【閑話】平原の狼3
「ふぅ、やっとここまで戻って来れたな」
リフィアと共に歩いていたギリム達はある場所で立ち止まる。
そこには焚き火跡が残っていて荷物が散乱しており、二匹のゴブリンの死体が落ちていた。
一通り荷物を漁った後、ギリムは大きなため息をつく。
「さすがにほとんど荒らされちまってるか・・・」
「仕方ないですね。ここで野営しているときに、ゴブリンたちが襲って来たんでしたから」
「初めは三匹だったから戦えてたのにいつの間にか囲まれてたんだよねー。なんとかギリムが突破口を開いてくれなかったら、逃げることすら無理だったよ」
「ああ、さすがにあの状況じゃCランクパーティでもきついだろうな。逃げれただけでも奇跡ってやつだ。それにこいつが来なかったら、それこそ誰か死んでてもおかしくないからな」
ちなみに全部で十匹以上はいたらしく、追ってきたゴブリンたち以外はここで荷物を漁ったようだ。
「この子には感謝しても足りないぐらいだよ。まさに命の恩人、いや恩犬かな?」
ラーファはそう言いながらリフィア前でしゃがみ、その頭をなでる。
リフィアは撫でられる事に抵抗はあるものの、目を細め素直に撫でられているが不穏な気配を感じ取り、その気配の主であるラウから距離を離した。
「うぅ~、なんで逃げるんですか~。私も撫でたいだけなんですよ?」
「ラウの場合は、撫でるだけじゃ収まらないって分かってるんでしょうね」
そんな謎の戦いをしていると、荷物を抱えたギリムが戻ってきた。
「使えそうなもんは拾ってきたが、食料はほぼ全滅だな」
「そりゃあ仕方ないね。急げば明日には街に着くだろうし手持ちので何とかするしかないね。申し訳ないけど君も我慢してもらうことになるよ」
「街に着けば美味いもん食べさせてやるから、俺たちは食わないでくれよ?」
こればっかりどうにもならないと分かっているので、リフィアは気を落としながらも頷く。
再び街へ向けて歩き出した一行だが、ラウがふと思い出したように
「あれ?そういえばどうやってウルフさんを街の中に入れるんですか?」
「「あっ」」
その言葉に思わず立ち止まり声を出す二人。
「そういえば考えていなかったわね」
「俺もだ。・・・いくら大人しくても魔物だしな。普通は街の中に入れることなんてできねえか」
「せめて使役者がいれば良かったんだけどねぇ」
「ウルフさんの飼い主はいないんですか?」
ラウにそう問いかけられて少し考えるような仕草をとった後、リフィアは自分の袋からカードのようなものを取り出し、それを咥えてラウへと差し出す。
「これは・・・ギルドカードでしょうか?」
「ギルドカード?なんでそんなもんをこいつが?」
「ええと、とりあえずなんて書いてあるか見てみますね。名前がリフィアさんで年齢が十三、職業は使役者ですね」
そうこのカードはリフィアの物であり、職業は話を聞いていた時に変更できるようになったので、ジョーカーを使って変更しておいたのだ。
「ということはこのカードの持ち主が、この子の飼い主ってこと?」
「そうだろうが、飼い主のカードを持っているってどういうわけだ?」
「確かに気になるけど、私が思いついたのは一つなんだよね・・・」
「・・・ああ、なるほどそういうことか」
「何か分かったんですか?」
「大体な。可能性があるってだけだがこれに間違いないだろう。・・・簡単に言うとだな、こいつの飼い主は今はいないってことだ」
それを聞いてもいまいちピンと来ないのかいまだに首を傾げているラウだが、リフィアはどういう風に勘違いしているのか予想できた。
しかし勘違いしててくれた方が楽だし、説明も今はできないのでそのままにしておく方がいいと思い、放置しておいた。
「とりあえず、これがあれば何とかできそうだな」
「私たちの誰かがこのリフィアって子として振る舞えばいいんでしょう?」
「ああ、そうだが誰がやるかは決まってるようなもんだぞ」
そう言ってギリムはラーファを見る。
「えっと、私がやるの?」
「当たり前だ。リフィアってやつの年齢は十三。この中でお前以上の適任はいないだろう?」
「私よりもラウの方が年下なのよ?」
「年じゃなくて見た目がちょうどいいんだよ」
確かに年齢はラーファの方が上だが、見た目は誰がどう見てもラウの方が年上に見える。
リフィアも話を聞くまで分からなく、話す態度でラーファが年上なのかと思えるレベルだ。
「どうせ私は子供体型ですよー。気にしてないですよーだ」
「大きい方が困ることが多いですし、私はラーファが羨ましいと思いますが?」
「なに?嫌味なの?そうよね、私には無いそんな大きなものを持ってるもんね。男の視線を独り占めしてるもんね」
なにやらブツブツと小声で言い始めたラーファだが、よくあることなのかギリムはリフィアにカードを返し、さっさと無視して歩き始める。
リフィアもその悩みは分かるが、自分にはまだまだ伸びしろがあるだろうと思いギリムを追いかけた。
あれから何事もなく途中で休憩なども入れながら歩き進めると、川にたどり着いた。
日も落ちてきたのでここで一晩休憩するようだ。
「あー、やっと休めるー」
「魔物も現れなかったんだから、だいぶ楽できたはずなんだがな。どうしても気を張ってしまって余計に疲れた気分だ」
「ウルフさんは全然疲れてないみたいですけどね」
「魔物なんだから体力は俺たちと全然違うからな。俺が準備しておくから二人は川で汚れを落として来い。あとウルフ、すまないがお前は二人を見ててくれるか?」
リフィアが頷いて了承すると「よろしくな」といってギリムは作業を始めた。
その日の夜、ギリム達はローテーションを組んで夜の見張りを行った。
ギリムとリフィアは一人で、ラウとラーファは二人で見張りを行うことになっていた。
しかし、ギリムは自分の番の時間ではないが物音のせいで目が覚めてしまう。
「むう?うるせえな何の音だ?くそ、朝までゆっくり寝たかったのにな」
ギリムは周りを見渡すが、音の原因は近くではないようで何事もないようにラウとラーファは眠っている。
そう、この二人はだ。
「・・・っ!おい!ラウ、ラーファ起きろ!」
「んぅ?なんですか気持ちよく寝てたのに」
「なに?何かあったの?」
寝起きのせいかラウは眼をこすりながら、ラーファはすぐに目が覚めたがまだ現状を理解できてないようだ。
「あいつが、ウルフの奴がいないんだ」
「へ?ウルフさんが?今はウルフさんが見張りの時間でしたよね」
「ああ、今いないってことは何かあったんだろう。さがすぞ」
「ギリム!こっち来てみて」
現状を話しているとラーファが何かを見つけた様で、手を挙げて呼んでいる。
「どうした?」
「たぶんこっちじゃないかな?ほら見て、足跡があるでしょ?これあの子の足跡だと思う。」
ラーファの言う通り、ウルフのものと思われる足跡が川の上流の方へ向かって続いていた。
ギリム達はその足跡を辿っていくがあるところで途切れていて、代わりに靴の足跡が続いている。
確実に何かあったと彼らは確信するが、今はこの新しい足跡を辿ることにしたようだ。
そしてたどり着いた場所、そこには何かの争った跡と飛び散った血が落ちているのみだった。
これにて閑話終了です。
今日中に投稿する次話からリフィアの視点に戻りますので、よろしくお願いします。




