理由
「私はね。殺したのよ……晴太を」
私は、話した。折原に過去のことを、この村の因習を。
話したってどうにもならない。晴太が戻ってくるわけでもない。でも、折原は私の話を何も言わずに最後まで聞いてくれた。
たくさん泣いたから、喉が痛い。鼻や目が痒い。手首で顔をこすって、息を吐いた。呼吸音だけの沈黙の後。折原は首をゆっくりと、なんども横に振った。
「朝子ちゃん。君は晴太くんを殺してはないよ」
優しい。諭すような声。でもきっと、折原ならそんな安い慰めのセリフが出るだろうと思ってた。
「……事実だよ。私は手を離した。離れたんじゃない。離したのよ」
「それは君がまだ小さくて……力が……」
「あんたの見解はどうだっていいのよ。私が殺した。ちゃんと意思を持って。そうじゃないのいけないの」
馬鹿みたいな理由でこの世に産み落とされた晴太。馬鹿みたいな理由で 村中から責められ疎まれて、馬鹿みたいな理由で持ち上げられて、馬鹿みたいな理由で死んでいった。
折原はしばらく黙っていたが、俯いてからぽつりとつぶやいた。
「そうか。君は、晴太くんを殺してあげたことにしたかったんだね」
言われて、喉の奥が疼いた。
また泣きそえなのに、私は笑ってた。口元を歪めて、目を細めて。精一杯の虚勢だった。
「そうだよ。私は晴太を殺してあげたの」
「そうか」
「そうだよ」
「そうだね」
折原はそれ以上何も言わなかった。
そうよ。晴太は不幸な事故で死んだんじゃない。自ら命を経ったんじゃない。私が殺したんだ。
日向として、晴太を殺したんだ。月見里として晴太は死んだんだ。
私たちは私たちが生まれてきた理由を真っ当したんだ。穢らわしい親たちとは違う。私たちは正しかったんだよ。晴太。




