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愚直者の惑い

エディソン視点です。

書いてて一番書きづらかったです…自分とは正反対な思考なのだろうなと。



あの日から、我々とルフェ殿ーールジ殿との関係性は、様変わりしてしまった。


というより、彼女が、線を引いた。

此処から入って来るなと、言わぬばかりの線を。



『コルガー、短剣を』


コルガー殿から受け取った短剣を、裾に手を入れて仕舞う彼女の姿から慌てて目を背けた。


『…ルゥ、靴は』


『お前にやる』


『ハァ?』


『其の様に使えぬ靴は要らない』


『いやいや俺こそいらねぇわ!』


お二人の、変わらぬやり取りに、どうしたものかとウィーを見遣る。

目の合ったウィーは喉仏を一度動かした後、口を開いた。


『…ルゥさん』


『なんだ?ああ、軽く自己紹介でもしておくか』


騎士団長様がお座りになっていた長椅子に腰掛けた彼女は、背筋を伸ばして此方を真っ直ぐに見据えた。


『お前達が何処まで把握しているのかは分からないが取り敢えず、私の名は、ルジだ。訳有って義弟であるルフェに成り代わり士官学校へ通っている。だから歳は、お前達より三つ程上だな』


……ルジ…様…。全く、今の今迄、気付かなかった。

先程騎士団長様から、此れからルフェ殿とディート殿が来るとしか聞いていなかった我々は、彼女が現れた瞬間に、理解を迫られた様なものなのである。


『お前達も、此れで終わりか?』


『…其の様に、伺っております』


『そうか。互いにご苦労だったな。それにしても、腹が減ったな….』


『え、ルゥ…夜会で何も食わなかったのか?!食いしん坊っちゃんのクセに…ってぇな!』


『斯様な腹を縛り上げる服で食える訳がないだろう』


コルガー殿を小突いた彼女は、麗しい淑女の装いをしているだけで、他は何も、変わらなかった。



無論、物凄く、驚いたが…其れでも、変わらぬ関係性でいてくれるのだと、安堵さえしたのだ。


然し今思えば其れは、不自然な程に何時も通りであったのかもしれないと、今更ながら思う。


斯様な事件に前情報なく巻き込まれ、あの様な…激情を、露わにした後だというのに、瞬時に何時も通りの彼女に戻っていたのだ。



「なあなあコルガー、いつになったらルフェのハンコウキ、なおんだ?」


「どうだろうな~坊ちゃん、なにせ初めての反抗期だからなあ」



コルガー殿は、あの場に居なかった者達へ、ルジ殿の変わり様を反抗期という言葉を用いて説明した。



あの日以来彼女は、一人で、過ごしている。



遅く入室し、授業が終われば直ちに退出する。我々の声掛けに無視する事はない。

だが、明確に線を引かれた返答でしか反応がない。

授業の合間は目を閉じ、腕を組み、座っている。


唯一、何時も通りの会話をしている人物は、料理番だけである。

我々の様子を勘繰った料理番からは、あのお方をハブいてンのかぁ?!と此方が責められる始末だ。



そして、ディート殿も、一人になった。


彼女と同じく無視はせず、コルガー殿やジル殿達、ウィーとも其れなりに会話をしている。

だが、未だに身分が明かされていないディート殿は、彼女という存在によって周りの者達との関係性が築かれていたのだと改めて思う。


其れは、ディート殿だけではなく、他の生徒達もだ。身分関係なく関わる事が出来る雰囲気を、彼女が、作っていたのだ。



『何も持たぬ私に一体何が出来ると言うのか』


『私は何時でも切り捨てられる孤児が故に、全てを諦めて生きてきた。其れが如何なる事か貴方には分かるまい』



彼女の声が、姿が、今でも鮮明に脳裏を去来する。



あの日の、夜会警護という課外授業後、あれ程迄に踏み込んだ授業は行われていない。

あれは、課外授業という名の”何か”だったのだ。


とある集団を誘き寄せるために彼女が囮になったのは言うまでもなく、他の四名のみがあの夜会に呼ばれた事に必ず意味があるに違いない。

だが、”何か”が一体何なのか、ウィーですら未だに何も掴めていない。



『如何足掻いた所で何も変わらない自身の存在意義に、意味を、持たせる事は愚かであると何度も、思い知らされた私の諦観は……貴方の様な者達は一生感ずる事はないッ…!!』


『どうせその集団の奴らも私を虫ケラのごとく踏み潰せばどうにでもなると思っているッ‼︎ゆえに私に利用価値などなにもないッ‼︎』



彼女は、本心で、言ったのだろうか。


俺達から見た彼女は、騎士として必須の心得を全てを兼ね備えていて、眩しい程の輝きを放っているというのに。

其れ故に、彼女が我が国からも、その集団からも、執拗に狙われているのではなないのだろうか。




ーーー今、俺達は一体、何が出来るのだろうか。




「ま、ソロソロ潮時だろうな~?」


「コルガー。一つ提案なんだが、少しいいか?」



ジル殿が真剣な顔付きでコルガー殿を見詰める。


あの日あの場に居なかった彼らは、俺達以上に幾度も声を掛け、その都度彼女の反応に戸惑い続けている。


ジル殿の話を、固唾を呑んで聞き入った。



あと(たぶん)数話で、一章終わる予定です!(学園モノって書いてて楽しくって、想定してたよりも長くなってしまいました)

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