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昔話
この章は地の文が、プロローグの記者になっています。
「その人に助けられてね。そうして、気づいた時には村からずっと離れた町の病院だった。何日したら警察が来て、村で起こったことを話したわ。村で生き残っていたのは私と折原だけだった。何日も飲まず食わずだった折原は衰弱していたのね。取り調べ中に心臓発作で死んだ。なんの調書もとれないまま、折原を犯人にしてこの事件はお終い」
長い昔話は、そこで終わった。正直拍子抜けだった。日向朝子が語ったのは、公にされている事件のあらましとほぼ同じだった。まぁ、内容の焼き回しなんてよくあることだ。晩年の本人が語ったとタイトルをつければ、少しは目を引くだろう。
「本日はありがとうございました。早速、本社に帰って記事にしたいと思います」
席を立ち、一礼すると朝子がクスリと笑うのが聞こえた。
「あら、今日は真実をお話しすると言ったのに。もう帰られるんですか?」
その言葉に顔をあげる。
「それは……どういう?」
「言葉の通りよ。あの夜本当は何があったのか。教えてあげると言っているの」
「知っているんですか?」
「ええ、ワタシはね。知っているのよ。全部」
再び椅子に座り直す。朝子はそれに微笑んだ。
死にかけの老婆とは思えぬほど、朝子は妖艶に笑っていた。
次回真相編、第二章スタートです。




