叫び
そこからは覚えていない。
気がつくと、部屋の布団で寝ていた。
私は、崖の上で倒れていたらしい。雷で燃えたあの木は、雨で早々に鎮火したが、煙はもくもくと狼煙代わりにあがっていたらしい。
山火事を心配した村人は、それを見に来て私たちを見つけたという。
私が殺した。起きぬけに告げると、祖母は息を呑んで。困ったような顔をしたが、私を抱きしめて「よくやったわね」と言った。責ではない。賛だった。とても気持ち悪かった。
その日の夕暮れにかんかんと村の鐘が鳴った。
晴太の葬式だ。
私は見に行った。布団を抜け出して。
あの木陰のあった崖へと向かう。あそこかなら村が眺望できる。
裸足のまま山を登る。小石や枝で足の裏がたくさん切れた。
晴太が死ぬ瞬間を思い出して、何度か吐いた。
それでもふらふらと登る。
崖の上まで辿り着き、村を見下ろす。
墓場まで向かう道に黒い豆粒ような人々が、ぞろぞろ列を作ってな歩いていた。
棺桶に入れられた晴太が、運ばれていく。
ああ、行かないで。
行かないでよ。私を置いていかないで。
「あーーーー!!あーーー!あーー!」
私は叫んだ。なんども何度も。声が枯れてもずっと叫んだ。誰も振り向きもしないけど。
晴太に届くようにと。
私が晴太を殺した事実は、隠されもせず、村の連中の知れることになった。
晴太を殺した私を祖母は誉めた。
月見里は責めもしなかった。
村は、晴太なんてまるで最初からいなかったように。誰も話題にもしなかった。
ただ父だけが、私を憐れむように見つめてくれた。
気持ち悪かった。村の全部が気持ち悪くなった。
私はこの気持ち悪い村が大嫌いになった。




