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司令官の案じ

騎士団長視点です。

そろそろ名前を決めないとなあ…皆さんどう決めているんでしょうか…



『何者だッ!!』


小柄な”青年”の背に向かって投げた石が”彼”の一振りで薙ぎ払われたあの瞬間が、未だに強く残っている。

殺気立ち、眼光鋭く、内なる闘志を垣間見たような気がした。


本気で打ち合いをしている最中でも背後に気を回すとは。相当訓練されていますねと、呼びに来た執事長殿へ、無意識に含みのある視線を向けて訊ねていた。


『私が、義弟の代わりに士官学校へ入学します』


セントポーリア王国が様々な支援をしている公国の視察と、例の調査、それから嘆願の為に来たワケだが、思わぬ人材確保となった。まさかである。


領主殿の御子息は疫病の影響の為に御一人で、士官学校への入学は正直断られると思っていたし、復興半ばの状況下で若者を二人も、それも飛び切り優秀な者を紹介してもらえるとは、本当に想定外だった。

こちらの人材不足という不甲斐ない情報を開示し、根気強く嘆願する気だったのだが、義理を果たしたいと言ってくれた領主殿は誇り高きフローレンティナ公国の騎士なのだと、改めて尊敬の念を抱いた。


それから。強固な軍を誇る公国は探りを入れづらく、故に御子息が病弱で、御息女が男装し剣を振るっていた事実には驚いた。あの”青年”は御息女だったのだ。

御息女に関しては、引き取った孤児を養女にしたという話と、疫病の影響で病弱らしいとの情報しか入ってこなかった。公国も、跡継ぎが危ういのかと思ったが、その後嫡男が生まれたと聞き安堵したのだったと、当時を思い出す。




「だんちょ~?聞いてますぅ?」



締まりのない声に、思い耽っていた自分に気付く。

自分で認識している以上に疲れているのか、コイツらの前だと気が抜けるのか。



「いや?聞いてないぞ?」


「開き直らないでくださいよ~まったくぅ」


「スマンスマン。報告だな?」


「はい~姫の報告ですぅ」



いつの間にか、彼女のことを姫と呼ぶようになっていたな。余程気に入っているのだろう。



「お変わりなく図書室に入り浸っていらっしゃいますが、スゴくないですかぁ?姫の観察眼というか洞察力!もうワタシの事に感付くのも時間の問題じゃないですかねぇ?」



愉しそうなコイツを見たのは久々だな。



「彼女は多分、というか確実に、公国の秘蔵っ子だな」


「ワタシたちでも探れなかったんですからねぇ。でも、そんなに隠してたのになんで国から出したんですかね~?」


「武者修行ってトコだろうな」


「え~!ワタシも稽古付けたいですぅ!」



まあ、確かに。彼女は体格的にもソッチ向きだ。コルガーもだが末恐ろしい事に、隠密の技術も習得している様だ。



「団長。私からもご報告申し上げてもよろしいでしょうか」



息をしていないかのような存在感の男が口を開く。



「ああ、例の件か」


「はい。此方も変わらず、警護を強化して以降、特に目立った動きはありません。例の件以外で気掛かりな点は、厨房の者と共同作業をされていらっしゃるので、王宮内の者達が考えあぐねている事でしょうか」


「はっ!まあ、そりゃあそうなるわな~」



まさか厨房の連中に食らい付くとは、いや、連中を陥れた貴族にか。

呼び寄せた士官の教官に、あまり事を荒立てぬよう匿っている件を彼女に話して良いと指示したのだが、逆効果だったのは少しばかり予期していた。彼女は意外と、篤いのだ。


彼女達が二学年に上がる前、彼女とコルガー、そして彼の御方に声を掛けた時も、彼女のアツい眼差しを受けた。

厳しい鍛錬の後も自主練に精を出し、こちらが望んでいた以上の効果をもたらしてくれた。


セントポーリア王国の最近の若者は、戦うより、どうせ滅びゆくのならば好きなことをしたい等その日暮らしな考えの者が増えている。気候変動の現実に直面している国の者達は皆必死に生きているという実情を、知ろうともしない者達の考えである。

だからこそ、彼女のような存在を求めていた。家の言い成りで、惰性で士官学校へ入るような貴族の坊ちゃん達をこれ以上増長するワケにはいかなかった。



「畏れながら、例の件について今一度公国への潜入を御命令いただきたく存じます」


「ああ、そうだな。王宮と学校は俺達で始末できるだろう。お前は公国へ行ってくれ」


「はっ」



一礼の後、音も立てずに立ち去った隠密の男を見送った騎士団長は、珍しく深々と息を吐いた。




『騎士団長殿。少しよろしいでしょうか』


険しい顔の執事長殿に耳打ちされた。

この方の斯様な表情は初めて、目にした。


『反乱連盟軍の輩が、公国に潜伏しております』




ーーー反乱連盟軍。

またの名を、オスミー=アントス。




本当に、存在したのかと、正直耳を疑った。


いや、疑いたくなったのだ。唯でさえ国内は、この世界は混迷を極めているというのに。



目を瞑り、次の一手を脳裏で構想しながら、一抹の不安が胸を掠めた。



団長は少し勘違いしています。ルゥさんはほぼ食意地のため食らい付いたんです!笑笑

あと、例の件はその内出てきますが、実在してほしくないから”例の”って言ってる感じです。

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