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【閑話】平原の狼2

 リフィアはゴブリンと武器を袋に入れていく。

 見た目は小さな袋だが、倍以上のゴブリン達をすべて収納してしまった。

 回収し終えれば後は楽しみの時間だ。

 なにせ目の前には餌を持った人間達がいる。

 リフィアが人間達に視線を向けると、一瞬ビクッとしたが腰が抜けて動けないようだ。


 まあ、動けないなら勝手に貰っていこう、と思いリフィアは彼らに近づいていく。

 ある一人の女性に近づいたリフィアは、鼻を近づけて匂いを嗅ぐ。

 やっぱり彼女が持っているみたいだね。と確信し、思わず喉を鳴らしてしまう。

 息が詰まっているかのように荒い呼吸を繰り返す女性を無視して、リフィアは女性の肩から掛けられた鞄を開けようとする。

 しかし今の姿ではあけづらく手間取っていると、女性もさすがに狙いが自分ではないと気づき


「え、ええっと。こ、これが欲しいの?」


 と鞄から干した果実を手に乗せて、リフィアに差し出すように手を持ってくる。

 やったー!甘味だー!と暴走しかけているリフィアは、果実に食らい付く。

 女性は突然口を開けたリフィアに「ひっ!?」と悲鳴を上げたが、それに反して体は動かなかった。



 手に乗った果実を全て食べ終わり、名残惜しく思わず女性の手を舐めてしまう。

 この姿の時は犬のような行動をとってしまうリフィアは、一度本気で犬のままで生きてしまおうかと思ってしまった時点で、今更な話だろう。

 リフィアがもうないのかと女性を見上げると、「うぐっ」と呻き悔しそうに首を横に振る。

 そっかー。とリフィアがしゅんとすると、「何これ可愛い!」と言ってしまうのは仕方ないだろう。


 そんなやりとりをしていると、残りの二人もいつの間にか復活していて何やら話をしている。

 いくら果実に夢中だったとしてもそこは狼の耳、二人の話はリフィアは全て聞いていた。

 今の状況について話し合っていただけみたいなので、完全に無視していたが。

 

 久しぶりに果実をを食べれたので、もう用は無いとばかりに離れようと思っていたリフィアだったが、気が付けば果実をくれた女性に捕まっていた。

 リフィアが離れようと背を向けたら突然抱きついて来たのだ。


 至近距離だったため避けられず、かといって無理やり振り解いて怪我でもさせてしまっては申し訳ないので、なすがままになっている。

 男ともう一人の女性に説得されても、


「絶対連れて行く!ほら見てよっ、この可愛い顔!毛はそこらの犬なんかには負けないぐらい柔らかいし、触ったら絶対やみつきになるから!」


 と、聞く耳持たずである。


 ちなみにこのリフィアを捕まえている女性の名前はラウ、男はギリム、もう一人の女性はラーファというらしい。

 装備からしてラウが弓士で、ギリムが剣士のようで、ラーファは短剣を持っているので探索者か魔術師のどちらかだろうとリフィアは推測した。

 どう考えてもバランスがいいとは言えないパーティだが、仲の良さから付き合いが長いことが伺える。


「というか、そいつ本当に野良のウルフなのか?いくら何でもおとなしすぎるし、さっきの戦い方なんて普通の魔物じゃありえねえぞ」

「そうだよ。たぶん誰かのテイムした魔物なんでしょ。近くに飼い主もいるかもしれないし、それだったら連れてくことなんてできないわよ?」


 ギリムの言葉にラーファが相槌と推論を重ねる。

 この二人からしてみれば、誰かの所有物ならお礼も言っておきたいが、もしテイムされていなかった場合、次に刃が向くのは自分たちなのだから離れれるなら離れたいものである。


 しかし、ラウは意地でも連れていきたいのかあれこれと屁理屈をこねて離そうとしない。

 結局折れたのはギリム達の方だった。


「はあ、・・・どうやらそのウルフはこっちの言葉が理解できてるみたいだし、そいつに直接聞いてみればいいんじゃないか?実際連れていければ道中安全かもしれないし、悪い案でもないかもな」

「それに連れて行くにしたって、その子が嫌がれば引きずってでも連れていくつもり?私たちにはそんなことできる力は無いよ?」

「うぅ・・・わかりましたよ。さすがにこの子も無理やり連れていかれたくないでしょうし、聞いてみた方がいいですね・・・」


 やっと話し合いが終わり、名残惜しそうなラウから解放されたリフィアは軽く体を振るう。

 その様子でさえラウにとって至福になるようで、「かわいい~」と口に出している。

 

「さて、ウルフさん。私たちと一緒に行きませんか?いえ絶対行きましょう!」

「だ・か・ら、脅迫みたいになってるでしょーが!」


 ラウの理性はすぐに消え、身を乗り出して声を荒げるがそんなラウをラーファが頭を小突いて止める。


「あうっ。痛いですラーファ」

「あんたが悪いのよ?助けて貰った上に連れていくとなったら、さらに助けてもらう可能性もあるの。どちらかと言えば頼み込む側になるんだから」

「わかってるんですが、どうしても抑えきれないんですよ」

「少しは抑える努力はしてるのよね?」


 突然始まった漫才にリフィアは当事者でありながら、我関せずの態度で欠伸をしながら眺めていた。


「いつまでも馬鹿なことやってんなよ・・・ほらそいつも呆れてんぞ」

「あぁ、欠伸してる姿も可愛い!」

「・・・こいつはもうほっとくか」


 すぐさまトリップするラウを無視して話を進めることにしたようだ。


「改めて聞くとしようか。俺たちと一緒に来てくれないか?こっから少しした場所にある街まででいいからさ」

「お願い!見ての通りボロボロでさ、ついて来てくれると助かるんだ。食べ物も分けてあげるから!」


 ラーファの最後の言葉にリフィアが思わず反応し、それに気づいたラーファが干し肉エサを取り出しリフィアの前で左右に動かす。

 干し肉の動きにリフィアが釘づけになっているところにさらなる言葉を重ねる。


「ほう、これが欲しいんだね。今はあまりないけど街に着いたらもっと美味しいの食べさせてあげるよ。どう?来てくれる?」


 リフィアは当初の予定などどこに行ったのか、勢いよく首を上下に振ってしまう。

 

「よっし!貴重な戦力確保!」

「エサで釣るとはなかなかひどい話だな」

「いーじゃない。私達は強い味方を得て、この子は食べ物を食べられる。どっちも得する関係で、しかもこの子だって嫌々って訳じゃないみたいだし」

「まあいいか。そんじゃこれからよろしくな!」

「よろしくねー!」

「・・・へ?なに!?ついて来てくれるの!?やったー!」


 正気に戻った?ラウがすぐさま状況を理解しリフィアに抱き着こうとするが、リフィアは避けてすぐに距離をとる。


「嘘っ!?なんで避けるの!?触らせてよー、その体に顔を埋めさせてよー」

「いい加減にしなさいよラウ。ごめんね。こいつはしっかりと叱っておくから」

「え?ちょっと!せめて一分。いや一秒でいいからぁー!」


 そうしてラーファに引きずられていくラウを、ギリムと二人でリフィアは見送った。


「・・・こんな騒がしいパーティだが改めてよろしくな」


 ギリムはそう言ってリフィアの頭にぽんっと手を置く。

 リフィアは返事の代わりに一つ鳴いた。

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