持たぬ者か持たざる者か
ルゥさん、ついに、やっちまいます!!(やれやれ!!)
エディソン、ウィー、二人の息を呑む音が聞こえた。
「まあ、とりあえず座ってくれ」
騎士団長様の促しを無視し、目の前まで進む。
「御説明を」
ルジは鋭い目付きで見下ろした。
「なんだ、苛立ってるな」
「説明次第では、私は貴方を許しません」
「ルフェ、」
宥めるディートに、構わないと言いながら笑う騎士団長様。
「お前は、何を知りたい?」
「私を利用する真の目的を」
「真の目的ねぇ…」
顎に手を当て、態とらしく思案顔をした。
「イロイロとあるんだがなあ、ま、今回の件に関して言うならば、”とある”集団がいてな。我が国としては、是非にも尻尾を掴んでおきたいと思っている」
とある集団…ルジは眉を顰める。
「ソイツらは、規模も、本拠地も、動機も不明。長らく御伽話の類だと思われていた存在だ」
…また…此処でも御伽話か。
「だが、近頃、神出鬼没な活動が度々報告されている。しかも、どういう訳だかお前の周辺をウロついていると来た」
コレを利用しない訳にはいかねぇだろ?とニヤつく。
「ーーなあ、ルフェ。いや、ルジか」
スッと真顔になり、私の名を呼んだ。
「タダで素性を隠してやったワケじゃない。わかるだろ?」
そう、挑発的な笑みを向けられた。
そうか、そういう事か。よく、分かったーー
「ーー貴方は何も、分かってない」
ルジは鼻で嘲笑した。
「今後、其の馬鹿気た買い被りは一切遠慮願いたい」
「…買い被り、ねぇ…」
「何も持たぬ私に一体何が出来ると言うのか」
「おうおう、言うねぇ」
「私は何時でも切り捨てられる孤児が故に、全てを諦めて生きてきた。其れが如何なる事か貴方には分かるまい」
「…ルゥ、」
コルガーが私の手首を引っ張る。
「如何足掻いた所で何も変わらない自身の存在意義に、意味を、持たせる事は愚かであると何度も、思い知らされた私の諦観は……貴方の様な者達は一生感ずる事はないッ…!!」
ルジは背後からコルガーに両の上腕を掴まれる。
「どうせその集団の奴らも私を虫ケラのごとく踏み潰せばどうにでもなると思っているッ‼︎ゆえに私に利用価値などなにもないッ‼︎」
期待を、させないでほしい。
落胆したくない。
もうこれ以上、惨めになりたくない。
血を吐くような努力をし、剣術の鍛錬を積み重ね、知識を詰め込み、私利私欲を捨て去っても、お前は何者にもなれぬ何も持たぬ孤児であると、ただただ、思い知らされ絶望するだけだった。
全てを諦め、ルフェの代わりとして生き、用済みになった暁にはまた、何者かに成り代わり生きていく。それが私の生きる道なのだと、そう決めた。決めたから。だから……
肩で大きく息をする。
ああ、少しばかり、遣り過ぎたか。呼吸を繰り返し、冷静さが戻ってきた。
「…騎士団長様。御無礼を、致しました。如何様な罰も受ける所存です。誠に、申し訳御座いませんでした」
深々と頭を下げれば、コルガーは腕を離した。
「…ルジ、お前は一つ、勘違いをしているぞ」
床を見詰めた儘、嘆息を漏らしながら話す騎士団長様の声を拾う。
「貴女の利用価値は、其の、強さだ。貴女よりも生きる強さが勝る者は、俺は知らない」
……生きる、強さ… ?
「貴女の其の強さに、此処にいる者達や、士官学校の者達がどれ程までに惹かれているか、を、貴女は、気付いていないのだろうがなあ…」
私に生きる強さなど…そんなモノは…
「ーールジ。顔を上げろ」
部屋に響き渡ったその声に、ドクドクと早まる鼓動を全身で感じながら姿勢を正す。
「俺は、お前という存在を手放すつもりはない。潰させもしない。存分に、利用させてもらうつもりだ」
そう言い放った騎士団長様は、初めて見る、心底嬉しそうな笑みを浮かべていた。
「……捨てられぬ様、努める所存に、ございます」
震える唇を動かし、硬い声で言った後、腰を折った。
お前らも積もる話があるだろうからと、騎士団長様は一人、退出される。
扉の閉まる音が、沈黙する部屋に響いた。
…さて、如何したものか。取り敢えず。
「コルガー、短剣を」
そう声を掛けながら、手を差し出した。
ほんとうはルゥさんブチ切れさせる予定はなかったんですが、書いていたらやっちまってました。




