同調
その日は曇天だった。灰の雲は今にも大粒の雨粒が降ってきそうで肌寒かった。
「朝子ちゃん。一緒に帰ろうよ」
「うん。いいよ」
その頃の私にはまだ、友達と呼べるものがいたと思う。にこやかに挨拶を交わし、教室を出る。
明日の給食の話や綺麗な花が咲いている場所がどこかなんて、そんな他愛もない話をしながら歩く。その時間はとても楽しかった。
「それでさ。その時綺麗な石があって……」
「えー。見たい、どこにあったの」
言いかけて、友人の目が遠くを見ているのに気がつく。何かとその視線を追うと、道の少し先で男子が数人何かを取り囲んでいた。
「カラスかなにかケンカでもしてるのかな?」
「うーん、見に行ってみようか」
そろりと近づく。人垣はガヤガヤとなにか口汚い言葉を罵って、ニヤニヤと何かを見つめている。
人垣の中心には晴太がいた。
その姿は服が裂け、半裸で、至る所から血が滲んでいる。
男子の一人が人垣から抜け、晴太の目の前に躍り出る。
「気持ち悪いんだよ。お前。汚い子供のくせに」
そう言って、その男子はうずくまったままの晴太の腹を蹴っ飛ばした。
晴太の口から何か出る。血の混じった吐瀉物が出る。
「こいつ吐きやがった」
「うぇっえー」
「えんがちょ!」
きゃっきゃと囃し立て、逃げるように男子は晴太の横を駆け抜けていく。
伏したままの晴太に不安が募っていく。駆け寄ろうと踏み出した矢先。
「気持ち悪い」
そんな言葉が聞こえた。
振り返ると、友達が冷たい目で晴太を見下ろしていた。
「気持ち悪いね。朝子ちゃん」
それはきっと。同意だったんだと思う。それでも私は、その時の私は自分に言われたんだと思った。
気づくと私はその友達を突き飛ばしていた。
友達は派手に転び、大きな声をあげて泣いた。私も泣きたかった。でも涙は出てこない。何故だか涙が出てこない。ただ走ってその場から抜け出した。
家に飛び込んで押し入れの布団に潜り込んでから声を立てないように泣いた。
次の日、謝った。
友達は許してくれた。
でも、もう。その子と居ても楽しくなかった。




