……はい」
「心の底から願え。強くなりたくないのか! 火野をぶっ飛ばしたいんじゃないのか!!」
「はい!!」
レッド選抜試験のとき、火野さんにぶん殴られたことを思い出す。
そうか、あのときはブルーレンジャーをクビになってたから――神城さんとの契約がきれてたから、力がでなかったのか。
え、ぜったいワザとだよな。
神城さん、腹抱えて笑ってたよな。
「青木誠は、神城レミを生命をかけて守ることを誓う」
「はい!!」
「青木誠は、何があっても神城レミを信じ、裏切らないことを誓う」
なんか詐欺師にはまるパターンな気はするが。神城さんにだまされる人生なら本望か。
やってやる。こんなもんでフルマックスの力が手にはいるんなら、悪魔とだろうが魔王とだろうが、契約でも何でもしてやるさ。
「はい!!!」
「神城レミは、青木誠とヒーロー契約をここに締結する!」
俺の全身に今まで感じたことのない力が湧き上がってくるのを感じる。
「おい、青木くん。君にはもう関係のないことだ。神城司令をこちらに引き渡せ」
火野さんが階段を上がりきり、神城さんを捕まえようと手を伸ばす。
俺はその火野さんの腕が神城さんに届く前に掴む。
「おい、邪魔をするな。青木くん、こないだの試験のときに力の差はわかっているだろう。言っておくが、あのときの私の力は全然本気じゃなかったんだぜ」
火野さんの全身を炎が包む。その炎がジリジリと俺の手を焦がす。
俺は神城さんと目を合わせる。
神城さんは頷き、「蹴散らせ」、と言った。
俺は了解と呟き、《蒼の爆炎》を発動する。
今まで感じたことのない力が、体の底から湧き上がってくる。
数日神城さんに会えなかった、もう二度と会えないと思っていた、でも会えた、そして必要とされた。そんでもって、ぶっ飛ばしたいと思っていた相手が目の前にいる。神城さんの指令は、そいつを蹴散らせ、だ。
燃え上がらないわけない。
俺の全身を覆う爆炎が、蒼から白へ、そして黄金へと変化する。
「本気じゃなかったって!? それはこっちのセリフだ!!」
火野さんの目が驚愕で見開かれる。
「⋯⋯なんだ、その力は」
「ふっ、愛の力だ」
《黄金の爆炎》とも言うべき力の全てを拳に集める。
「くっっ、燃やし尽くせ、《炎の厄災》」
火野さんの全身から炎が噴き出す。
思わずため息がでちまう。俺はずっと赤星さんと一緒に戦ってきたんだ。こんな程度の炎なんて、なんとも思わねえ。
――だけどな、
「神城さんがヤケドしたらどーすんだ、ボケがあああ!!!」
《黄金の爆炎》こと俺の拳から放たれた黄金の光が《炎の厄災》を飲み込み、そのまま火野さんをぶっ飛ばす。
「ぐあああああああああ」
火野さんはそのまま大階段下まで軽々飛んでいき、石畳にクレーターを作り、めりこんだ。
とんでもねえ力だ。
あの火野さんがまるでザコだ。
愛って罪だな。
それを合図とでもいうように、サムライブラックが新人を抱えて、こちらにひとっ飛びでやってくる。
神城さんを見ると、彼女は首をふり、「あいつは味方だ」と言った。
「え、いつから」
「はじめから、サムライブラックは私のスパイだ」
そういうことはちゃんと言っといてくれよ。
俺の隣にサムライブラックが並び立つ。脇に新人くんを抱えている。新人くんの立場は今はよく分からない。ただなされるがまま、抵抗する気はないらしい。
神城さんが俺達の前に歩み出て、階段下のうじゃうじゃいる警官連中にがなり立てた。
「今の力をみて、立ち向かうやつはかかってこい。うちのヒーローが相手になってやる」
よくわかんないけど、気がついたら俺は世界ってやつと戦うことになってた。




